嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐

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33.多分ない

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 殿下に繰り返しキスされていたら、もう逃げられないような気がしてくる。僕だってもう、殿下を離したくない。
 僕は、ほんの少しだけ首を動かして頷いた。

「ダスフィレト?」
「婚約っ……するっ…………」
「嬉しいっっ…………約束だよ!?」
「んっ…………あぁっっ……!」

 強く握られて、欲望が溢れていく。一度にそれが噴き出したら、もうそのまま気を失いそうなくらい気持ちいい。

 殿下は、そんな僕を見下ろしている。

「可愛い……」

 そんな風に勝ち誇って言われたら、くやしくなる。

 僕はベッドから起き上がった。

「ダスフィレト…………?」
「殿下だって、そろそろ我慢できないですよね?」

 だって、殿下のそれだって、すでに膨らんでいるじゃないか。彼だって、もう我慢できなくなっているはずだ。

「僕だって……殿下に触れたいです。僕も触れて、いいですか?」
「ダスフィレト……」

 僕だって、殿下に触れたい。されてばっかりなんて、嫌だ。

 だけど起き上がったら、コンコンとドアを叩く音がした。

「ヴェイロクッド。いるか? どうせここだろう」

 誰……?

 僕には聞きなれない声だ。

 だけど殿下は、ひどく嫌そうな顔で振り向く。

「兄上だ……」
「え……兄っ?!! お、王子殿下!!??」
「そんなにびっくりしなくていいよ。扉の外にいるのは兄上の使い魔だけだ。朝の会議に現れない俺を呼びにきたんだろ……」
「ええっっ!!??」

 そうだ。忘れていた。今、朝なんだ!!

 もうとっくに起きなきゃいけない時間じゃないか!

「はっ……! 早く行かなきゃっ……!」

 僕が言うと、殿下は苛立った様子で言う。

「俺、絶対に……この国を率いていけるようになるから。貴族どもも黙らせて……それから、俺とダスフィレトがエッチなことしてる時に会議開く奴は死罪にするから」
「そんなのダメですっっ!!!!」

 力一杯言うけど、殿下は聞いてくれない。仕方なく僕もビクビクしながらキスをすると、今度は殿下の方から、また深くて夢中になれそうなキスをしてくれた。







 こうして殿下と婚約することになってしまった僕は、昼を過ぎた頃に帰りの馬車に乗った。

 殿下まで上機嫌で馬車に乗ってくる。

 馬車の中でも襲われたらたまらないから、僕は一人で行くと言ったが、殿下は全然聞いてない。

 こいつが僕の話を聞くことはあるのか?? 多分、ないような気がする。

 だけど、殿下が見送ってくれることが嬉しくて、つい頷いてしまった。

「ねえ。屋敷についたらやっていい?」

 さっきから、殿下はこんなことばっかり聞くし……

 キスだって、歩いている最中にしてくるから、恥ずかしくて堪らないのに。

「だ、ダメですっ……みんな待ってるし…………そんなのっ……!」
「そうか……じゃあ、今のうちにやろうかな?」
「やるな!! ばか!!」

 強く言ってやると、殿下は楽しげに笑い出す。

「俺は一度城に戻るけど、また来るから。結界の魔法の道具、一緒に探してくれるんだろう?」
「あ……うん……それは、もちろん」

 そう答えたら、ありがとうと言って殿下が微笑む。
 僕も彼に「ありがとう」と言うと、そいつは、ますます嬉しそうな顔をして笑った。


*嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!*完
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