嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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24.言っただろ?

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 殿下は僕と一緒にいただけ。というか、無理やり僕の手を繋いで、離してくれなかった。

 だから、渋々一緒に来たんだ。それだけだから、殿下が責められることなんてない。

 そう言いたいのに、殿下はこんな時でも全く空気を読まない。こんな連中と対峙してしまって、計画が崩れてしまっているのに、僕に微笑んだ。

「…………もしかして、俺のこと、庇ってくれてるの? 嬉しいな」

 ……この男は、大丈夫か?

 さっきからずっと、僕とこの城に遊びにきたかのような調子だ。

 さっきから僕の話は全く聞いてないし、僕の計画は壊すし、こんな時までこんなことしてるし、どういうつもりなんだよ!!

 僕がっ…………一体、何のために……ここまで来たと思っているんだっ…………人の気も知らないで!!

「だっ……誰が庇うだっっ…………!! 頭がどうかしているんじゃないのかっっ!? なぜ僕が、お前なんかを庇うんだっっ!!!!」
「え? 違うの?? もう一回聞かせてよ。ね? 魔法で記録する」
「誰が言うかっっ!! 二度と言わないっっ……!! この馬鹿っ……! 死ねっっ!! お前なんかっっ……もう断罪されろ!!」

 なんなんだこの男はっ…………!

 ずっと僕の計画を潰し続けて……何でこんなに呑気なんだよっ…………

 僕はずっと…………こいつに王族としてここを統べてほしくて……そんなこいつが見たくて、ここまで来たのにっ……!!

 コレリイジャイン様は殿下を睨みつけ、勝ち誇った顔で言う。

「庇う……とは、どういうことですか? 彼は首謀者は自分だと言っているようですが…………殿下。あなたは、彼の発言は、彼があなたを庇っているだけだと言うのですか? では、これは一体どういうことなのか、説明してもらいましょうか?」
「……そっちこそ、王家に送られるはずの魔法の道具を持っていって、どういうつもり?」
「なんのことですか? 全く知りません。それに、あなたが持っているそれは、元々我々のものだ」

 殿下が片手に握った魔法の道具の入った袋を指差し、いけしゃあしゃあと言うコレリイジャイン様。よほど自信があるんだろう。
 あいつが背後に従えているのは、みんな力を持った貴族の魔法使いたち。殿下が持っているものは、全部僕のものだけど、今ここで彼ら全員を黙らせるほどの証明ができるわけじゃない。彼らは、コレリイジャイン様が自分の物だと言えば、そうだと頷いて同意するだろう。

 この状況から言っても、戦力で言っても、僕らには勝ち目なんてない。

 コレリイジャイン様は、背後の従者の魔法使いたちに振り向いて言った。

「そうだろう? 殿下が握っているあれは、元々我々のものだ。殿下は貴族たちが魔法を研究していた部屋に勝手に入り込み、盗みを働いたのだ!!」

 けれど、従者たちは答えなかった。俯いた彼らに、腹を立てたコレリイジャイン様が詰め寄る。

「おい……貴様ら!! 私の話を聞いているのか!?」
「……はい。それは……もちろん。ですが……それは、ダスフィレトのものです」

 従者の一人が答えて、周囲がしんとなる。

 コレリイジャイン様は、信じられないと言ったような様子だった。僕だって信じられなかった。

 今、返事をしたのは、コレリイジャイン様の従者だ。

 なんでそんな奴がそんな風に言うんだ? 僕がこの城にいた時は、みんな、コレリイジャイン様の仲間だったくせに。

 望まない返事を返されて、コレリイジャイン様は恐ろしい目で従者たちを睨みつけた。

「どういうことだ? おいっ……!!」
「…………全て……ダスフィレトのものです。それは……我々も確認しています」

 そう言って、従者たち全員が僕を指差す。

 …………え……? なに??

 僕の方が怖いんだが。

 みんなどうした?

 ビクッと震える僕に、殿下が振り向く。

「よかったね」
「え…………?」
「みんな、君のだって認めてる。これは、君のものだ」

 言って、殿下はそれを、僕に渡してくれる。

 確かに、僕の魔法の道具……なんだけど…………

 なんだか、この状況についていけないんだが。

「あ、あの…………」
「言っただろ?」
「…………え?」
「俺、全部覚えてる。君とあの屋敷で会ったことも、君とあの屋敷で話したことも、一つ残らず」
「あ………………はい。それは、聞きました……」
「だから、君やあそこにいたみんなが、誰にどう傷つけられたのかも、全部覚えてるんだよ?」
「へっ……!?? いや…………でも…………僕……そんなこと、話しましたか?」

 確かに、愚痴みたいなことは言った。だけど、城には帰りたくないとか、多分そんなことだったはず。殿下が言ったような詳細なこと、何も話していないのに。

 それなのに殿下は、全部わかっているから、と言って、僕に微笑んだ。

「君が話してくれたことだけで、十分だよ……あとは全部、俺たちの方で調べるから」
「ぜ、全部って…………なんで、そんなこと調べて……」
「大事なことだからだよ。王家に回されるはずの結界の魔法の道具が奪われているんだ。君も、言ったじゃないか。由々しき事態だって」
「あ………………い、言いましたけど…………」
「俺は君たちのところに行くまで、ひどく無気力だったけど、そんなの聞いたら、王族として、放っておけない…………だろ?」
「…………はい……」

 それはそうだけど…………じゃあ、ずっと前に、彼らのやっていることに気づいていたのか…………?

「言っただろ? 君を傷つけた奴らを、全部断罪しに行くって。彼らは、王家にとっても敵だ」
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