三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・工学部発明学科編

122 2つの受験(7)

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 3倍返しも【中位・魔術師】試験も無事に終え、今夜は全員で合格祝いだ。
 私とアレス君は帰りにポッパー商会に寄って、調達を依頼しておいた丈夫な地底生物の皮を購入した。
 王立能力学園で使用する鞄を、空間拡張魔法を使って作るのだ。
 学園の鞄に指定はないそうなので、アレス君も自分で作ると張り切っている。

 夕方、家に帰ったら呼んでもいないのにホロル様が居た。
 私たちの【中位・魔術師】合格を祝いに来たらしく、8センチくらいの大きな魔核が取り付けられた杖をプレゼントしてくれた。
 正直、なんで来たの?って思ったけど、私もちょっとは大人になったのよ。
 少しだけ引き攣った笑顔で、一緒に食事でもってお誘いしたもん。

 食事が終わると重要な話があると言われ、客室に移動した。
 どうやら今日の試験が、魔術師協会で大変な騒動になっているらしい。

「まずはデモンズのことだが、今回の魔術対戦にはエルドラ王子が関わっていたから、王子の命令通り王宮審議会で最終的な処罰が決定されるだろう。
 魔術師協会としては懲戒解雇処分を言い渡し、魔術師資格を剝奪した。
 無抵抗の、しかも少女に対して明らかな殺意をもっての攻撃は、決して許されるものではない。本当に申し訳なかった」

 ここでホロル様に謝罪して貰えるとは思ってなかったけど、守護霊の皆が謝罪を受け入れておけって言うから、「そうですか、分かりました」と返事をしておいた。

 デモンズの攻撃を受けたら、普通の魔術師なら確実に死んでいただろうと、試験会場内に居た魔術師協会の全員が証言したそうだ。
 そしてアレス君が使った【修復】と、私が使った未知の技の数々に驚嘆し、何処の家門の子供たちなんだって大騒ぎになったらしい。

 まあアレス君の名前を見ればアロー公爵家の人間だと分かるから、皆がホロル様の所に押し掛け、ぜひ魔術師協会に迎え入れましょうと迫られたとか。
 私が【中位・魔術師】の資格を取ったら、アロー公爵が後見人だと発表する予定だったこともあり、サンタさんはアロー公爵家の子爵だから、勝手に手を出すことは許さないと脅しておいたぞと、ニヤニヤしながらホロル様は言った。

 今後も私たちに会わせろとか、技を教えて欲しいと迫られる可能性があるので、2人とも王立能力学園に入学予定だから、魔術師協会に就職することはできないとダメ押しもしてくれたようだ。
 
 ……面倒臭いのはご免です。受験が終わったら、入学式がある9月15日までゲートルの町にでも避難しておこうかな・・・


 トレジャーハンター協会のハウエン協会長が7月末で協会長の職を辞し、辺境伯の爵位を継ぐため領地に戻るらしい。
 副協会長の職を辞していた高位・鑑定士のボルロさんが、新協会長に就任するとポッパー商会から聞いているので、再び登録しても大丈夫だと思う。

 実はゲートル支部のチーフが、各支部のチーフに与えられる特別権限で、本部で会員証が抹消されてもゲートル支部に限り、私とアレス君のハンター活動を許可するという届け出を本部に送り付け、受理されていると昨年王都に来た最速踏破者のリーダーから聞いている。

 なので、私は今でもゲートル支部のトレジャーハンターで、最速踏破者のメンバーなのだ。
 よって、イオナロードにおける通行料等の権利金の残りも、支部が預かってくれている。ただし、そのことを本部は知らない。

 ゲートル支部に戻ったら、2センチのカラ魔核に魔力充填できるようになっているチーフに、兄さまと同じサイズの空間拡張バッグをプレゼントして、感謝の気持ちを伝えなきゃ。
 最速踏破者の仲間には、王太子様から貰った【闇烏殲滅報奨金】を、助けてくれたお礼として半分プレゼントする。



 さあ、いよいよ今日は王立能力学園の受験日だ。
 午前中に共通科目の筆記試験が3時間あり、午後は専門分野の試験が1時間と面接が行われる。
 午前中は、受験申込の順番で試験を受け、午後は希望学部の教室に移動して試験を受ける。面接は、入りたい学部の部長教授や教授が面接を行う。

「思っていたより受験者が多い気がするね」

 受付に並んでいる人たちから好奇の目で見られながら、アレス君と兄さまに話し掛けた。
 聞いていた例年の受験者より明らかに多い。これだと倍率は3倍くらいかな?

「そうだね。今年はエルドラ王子が早期入学されるらしいとの噂が広まっているから、なんとしてでも同期生になりたいと願う親が、子供を無理矢理受験させるって聞いてるよ」

 7日に中級学校を早期卒業する兄さまが、学校の教師から聞いたという情報を教えてくれる。

「特に女子の数が多いよね。エルドラ王子は未だ婚約者が決まっていないから、あわよくばと思う女子が相当数いるだろうって、シロクマッテ先生が言ってたから」

 公爵家の子息とは思えない感じの平服で来てるアレス君が、ちょっと嫌そうな顔をして言う。
 兄さまは中級学校の制服を着ているけど、私とアレス君は私服だ。
 どう見ても受験年齢に達していない私たち3人は、特別推薦枠という受付の列に並んでいる。

 特別推薦枠は、子爵以上の領主が、自領の中級学校の優秀な学生を推薦する場合や、教会、魔術師協会、鑑定士協会、極稀に王族などから推薦を受けて受験する枠である。
 推薦枠だから点数で優遇されることなんてない。そもそも推薦を受ける者は優秀だ。ただ、学費を推薦者が払うことが多いから、貧乏だと思われる可能性が高い。

 推薦枠でも点数が足らなければ、合格できないと受験者は知っている。
 でも「場違い」とか「なんの冗談だ」って囁かれ、剣呑な雰囲気であることは間違いない。
 因みに兄さまは、エルドラ王子の側近候補だから王族推薦で、私とアレス君は、ガリア教会本部から推薦してもらっている。

 ……まあ、一昨日の魔術師試験よりまし。

「受付で確認印を押された受験票を机の上に出しなさい。試験科目は3つに分けられ其々1時間で解答する。最初は数・理、次は歴史・経済、最後が文学・語学となる。試験中の私語は禁止。何かあれば手を上げて試験官に言いなさい」

 ピリピリした緊張感が教室内を包み、「始め!」という声で一斉にペンを握る。

『サンタや、大賢者たるものトップ合格じゃぞ』 
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