7 / 7
第7話
しおりを挟む
「…………」
「…………」
神殿の温度が、物理的に下がっていた。
イグニスがいなかったら普通に凍死していただろう…
目の前には山盛りのハッシュドポテト。
先程まで勝利の雄叫びを上げていたはずのヴァルドとテディベア軍団も、今は借りた猫のように静まり返っている。
隣に座る女性陣の優雅に組まれた足が一定の間隔でリズムを刻む。
そのたびに、神殿の床がミシミシと悲鳴を上げていた。
「……あの、女神様方…? ポテト、冷めないうちに……」
「コーイチ、わたくしにその醜い油の塊を口に入れろと? 多数決で決まった以上、文句は言いませんわ。ええ、言いませんとも。ただ、今夜のあなたの寝床を絶対零度の氷河に換えるだけですわ」
死ぬ。このままだと、俺の社会人生活は三日で終わる。
一体どうすれば…
その時、俺の脳裏に戸棚の片隅にあった「ある備品」の記憶がフラッシュバックした。
「ま、待ってください! これ、実はポテトじゃないんです!」
俺の叫びに、女神たちの眉がピクリと動いた。
「……何と言ったのですか?私には醜い芋にしか見えませんが…」
ガイア様が疑わしげな目で俺を見る。俺はリュクスの袖を必死に引っ張った。
する遠くの戸棚からあるものを持ってくる。
「じゃ~ん砂糖とメープルシロップで~す!」
次の瞬間、神殿中に暴力的なまでの甘い香りが漂った。
そっぽを向いていた女神たちが一世を振り返る。
全員が不思議そうな目で見つめる。
「……ほう? それをどうするのじゃ?」
「これをハッシュドポテ――芋にディップするのです!」
神殿に衝撃が走る。
するとリュクスが焦って肩をつかむ。
「おい…さすがに無理があるんじゃ…」
「…………悪くありませんわね」
「え…」
「おいしいのじゃ! 揚げパンみたいで、これはもはやお菓子なのじゃ!」
女神たちの顔に、春のような笑みが戻った。
凍りついていた神殿が、一気に解凍されていく。
「もう食べ終わってるし…」
「さすがは俺が認めた男!でかしたぞ!」
「さっすが~!」
結局、千円分のポテト(自称スイーツ)は、五分もしないうちに神様たちの胃袋へ消えた。
満足げにティータイムを再開した女神たちを見て、俺は深く、深ーーく溜息をつく。
これで俺も一安心…
いやちょっと待てよ?
「……なぁ、リュクス。今更なんだけどさ」 「何?」
「……君、創造神だよね。……ケーキ、作れるよね?」
「え? まぁね」
「…………。じゃあ、なんで俺、わざわざ千円持ってポテト買いに行ったりして、死ぬ思いしたの?」
すると
「え、だって……みんなで何食べるか話し合うほうが、なんか楽しくない?」 「………………」
「あと、ほら。神の力で無から生み出したケーキって、完全にカロリーゼロなんだよ。だからリリアとかさ『苦労して手に入れたうえで罪悪感を感じるまでがケーキですのよ!』って怒るし」
……この神様たち、めんどくせぇ……!!!
俺の神界就職物語は、まだまだ前途多難だった。
「…………」
神殿の温度が、物理的に下がっていた。
イグニスがいなかったら普通に凍死していただろう…
目の前には山盛りのハッシュドポテト。
先程まで勝利の雄叫びを上げていたはずのヴァルドとテディベア軍団も、今は借りた猫のように静まり返っている。
隣に座る女性陣の優雅に組まれた足が一定の間隔でリズムを刻む。
そのたびに、神殿の床がミシミシと悲鳴を上げていた。
「……あの、女神様方…? ポテト、冷めないうちに……」
「コーイチ、わたくしにその醜い油の塊を口に入れろと? 多数決で決まった以上、文句は言いませんわ。ええ、言いませんとも。ただ、今夜のあなたの寝床を絶対零度の氷河に換えるだけですわ」
死ぬ。このままだと、俺の社会人生活は三日で終わる。
一体どうすれば…
その時、俺の脳裏に戸棚の片隅にあった「ある備品」の記憶がフラッシュバックした。
「ま、待ってください! これ、実はポテトじゃないんです!」
俺の叫びに、女神たちの眉がピクリと動いた。
「……何と言ったのですか?私には醜い芋にしか見えませんが…」
ガイア様が疑わしげな目で俺を見る。俺はリュクスの袖を必死に引っ張った。
する遠くの戸棚からあるものを持ってくる。
「じゃ~ん砂糖とメープルシロップで~す!」
次の瞬間、神殿中に暴力的なまでの甘い香りが漂った。
そっぽを向いていた女神たちが一世を振り返る。
全員が不思議そうな目で見つめる。
「……ほう? それをどうするのじゃ?」
「これをハッシュドポテ――芋にディップするのです!」
神殿に衝撃が走る。
するとリュクスが焦って肩をつかむ。
「おい…さすがに無理があるんじゃ…」
「…………悪くありませんわね」
「え…」
「おいしいのじゃ! 揚げパンみたいで、これはもはやお菓子なのじゃ!」
女神たちの顔に、春のような笑みが戻った。
凍りついていた神殿が、一気に解凍されていく。
「もう食べ終わってるし…」
「さすがは俺が認めた男!でかしたぞ!」
「さっすが~!」
結局、千円分のポテト(自称スイーツ)は、五分もしないうちに神様たちの胃袋へ消えた。
満足げにティータイムを再開した女神たちを見て、俺は深く、深ーーく溜息をつく。
これで俺も一安心…
いやちょっと待てよ?
「……なぁ、リュクス。今更なんだけどさ」 「何?」
「……君、創造神だよね。……ケーキ、作れるよね?」
「え? まぁね」
「…………。じゃあ、なんで俺、わざわざ千円持ってポテト買いに行ったりして、死ぬ思いしたの?」
すると
「え、だって……みんなで何食べるか話し合うほうが、なんか楽しくない?」 「………………」
「あと、ほら。神の力で無から生み出したケーキって、完全にカロリーゼロなんだよ。だからリリアとかさ『苦労して手に入れたうえで罪悪感を感じるまでがケーキですのよ!』って怒るし」
……この神様たち、めんどくせぇ……!!!
俺の神界就職物語は、まだまだ前途多難だった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える
yukataka
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、
家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。
降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。
この世界では、魔法は一人一つが常識。
そんな中で恒一が与えられたのは、
元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。
戦えない。派手じゃない。評価もされない。
だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、
戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。
保存、浄化、環境制御――
誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。
理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、
英雄になることではない。
事故を起こさず、仲間を死なせず、
“必要とされる仕事”を積み上げること。
これは、
才能ではなく使い方で世界を変える男の、
静かな成り上がりの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる