11 / 33
11.少しだけ、待っていて
しおりを挟む
砦の周りには、いつも一人くらい見張りがいるはずなんだが、それがいない。代わりに、見慣れない男が立っていた。どうやら殿下の従者らしい。その人は、殿下に向かって頭を下げると、魔法で砦の扉を開いた。
「行こうか」
そう言って僕を招き入れる殿下と一緒に、僕は砦の中に入っていく。
中にまで、殿下の従者らしき人たちが並んでいた。そして誰もが、殿下と、それについて歩く僕に向かって頭を下げている。
何が起こるか分からなくて、警戒しながら歩く僕。その背後から、従者たちもついて来た。
これだけたくさん殿下の従者たちはいるのに、元々この砦にいた奴らが誰もいない。
どうしたんだ……?
あいつらみんな、どこに行ってしまったんだ?
今朝、僕がここに来た時とは、だいぶ様子が違う。砦の奴ら、僕のことをはみ出しものの魔法使いが来た、なんて言って、取り囲んでいたのに。
「……殿下」
呼び止めようとしたけど、既に遅い。
殿下が、奥にあった扉を開ける。その向こうは、地下に向かう階段だ。こんなところに、階段があったんだ。
知らなかった……
僕も、この砦にはよく来ていた。呼びつけられて結界の魔法の道具の管理を押し付けられるくらいで、できるだけ早く逃げるように帰っていたから、よく分からない。
暗い、地下に向かう階段を降りる。すると、そこには大きな扉があって、殿下が魔法で鍵を開けてくれた。
そこは、広い部屋だった。一応テーブルと椅子はあるけど、それだけだ。
殿下は、僕に振り向いて言った。
「少し、ここで待っていてもらえるかな?」
「ここで……? こんなところに僕を連れてきて、どういうつもりですか……ああ、あれですか? 逃さないようにここに繋いでおこうとか……そういう…………」
そう言うつもりで来たのか!!?? 僕をここに繋ぐために!!??
しまったっっ……!!
なんで何も考えずにこんなところについてきているんだ!! 僕の馬鹿!! 罪人の僕をここにつないでおく気かもしれないのに……
くそっ……つい、気づいたら無防備になっていた!
「僕を嵌めたな!?」
「え? 何のこと?」
どうやら、殿下は一方的に僕を疑っているわけではなさそう。すぐに僕を王都に連れて行って断罪して処刑……とは、考えていないんだろう。
だったら僕のことを全面的に信じているかって言ったら、そんな訳ない……
僕をここに連れてきたのは、手始めに、この砦で何があったのか聞くためだ。その間、僕を逃さないようにするために、ここに連れてきたんだ!! 地下に閉じ込めて逃げられないようにして、その間に砦の貴族たちにも、話を聞くんだろう。
……でも……
僕と砦の貴族たちとじゃ、どう考えても砦の貴族たちの方を信じる。だって向こうは地位も名誉もあって、口裏合わせも得意技。僕が太刀打ちできる相手じゃない。殿下だって、立場的に、ここの貴族を蔑ろには扱えないはずだ。
僕に手を出した奴らを断罪って言ってたけど、じゃあ、無条件に僕の言ったことを全面的に信じたかと言えば…………
そんなはず絶対にない!!
殿下が僕を疑えば、断罪されるのは僕の方……
なんだかんだ言って、殿下は王家だ。殿下が言ってくれたこと……本当は嬉しかったけど、そんなことできるはずない。
「あ、あのっ…………!」
裏返った声で呼び止めると、彼は驚いたような顔をする。
「どうしたの?」
「…………僕……で、出直そうかと思うんです! 僕はまだ、殿下を信じさせるだけのものを持っていないというか……」
「大丈夫だよ」
「…………何が…………?」
「だって俺、最初からずっと、ダスフィレトのこと、信じてるから」
「行こうか」
そう言って僕を招き入れる殿下と一緒に、僕は砦の中に入っていく。
中にまで、殿下の従者らしき人たちが並んでいた。そして誰もが、殿下と、それについて歩く僕に向かって頭を下げている。
何が起こるか分からなくて、警戒しながら歩く僕。その背後から、従者たちもついて来た。
これだけたくさん殿下の従者たちはいるのに、元々この砦にいた奴らが誰もいない。
どうしたんだ……?
あいつらみんな、どこに行ってしまったんだ?
今朝、僕がここに来た時とは、だいぶ様子が違う。砦の奴ら、僕のことをはみ出しものの魔法使いが来た、なんて言って、取り囲んでいたのに。
「……殿下」
呼び止めようとしたけど、既に遅い。
殿下が、奥にあった扉を開ける。その向こうは、地下に向かう階段だ。こんなところに、階段があったんだ。
知らなかった……
僕も、この砦にはよく来ていた。呼びつけられて結界の魔法の道具の管理を押し付けられるくらいで、できるだけ早く逃げるように帰っていたから、よく分からない。
暗い、地下に向かう階段を降りる。すると、そこには大きな扉があって、殿下が魔法で鍵を開けてくれた。
そこは、広い部屋だった。一応テーブルと椅子はあるけど、それだけだ。
殿下は、僕に振り向いて言った。
「少し、ここで待っていてもらえるかな?」
「ここで……? こんなところに僕を連れてきて、どういうつもりですか……ああ、あれですか? 逃さないようにここに繋いでおこうとか……そういう…………」
そう言うつもりで来たのか!!?? 僕をここに繋ぐために!!??
しまったっっ……!!
なんで何も考えずにこんなところについてきているんだ!! 僕の馬鹿!! 罪人の僕をここにつないでおく気かもしれないのに……
くそっ……つい、気づいたら無防備になっていた!
「僕を嵌めたな!?」
「え? 何のこと?」
どうやら、殿下は一方的に僕を疑っているわけではなさそう。すぐに僕を王都に連れて行って断罪して処刑……とは、考えていないんだろう。
だったら僕のことを全面的に信じているかって言ったら、そんな訳ない……
僕をここに連れてきたのは、手始めに、この砦で何があったのか聞くためだ。その間、僕を逃さないようにするために、ここに連れてきたんだ!! 地下に閉じ込めて逃げられないようにして、その間に砦の貴族たちにも、話を聞くんだろう。
……でも……
僕と砦の貴族たちとじゃ、どう考えても砦の貴族たちの方を信じる。だって向こうは地位も名誉もあって、口裏合わせも得意技。僕が太刀打ちできる相手じゃない。殿下だって、立場的に、ここの貴族を蔑ろには扱えないはずだ。
僕に手を出した奴らを断罪って言ってたけど、じゃあ、無条件に僕の言ったことを全面的に信じたかと言えば…………
そんなはず絶対にない!!
殿下が僕を疑えば、断罪されるのは僕の方……
なんだかんだ言って、殿下は王家だ。殿下が言ってくれたこと……本当は嬉しかったけど、そんなことできるはずない。
「あ、あのっ…………!」
裏返った声で呼び止めると、彼は驚いたような顔をする。
「どうしたの?」
「…………僕……で、出直そうかと思うんです! 僕はまだ、殿下を信じさせるだけのものを持っていないというか……」
「大丈夫だよ」
「…………何が…………?」
「だって俺、最初からずっと、ダスフィレトのこと、信じてるから」
66
あなたにおすすめの小説
ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!
或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」
***
日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。
疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。
彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界!
リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。
しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?!
さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……?
執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人
ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー
※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇♀️
※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです
※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます
隔日更新予定に変更させていただきます。
♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております!
感想も頂けると泣いて喜びます!
第13回BL大賞55位!応援ありがとうございました!
妹の身代りに生け贄にされたんだけどガチでマジ恋しちゃいました~世界にただ1人の男Ωは、邪神の激愛に絆される~
トモモト ヨシユキ
BL
邪神の生け贄になることが決まった妹王女の身代わりになるように命じられた不遇な王子は、Ωになるという秘薬を飲まされて邪神の洞に落とされる。
エブリスタにも掲載しています。
魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!
松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。
15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。
その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。
そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。
だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。
そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。
「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。
前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。
だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!?
「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」
初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!?
銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる