ダンジョン作成から始まる最強クラン

山椒

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04:個人ダンジョン4

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 二回目とは違い推奨されていたLv5にする必要はないから魔鉄を効率よく採取できるルートで走り抜ける。

 さすがにチンアントではつまったりはしないし加速を上手く使って落ち着かせるのをノータイムにする。だけど深呼吸とかはできないからそこは難点だな。

 レベルも上がっていることもありすぐにキングチンアントがいる部屋の前にたどり着いた。

「ふぅ……行くか」

 今度は大丈夫だ。もう行ける。たかがアリだ。猛火の剣士と加速のスキルがあれば何ともない。

 キングチンアントがいる部屋に入れば全快したキングチンアントがいた。

 俺はMPを消費してキングチンアントの側面に加速で移動した。キングチンアントは俺の動きについてこれずどこにいるのか分からない感じだった。

 さっきのラーニングは加速だけラーニングしたわけではない。猛火の剣士と組み合わせた戦い方もラーニングした。

 一回目のラーニングでは剣技だけだった。だが二回目のラーニングは魔力が増えたことで本来の力もラーニングした。

 剣に炎を纏わせ、炎を伸ばして刀身を長くしたことでキングチンアントの側面の三本の足をすべて切り落とした。

 体勢を崩して動けなくなっているキングチンアントの首に炎でまた刀身を伸ばして一太刀でチンアントの首を落とした。

『実践クリアしました。おめでとうございます』
「ふぅぅぅぅぅ……」

 ラーニングがなければこの強いスキルを持っていたとしても勝てなかっただろう。それくらいに俺に戦いの才能はない。だけどラーニングがあったおかげでその通りに動けば勝てることを理解していた。

 だから上手くいった。もうしんどい。寝たい。

『サカキダンジョン一階層作成完了。一階層作成報酬でSTR+100を付与します』
「……そんな報酬もあるのか」
『続いて二階層の作成にかかりますか?』
「さすがに帰らせてくれ……これで帰れるんだよな?」
『はい。一階層が完成したことでダンジョンは出入り口が開放されました。出入り口に転送します』

 なるほど、だから帰れなかったのか。それならどうしてダンジョンに入り込んだんだって話だ。

 出入り口の前に転送された俺だが、ソファが見当たらない。

「ソファはどうなっているんだ?」
『ソファは作成室にあります。転送しますか?』
「……いや、そこに置いてていい」
『はい』

 あのソファに特に思い入れはないからどっちでもいいことだ。

 出入り口の階段を上がれば見知った部屋が見えてきた。

「帰ってこれたか……」

 高級マンションの最上階。その一室のリビングに出た。トキから付与された鎧を脱いで解放感に満たされつつ出てきたところを見れば元々ソファがあった場所に下に降りる階段が存在していた。

 どうやってダンジョンの中に落ちたのか疑問だが今はいい。今は運動と緊張からの汗でお風呂に入りたい気分だからお風呂に入ることにした。

「どっと疲れた……」

 洗面台の扉を開ければそこにはハーフであることがすぐに分かる顔立ちに母親譲りのナイスバディな全裸の金髪ギャルがバスタオルで体を拭いていた。

「なに? 女子高生の裸を見て興奮してんの? エッチ」
「ッ!……また無断で入ってきたのかよ!」

 すぐに扉を閉めてリビングの方に戻る。

 あの高校生のギャルは俺のいとこで岩倉凪咲なぎさ。このマンションによく遊びに来る厄介な相手だ。

 かなり無防備だし、裸を見られてもあの反応だ。俺なんかあと少しあそこにいたら前屈みになるところだったんだぞ?

 ハァ、お世話になったおばさんの娘だからあまり無下にはできないが人と関わりたくないからハッキリ言って迷惑だ。

 あっ、凪咲にこのダンジョンを見られるのか。……うーん、売るのなら見られてもいいのだがいい暇つぶしになりそうだと思ったからな。

 個人が所有する土地にダンジョンが出てきてそれを売ろうとすればかなりの値で売ることができる。ただ個人ダンジョンは冒険者同士のイザコザが一切ないから冒険者としての才能があれば売らない方がかなり儲けることができる。

 ……いや、このサカキダンジョンに入って俺はダンジョンが平気だと勘違いしているんだ。

 他のダンジョンに入ることができない俺がどうしてレベルを上げたりスキルを獲得するのか。

 どうせ俺はダンジョンに入れず、モンスターも怖くて、誰とも関わりたくない人間なんだ。そんな俺がこんなダンジョンを所持していたところで意味がない。

 このダンジョンを完成させた先に何が起こるんだ。売ってしまおう。

「あっ……スマホを忘れてきた……」

 スマホがソファの上にあることに気が付いた。でも今から行くのはメンドウだから明日にでも行こう。

 そう言えば起きてから何も食べていないのに全くお腹が減っていない。絶対にダンジョンと何か関係あるんだろうな。もうどうでもいい話だけど。

 テレビをつけて適当にチャンネルを回しているところで凪咲がリビングに来た。

「もう、ちゃんとノックをしないといけないんだよ? あっ、もしかしてわざと狙って来たとか? オーくんもエッチだねぇ」
「どうして一人暮らしなのにノックをしないといけないんだよ。頭がおかしい人だろ」

 ニヤニヤと俺に話しかけてくる凪咲だが、リビングに入ればすぐにそれは目に入る。

「……えっ、なにこれ」
「ダンジョンだよ。急に出てきた」
「えっ、マジ? そんなことホントにリアルであるんだ……」

 興味津々にダンジョンにつながる階段を見る凪咲。

「ねぇオーくん。このダンジョン入ってもいい?」

 凪咲は冒険者を育成する学校に入っていて俺よりもよっぽど才能がある冒険者だ。だから入っても問題はない。だがこのサカキダンジョンは一階層しかないからな。

「入っても一階層しかないからつまらないぞ。しかもチンアントしかいない」
「どういうこと?」
「さっきこのダンジョンに落ちていたんだよ。それでダンジョンを一から作っていたところだ」
「なにそれ!? 面白そう!」
「面白くない。作らないと帰れなかったから一階層だけ作って帰ってきたんだよ」
「……ダンジョン、大丈夫だった?」
「まあ、何とかな」
「このダンジョンならオーくんと一緒に入れるってこと? それなら行こ!」
「いや行かないから。どうせ売るし」
「……う、売る? そんなこと絶対にさせないんだから!」
「いやするから」
「ならあたしが買うから! オーくんからせびったお金で買うから! 足りなかったらもっとせびるし!」
「ヤバいこと言ってるって分かってるか?」

 ハァ、こうなった凪咲は絶対に譲らない。だから俺が折れるしかない。

 いつも凪咲にワガママを言われているのだが他の人はそうでもないって言うから俺は下僕と思われているのかな。

「……入るなら好きにしろ」

 凪咲なら俺でも行けたサカキダンジョンに行けるだろう。一階層だけだしすぐに終わらせれるだろ。

「どこに行くの?」
「シャワーを浴びる。汗かいてるから」
「汗……? あれ、この武器って……」

 武器を持っていない凪咲だけどパンチやキックでどうにかできるだろうと思って俺はシャワーを浴びる。

 シャワーを浴びてリビングに戻れば俺が適当に置いていた剣を凪咲が持っていた。

「これ、オーくんの?」
「そうだ。まだ入っていなかったのか?」
「だから言ってるじゃん、オーくんと一緒に入るって」
「……俺は入らない」
「どうして? ここなら入れるんでしょ?」
「まあ、そうだが……」
「それなら行こ!」

 これだからあまり凪咲にダンジョンを見せたくなかったんだよな。まだダンジョンに入るために俺の家に来るみたいな状況なら良かったけど俺を道連れにされるのは厄介だ。

 でも凪咲は絶対に折れない。永遠に俺が折れるのを待つのかってくらいに粘ってくる。まあサカキダンジョンには入れるからいいか。

「分かった分かった……」
「やった! これオーくんのだよね? ほら着て着てー」
「まだ汗臭いのに……」
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