嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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12.そうなの?

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 信じてるって、僕をか…………?

「なんで…………僕をそこまで……」

 けれど、殿下がそれに答える前に、ドアが開く。

 ドアの外には、数人の貴族たちが並んでいた。その中心に立っていたのは、この砦の主のウィクレンクト様じゃないか。真っ黒な長い髪を丁寧に整えて、苛立ったような顔をして、細身の体にローブを着ている。彼は、ここに僕がいるのを見つけて、ひどく驚いたようだった。

 そして、殿下の方に向き直る。

「殿下……これは……これは一体、どういうことですか?」

 すると、殿下はひどく冷たい目をして答える。

「君らのしたことは、すでに、調べ上げている。結界を全部、ダスフィレトに押し付けて、自分たちは豪遊していたこともあるんだろう? 彼から強引に結界を強化する道具を奪っていたことも……」

 殿下がそう言うと、ウィクレンクト様たちの足元から一斉に不気味に光る魔力の鎖が現れて、彼の従者たちを縛り付けてしまう。

 そして、驚くウィクレンクト様の体に恐ろしい勢いで絡みつき、彼を、すぐそばにあったテーブルにうつ伏せに縛りつけた。

 …………え?

 何が起こったんだ??

 ウィクレンクト様がテーブルに縛り付けられてるんだけど、それ以外はなんなのか、意味が分からない……

 ウィクレンクト様も同じだったはずだ。一人だけテーブルに縛り付けられて、驚いてなんとか首を動かし、殿下を見上げている。

「あ、あのっ……殿下っ……!? これはっ……一体っ…………!!」

 焦る僕らの中で、ただ一人、殿下だけが冷静。

「ちゃんと繋いでから話そうと思ってーー。だって、逃げられたら困るから」
「に、逃げる!??」
「逃げようとしていただろ? 俺から」

 え? そうなの??

 あ、だから遅かったのか……

 多分、殿下の言っていることは、その通りなんだろう。だって、ウィクレンクト様、わかりやすいくらいに真っ青だ。あんな顔、初めて見たかもしれない。それでも、はいそうです、なんて言えるはずがない。

「な、なんのことでしょうっ…………私たちはそんなっ……」
「そんな、なにーー?」

 殿下が背後にいる自分の従者たちに振り向くと、一人の従者が前に出る。そしてテーブルの上に、結界の魔法の道具を置いた。あれ、僕がここに来た時になくしたものだ。

 今朝は急に呼びつけられて、慌てて駆けつけたから、強力な魔法の結界を張って、魔物を寄せ付けずに高速で飛べるように、あの魔法の道具を使ったんだ。
 だけど、ここで難癖をつけられて、突然ウィクレンクト様に魔法を打たれて、それで倒れて……しばらく起き上がれなかったんだ。

 あの時に、服の中から抜かれたのか……

 普段なら魔法を打たれた時点で、文句の一つも言ってやるけど、今回は殿下が来るから、急いで飛んで帰ったんだ。

 ここに来てそんな目に会うことはよくあったから、あんまり考えてなかった。

 ウィクレンクト様は、冷や汗を垂らしながら弁明を始める。

「そ、そんなもの……どこにでもある結界強化の道具ですよ」
「そんなことはないよ。こんなもの、王都でもなかなかお目にかかれない。ダスフィレトのところには、たくさんあるみたいだけど」
「……彼が忘れて行ったのではありませんか?」
「そうだね……ずいぶん急いでいたみたいだし。君たちに、ここで足止めされたせいで」
「………………なんのことでしょう?」
「仲良くしてた貴族に言われたんだろ? 俺が彼を連れていくのを足止めするように」

 え? そうなの??
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