三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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王立能力学園・金級ハンター編

164 ゴールド会員のサンタさん(5)

 ロードの中だと、日が暮れたりしないから時間が分かりにくい。だからパーティーのリーダーは、時計を持つことが義務付けられている。
 私たちは午後6時頃に到着したセイフティールームを、今夜の宿泊地に決めた。
 このセイフティールームがちょうど新ロードの中間で、出発したゲートから10キロくらい進んだ地点らしい。

 夕食の準備をしながら、この新ロードで採掘される地底生物や魔術具などの質問をしてみた。
 さっきまでお嬢ちゃんと呼んでいた【ロードの悪魔】の2人は、私を金級ハンターだと認めてくれたみたいで、サンタさんって呼ぶようになり情報もくれた。
 私の目標が鞄の素材採取と、南ゲートの人の救出だと知って凄く驚いていた。


 翌日は、早朝に大蛇2匹と中型のトカゲ1頭を討伐した。
 未採掘の下りになっている側道から出てきたから、このロードはもっと深い可能性がある。
 もちろん、サクッと倒してリュックに収納し羨ましがられたよ。
 空間拡張リュックがあれば、ロードのスタート付近にある自分たち専用部屋まで、獲物を持って戻らなくても済むから。

「こりゃぁ、銀級パーティー2組以上に限定する必要があるな」

 私が瞬殺した大蛇と中型トカゲを見て、サブチーフが入場制限の必要があると言い、【ロードの悪魔】の2人も同意していた。

 サブチーフが言っていた、地上に続いている可能性がある側道前に10時頃到着し休憩した。ゴールである巨大な岩盤まで残り1キロらしい。
 ゴールの岩盤は異常に固く、魔術師が砕こうとしたけど30センチくらいしか砕けなかったそうだ。


 到着したゴールで、私は岩盤に耳を当てて音を確認してみたけど、黒い岩盤を伝って掘削するような音は聴こえなかった。

『サンタさん、これは岩が邪魔しとるんやのうて、地震か何かで地面が大きくズレたんちゃうか?』

 地質学者でもあった守護霊のトキニさんが、突然遮られた感じのゴールを見てそう言った。
 サブチーフによると、ゴール付近は完全に土と小石で埋まっていたらしい。

『本当に地面がズレたんなら、地上に出ればその痕跡があるはずや』

 今のところ南ゲート側から進入される心配はなさそうだから、トキニさんの仮説を確認する方がいいだろうと、他の守護霊たちの意見も一致した。

 守護霊のことは秘密にしておきたいから、サブチーフには地面がずれた可能性を伝え、確認するためにも地上に出る必要があるから、目標を地上に出ることへ切り替えると皆に指示を出した。

 
 
 地上へ続いている可能性のある側道は、未採掘のロードだから明かりがない。
 サブチーフが広域ランプを手に持って道を照らしながら、この側道から地上の小型動物が出てきたとハンターから報告を受けていたけど、未だ誰もこの側道の探索を行っていないと説明してくれた。

 側道を200メートルくらい進むと、頬に風が感じられるようになり、照らされた道は上に向かって伸びていた。
 イオナロードは薄い茶色の土の色だったけど、この辺りの土の色は焦げ茶に黄色や朱色が混じっている。トキニさん曰く粘土質の土らしい。ほうほう。
 
 罠に気を付けゆっくり登っていると、側道の途中に広い空間が現れ、道が3つに分かれてしまった。
 右の側道からズルズルと何かを引きずるような音がして、ランプで照らした先に赤く光る2つの目が見えた。

「足音もするから大トカゲじゃないか?」とルーデンさんが槍を構えて警戒する。

 現れたのは見たこともないアースドラゴンに似たトカゲで、イオナロードの大トカゲより少し小さく、体は黒く足と尻尾は深緑色で、頭にはとさかのようなギザギザがあった。
 念のため、初手からアースドラゴンと同じ倒し方で討伐した。
 まだ収納できるのかと3人は驚いていたけど、誤魔化すように笑って直ぐに空間拡張リュックに収納した。

 そしてハアハアと息を切らしながら、三叉路の中で唯一上に向かう道を登ること1時間、何故か罠類は見当たらず光が差し込む場所に辿り着いた。
 サブチーフが丁寧に地表の土を崩して、地上に出る穴を開けた。
 用心しながら地上に出ると、直ぐ正面には高さ20メートルほど丘があり、後方を振り向くと、200メートルくらい先から急な下りで眼下に広大な森が広がっていた。

 ……どうやらここは山の上みたい。地下から山の上じゃキツイはず。身体強化の魔法があってよかった。
 
 側道は北に向かって伸びており、登った距離も合計したらロードのゴールの岩盤くらいの位置かもしれない。


 次は正面の丘の先を確認するため、【ロードの悪魔】の2人が先に登っていく。
 私とシリスはその後ろを登りながら、この丘の上から見える景色にちょっとワクワクする。
 サブチーフは、獣が来ないか見張りながら少し遅れて登ってくる。

 そろそろ頂上だと思った時、先に登りきったリーダーのドットルさんが「信じられない」と呟き、頂上に生えていた大きな木の陰に移動していく。
 ルーデンさんも登ったところで立ち止まり、急に身をかがめた。
 はて? いったい何があったのかなと首を捻りながら私も登っていく。

「なにこれ凄い! まさかあれ、南ゲートのアルバの町? えっ、信じられない」

 登りきった先の光景を見た私は、ドットルさん同様信じられないと声を発し、急いで近くの木の後ろに隠れた。

『確かにこの光景は天変地異の影響ね』と、パトリシアさんも驚きながら言う。

『ここが隆起の始まり地点で間違いないな。それにしても凄いスケールだ』

 高度文明紀のショーニスさんが、突然現れた眼下に広がる光景と森を見て言う。

 西に見えるのはハッシュ辺境伯領で、北東と東と南には広大な森が広がり、地下には古代都市ロルツがある。
 その広大な森の南北を断絶するかのように、100メートル級の絶壁が遥か東まで伸びている光景は圧巻だ。

 最後に登ってきたサブチーフも、眼下に広がる町と絶壁を見て驚き、間違いなく南ゲートのアルバの町だと断言した。
 アルバの町は120メートルくらい下にあり、私たちは絶壁のてっぺんに辿り着いたのだった。

 ……古代人たちは天変地異でロードを塞がれ、地上に出る側道を掘ったってことかな?
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