三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、トレジャーハンターになる

9 運命の出会い(4)

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 ゴトゴトとゆっくり進む馬車の中で、兄さまと同じ5歳の可哀想な男の子のことを考えてみる。
 うちの従兄たちみたいに粗暴で威張っていたら嫌だけど、優しくて賢かったらいいなぁ。この際、顔は全く期待しないし問題じゃない。

『庶子だから、父親と同じ屋敷で暮らしてはいなかっただろうけど、本妻や側室は彼の存在を知っていて、何か嫌がらせをしてきたんだろうなぁ。
 他家に養子に出してでも、命だけは助けたいって感じかぁ・・・』

『昔も後継者争いはあったが、わしは家に縛られるのも嫌じゃったし、面倒な統治とか政治には興味も持てなかった。
 王になった兄は病死したが、次の王には弟がなったくらいじゃ。
 サンタと同じように、素直なまま育っておれば良いが、世を恨んでいるような者には、魔法を伝授する気はないぞ』

 サーク爺が心配しているのは、その子の性格と資質らしい。
 悪意で魔法を使えば多くの人が死ぬ可能性もあるし、魔法使いは危険だと敵視されることになりかねないって心配してる。
 それと、私ほどじゃなくても、かなりの魔力量がなければ、サーク爺と私の指導についてこれないだろうって。

 ……う~ん、私もまだ魔術師に会ったことがないから、中位魔術師の魔力量が分からない。いや、そもそも私の魔力量ってどのくらい?

「ホッパーさん、魔術師の魔力量って、何処かで測ることができるの?」

「さあ・・・どうでしょう。魔術師学校や王立能力学園になら、専用の魔術具が有るかもしれません。
 うちの商会には魔術師がいませんから、耳にしたことがないんです」

 そうなんだ。物知りのホッパーさんでも、魔術師には詳しくないんだ。
 そう言えば、魔術師の大半は高位貴族家に生まれてくるらしい。
 職業適性は遺伝しないとお爺様が言っていたけど、魔力量は遺伝するのかもしれない。だから高位貴族の方が多いのかも。

『ところでサンタよ、わしらは魔術じゃなくて魔法を使っておるが、そこは大丈夫なのか? わしが思うに魔術は、魔法陣とか長い詠唱が必要じゃった気がするぞ』

『ええぇーっ! そうなの? どうしよう・・・』

 ここで問題が発生した。
 かなり大きな問題だと思うけど、私は魔術師として王宮で働きたい訳でも、上位貴族家のお抱えになる気もない。
 トレジャーハンターだったら、魔術でも魔法でも気にしないと思うんだけど、確認は必要よね。
 
 私って見た目は3歳の幼児だけど、サーク爺の超古代の知識と、現代とは少しずれた常識を持っているから、その子が私を拒絶しないかが心配。
 そもそも、私の職業は【魔術師】じゃないんだけど、教えるのってアリ?

「え~っと、まだ言ってなかったんだけど、私の職業ランクは中位で【過去・輪廻】なんだ。
 教会でも詳しい仕事内容が不明っていう怪奇な職業だけど、本人がそれでもいいって言えば引き受けるよ」

「えっ? サンタさんは中位職の【魔術師】ではないのですか?
【過去・輪廻】? 聞いたことがない職業ですね。
 そう言えば何故、サンタさんは魔術が使えるのでしょう?」

 ホッパーさんは本当に驚いたって顔をして、不思議なものを見るような目で私を凝視して首を捻る。

「そもそも、私が使っているのは魔術ではなく【魔法】です。
 私の職業【過去・輪廻】は、遠い遠い昔に生きた人の記憶や技術を伝承し、それらを具現化する能力なんです。
 私が使っている魔法は、1万年前の高度文明紀よりも前の、超古代文明紀に生きていた天才魔法使いの技術です」

「・・・超古代文明・・・天才魔法使い・・・?」

 ……あっ、ホッパーさんが固まった。



 街道の休憩所で待つこと2時間、ごく普通の馬車に乗って輝くような美少年がやってきた。
 きちんと切り揃えられた金髪を風に靡かせ、高位貴族でございます的なブルーの澄んだ瞳。身長は兄さまと同じくらいだけど、隠せない上品さが滲み出ている。

 ……あかん、これはアカンよ。やんごとない感が全然隠せてないやん。

 ……私なんて、何処から見ても野生児よ? 誰も貴族のお嬢様って気付かないんだけど?

「はじめましてアンタレスです。これからお世話になります。
 いろいろご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」

 ……あぁ、声も貴公子って感じ。ちゃんと挨拶もできるし威張ってない。

「ようこそゲートルへ。ホッパー商会の商会長をしているホッパーです。
 これからは我が家だと思って、気楽にお過ごしください。
 こちらは、私がさる貴族家からお預かりしているサンタさんです。
 詳しい話は、商会に到着してからでいいでしょう。どうぞ、私の馬車にお乗りください」

 ホッパーさんは、貴公子を送ってきた御者に銀貨を握らせ、お疲れさまでしたと言って労った。
 さり気無い気遣いが素敵。こういうところが大商人って感じよね。

『どうやら心は腐っておらんようじゃ』

『あの澄んだ瞳をみれば、私の身内のバカ従兄たちとは全く違うって分かる。
 どこか緊張していて、不安を一生懸命に隠そうとしているっぽいのも良い』

『サンタや、おぬし本当に3歳か? 本当は30歳くらいじゃろう』

『誰のせいでこんな幼女になったと思ってるの? みんなサーク爺のせいじゃん』

 サーク爺と念話でやり合っていると、アンタレスくんが不思議そうに私を見ていた。
 あぁ~、一人百面相してたんだ。顔に出てましたか? そうですか。赤面。

「サンタさんもよろしくね」と、アンタレスくんが爽やかに微笑む。

「はい、よろしくします」

 ……いかーん、間違えたー! うちの兄さまも貴公子風だけど、こっちは本物。なんだか眩しい・・・とりあえず笑っとこ。


 馬車の中でホッパーさんとアンタレスくんの会話を聞いていたけど、兄さま同様に頭の回転もいいし、受け答えも丁寧だった。
 これが演技だったらガッカリだけど、見た目通りだったら嬉しい。

『ふむ、この者は呪われておるみたいじゃぞ。この時代にも、呪術を使う者がおるようじゃな』

『はい?』
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