嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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13.困るんじゃないのか!?

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 こいつらが僕にそんなことを言うのはいつものことだから、あまり気にしてなかったけど……

 けれど殿下は、鋭い目でウィクレンクト様を睨んでいる。

「ダスフィレトを連れて行かれたら困るんだろ? だから、何がなんでも彼を足止めしなきゃならなくなって、こんな無茶な方法に出たんだ。彼から結界の道具を奪って、その上で、彼を痛めつけたんだろ?」
「………………な……なんのことですか?」
「とぼけることができると思ってる? 無駄だよ。ここに来るまで、彼から一時も目を離さずにいた俺が言うんだから、間違いない」
「…………」
「彼はお前たちに、ひどい怪我を負わされている。ワイングラスを持ち上げるのも、少し辛そうだった。それに、毒が入ってないか調べる時も、極力魔力を使わないようにしていた。大急ぎで飛んできたから、回復している暇がなかったんだろう。俺の正面に座ってジュースを飲んでいる時に、魔法で彼の体に傷がないか、調べておいたから」

 それを聞いて、その場にいた縛られた貴族たちがざわつき出す。

 けれど、この時一番恐れ戦いたのは、僕だ。

 ……あっさり調べたなんて言ってるけど……僕がジュース飲んでる隙に、何をしているんだ……

「あの…………殿下……」
「どうしたの?」
「……そんなことなら、なんで言ってくれなかったんですか?」
「だって、あれだけ警戒していたら、聞いても話してくれないだろうなーーって思って。無理矢理見てもよかったんだけど…………」

 言いながら、彼は僕に振り向いた。

 その目に自分の姿が止まると、途端に恐ろしくなりそうだ。

 じっと見つめられて、なんだか背筋が冷たくなるようだった。

「…………そんなことしたら、我慢できなくなりそうだったから」
「…………何をだ……」

 たずねたけど、殿下は、こちらにはまるで構わずに、話を続けてしまう。

「それに、王家に送られるはずの魔法の道具を盗んでいたのも、君たちだね? 俺の従者たちが探し出している」

 それを聞いて、ますます青い顔になるウィクレンクト様。

「な、何を……おっしゃっているのです…………?」
「それ以外にも、ここでの人手が足りなくなった時に、冒険者たちを不当に集めている。彼らに対する暴行の証言も取れているから。ダスフィレトのことをしょっちゅう呼び出した記録もある。お前たちが彼をここに呼びつけた日も、時間も、その時彼が何を着ていて、何を持っていたのかも、ここに記録されているから」

 殿下が魔法で取り出した書類の山が、ハラハラ床に落ちて行く。なんでそんなことまで調べてるんだ……

 殿下は、ウィクレンクト様に向かってたずねる。

「申し開きはある?」

 殿下に言われたことは、彼らにとって致命的だったようで、みんな震え上がっている。

「ま、待ってくださいっ……俺たちはっ……」
「あるんだ……でも、聞かない」
「で、殿下っ…………!? あのっ……!」

 涙目になって叫ぶウィクレンクト様を縛り付けていた鎖が、テーブルを巻き込んで形を変えて行く。まるで断頭台のようになったそれに捕まったウィクレンクト様は、悲鳴をあげていた。

 殿下は、ゆっくりとウィクレンクト様に近づいていく。その右手には魔力の光が集まり、次第に武器の形になっていく。それは、輝く巨大な剣だ。刃の部分だけで、僕の身長くらいありそうなんだが……

 見ているだけでゾッとしそうなそれを、殿下は思いっきり振りかぶった。

「お前たちの首を切ることに必要な証拠は集めたよ…………とりあえず、お前の首は今切っておこうか…………」

 …………おい……ちょっと待て。嘘だろ! まさか、本気で首を切る気じゃないだろうな!? 悪い冗談だろうっっ!!

 だけど、戦く僕の前で、ウィクレンクト様が大きな悲鳴を上げる。

「ぎゃーーーーっっっっ!!」

 本気だ……こいつ、本気で殺す気だ!!

 ウィクレンクト様の悲鳴と、僕の怒鳴り声が重なった。

「やっっ、やめろっっ!! な、何をしているんだっっ!!!! 落ち着いてっっ!! 殿下っっ!!」
「どうしたの? とりあえず、首を切ってから話そうよ」
「はあ!!?? ちょっっ……いいからやめろっっっ!!」

 とりあえず首切ってから話すってなんだ!! 首は切る前じゃないと話せないだろう!!

 彼が剣を持つ手を握って、魔法でウィクレンクト様を吹っ飛ばし、王子から離す。

 乱暴だが、これ以上王子のそばにいたら、確実に首を切り落とされる。
 彼の従者はみんな魔法の鎖で縛られて、動けなくなるばかりか、相当強く縛られているらしく、うめき声をあげていた。

 僕は、なんとか殿下を止めながら、叫んだ。

「なっ…………な、な、何をっ……何をしている!!」
「え? 俺、話さなかった? 君に手をあげる奴を殺しに行くって」
「き、聞いたがっ……そ、そんなもの、何かの冗談…………だろ?」

 慌てて見上げるけど、殿下は怖いくらいにキョトンとして言った。

「そんなはずないだろ?」

 え………ほ、本気なのか!? 絶対にこれ、本気だ!!

 慌てて、僕は殿下の従者の方に振り向いた。

「おっ……! おいっ…………!! お、お前たちは何を見ている!? と、止めてっ……こんなことっ……王家だって、困るだろう!!」
「ご心配なく。すでに彼らの断罪は決まっています。第一王子殿下は、早く行って殺してこい、第二王子殿下は、息の根はちゃんと止めろとおっしゃっていて、第三王子殿下は、魔法の研究のために死霊の魔法を試したいから死体は持って来てねーと、第四王子殿下は死んでないのも連れてこいとおっしゃっていて、第五王子殿下は、寝ていて話を聞いてくれませんでした。第六王子殿下を止めろとは誰からも言われていないので…………いいんじゃないですか?」
「…………」
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