三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・金級ハンター編

165 ゴールド会員のサンタさん(6)

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「町の中心にある大きな水飲み場は50年前に作られたんだ。一際目を引く3階建ての建物が南ゲート支部だな」

 サブチーフも木に隠れて、アルバの町のことを教えてくれる。

 まさかこんな断崖絶壁の上から、様子を窺う者がいるなんて誰も思わないだろうけど、眼下の町は敵に占領されているから用心して木の陰から様子を観る。
 絶壁のすぐ下は町のゴミ捨て場のようで、いくつも穴があいている。
 人の住む家は絶壁から少し離れているから、きっと声だって聞こえないだろう。

『絶壁の下の方は、さっき見たロードのゴールと同じ岩盤やで。確かにすぐ近くまで来とったけど、新ロードはあれ以上進むことは無理や』

 トキニさんの話を聞いて、本来なら繋がっていたであろうロードの先は、かなり下にあるって分かりフーッと息を吐き肩の荷を下ろした。


 折角だから景色のいい絶壁のてっぺんで、敵の動きを偵察しながら昼ご飯を食べることにした。
 南ゲートの状況は何処からも詳しい情報を得られなかったけど、敵の軍人らしき隊服を着た者の数はそう多くない気がする。
 南ゲートの入場口には常に10人位の軍人が居て、ハンターや町の住人を見張っている。

 アルバの町の役場はハンター支部の向かいにあり、2軒あるホテルは両方がザルツ帝国軍兵士の宿舎になっているようだ。
 町の入り口は関所みたいな物が作られ、武装した兵士が30人位待機しているから、出ていくのは困難だろう。

「ホテルの隣の酒場?みたいな店から、千鳥足の兵士が2人出てきた。昼間からお酒を飲むなんて随分と余裕があるのね」

 商業連合の本部で最近購入した双眼鏡で町を覗きながら、サブチーフに見えた様子を教えていく。

「肉眼で見えるギリギリで予想して、ザルツ帝国軍の数は200人以下だろう」

 サブチーフが自分で確認した人数と、私が伝えた人数、宿舎で休んでいる兵士の数も予想して全体の人数をはじき出した。

【ロードの悪魔】の2人は、シリスを連れ絶壁を下る道がないか探索に出ている。
 もしも此処から我が国の兵士が下りることができたら、アルバの町を奪還できるかも知れない。
 または、住民が絶壁を登れたら、モエナ伯爵領に逃げることができる。

 ……う~ん、何かいい方法がないかなぁ・・・ 


 結局3時間ほど偵察し、【ロードの悪魔】の2人は、シリスの導きもあり下に降りるルートを発見した。
 随分と長いこと使われることがなかった道なのか、獣道みたいになっていたけど、町の端っこまで通じていた。
 いかんせん急な斜面なので、私でも転びそうになったから、アルバの町の子供や老人が使うのは無理だと思う。

 ……だったら、こちらから我が軍が侵入するしかないってことかな。
 

「うちの支部のハンターの人数は100人くらいだ。ゲートル支部には200人近いハンターが居るから、ハンターが力を合わせたらいけるかもしれない」

 軍が出動できないのなら、ハンターを集めて侵入するのはどうかとサブチーフが提案してくれた。

「まあ、誰も戦争には参加したくはないが、このまま戦況が膠着すれば、いずれ我々にも召集命令が下る可能性だってある」

「そうだなリーダー。仲間のハンターがあんなに酷使され、子供まで働かされている姿を見たら、早く助けてやりたくなるな」

【ロードの悪魔】の2人も、既に戦争は他人事ではないと言い、サブチーフの意見を支持する。 
 
「よし、一旦支部に戻って作戦を考えよう」

 私はシリスの頭を撫でて、引き上げると決めた。

 ……確かに優しいハンターたちなら、戦ってくれるかもしれない。

 ……でも、その時は同じハンターであり、アルバの人たちを助けたいと言い出した私が、参加しないなんて許されないと思う。


 あれこれ思案しながら戻る道中、先程アースドラゴンもどきに遭遇した三叉路で、ちょっとだけ他の2つの道に寄り道した。
 南に向かう道は下り坂で、500メートルくらい進んだ場所で幾つか部屋を発見し、サブチーフが1台、ロードの悪魔が2台、私はシリスのお陰で3台の魔術具を発見した。
 私が発見した1台以外はどれも小さくて、生活用の便利魔術具だと思われる。

 まさかの魔術具発見で、サンタさんに誘ってもらって良かったと3人にとても感謝された。
 未採掘の側道には、お宝とロマンがいっぱいだ。これこそハンターの醍醐味。
 なんとか自分の採掘した魔術具は空間拡張リュックに収納できたけど、もうこれ以上は入らない気がする。

 東に向かう道は平坦で、300メートルくらい進むと風を感じた。
 先程のアースドラゴンもどきは、きっとこの先から来たんだと思われる。
 念のためサブチーフと相談して、一旦この道を塞ぐことにした。
 アイツや危険な地上生物に遭遇したら、ハンターの半分が死にそうだし、安全に絶壁まで行くために必要だと判断した。


 側道から新ロードに戻ってからは殆ど地底生物にも遭遇せず、途中苦戦していた銀級パーティーを魔法で助けて、中間地点のセーフティルームに泊った。
 翌朝は、急いで支部まで戻る必要があったから、運悪く・・・いや、たまたま遭遇して討伐した大ムカデは、要らないし見たくないから、ロードの悪魔が持参したリヤカーに積んで、彼等が管理する部屋に置いて帰った。


 支部に到着した私は、大至急討伐した獣や地底生物を査定と解体に出し、チーフとサブチーフ、呼んでもらったこの町の責任者である男爵と一緒に、3階の会議室でアルバの町のことを話し合った。
 結局このメンバーでは結論が出ず、一度ファイト子爵邸に戻り、王太子かアロー公爵と相談することにした。

 今夜はこの前行った、ちょっと贅沢なレストランでロードの悪魔の2人と打ち上げをする。
 どうやら採掘した魔術具にいい査定が出て、ロードに置いてきた大ムカデも貰ったからと奢ってくれるらしい。よし、遠慮なく食べよう!
 店に入ると私が助けたハンターも居て、皆が私に奢ってくれた。

 ……この楽しい雰囲気で、アルバの町の人たちを助けてとは言いにくい。

 翌朝、チャーターした馬車でファイト子爵邸に到着した。
 ハンターの格好のままだったことに気付いたけど、今更高級ドレスに着替えるのも面倒だと腹を括った。
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