三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん

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サンタさん、トレジャーハンターになる

10 怒りのファイト子爵

 ◇◇ ファイト子爵 ◇◇

 久し振りに王都での仕事を済ませ、次男のところに生まれた可愛い孫のエリザにも会えた。
 何よりも嬉しかったのは、私と妻、長男アイガー31歳、次男カーレイル25歳、そして長女のルクナ28歳を含め、家族全員で一緒に食事できたことだ。
 
 次男のカーレイルは王宮務めだから、余程のことがないとファイト子爵領に戻ってこれないし、長男は中位職である【経営】の能力を上げるため、寄り親であるロルツラ侯爵様の王都屋敷で勉強中だ。
 それぞれが結婚し子供も授かった。夫を喪ったルクナは可愛そうだが、発明品の販売も好調だから援助もしてやれそうだ。

 問題があるとしたら、後継者を巡り長男アイガーの嫁シンシアが、ルクナ親子を追い出そうと躍起になっていることだ。
 しかしそれも、ルクナが王都に移り住むことで解決するだろう。
 プライドの高い嫁には言っていないが、ルクナの最も親しい友人は王太子殿下に嫁いでいて、王宮で働く段取りもしていただいた。


 できることなら、孫のサンタナリアの詳しい職業は伏せておきたい。
 どう考えても普通とは思えない知識量と、普通の子供とかけ離れた思考や価値観を持っている。
 祖父としては大歓迎だが、対外的に優秀さを知られるのは、中級学校に入学する9歳くらいが望ましい。

 サンタナリアと話していると、まるで王立能力学園を卒業している大人と同等に会話できてしまうので、幼児であることを忘れそうになる。
 サンタナリアは【過去・輪廻】の影響だと言っていたが、教会でも詳しい仕事内容が掴めない程に希少で特異な職種であることは間違いない。

 ……なんとか自由に才能を伸ばしてやりたい。

 ……王都で暮らせば、あの優秀さに気付く者が絶対に出てくる。そうなったら、強引に養子縁組を迫られたり、最悪攫われる可能性だってある。


 そんなことを帰りの馬車の中で考えていたのに、自領に戻った私を待っていたのは、サンタナリアが行方不明になっているという信じられない報告だった。

「繋いでいた手が離れたとナリスティアが気付いた時には、サンタナリアの姿はもう見えませんでした。
 2人で懸命に夜まで探したのですが、サンタナリアの姿は、何処を探しても・・・ど、どんなに探しても、うぅ、見付けられませんでした」

「な、なんだと! 2人で探した? 何故直ぐに警備隊や統治官に届け出なかった! 見付からないのに帰ってきたのか!」

 白々しく涙を流すフリをして、明らかに虚言だと分かる嫁の言い訳と態度に、怒りが抑えられず執務机をドン!と思わず叩いてしまった。

「あんまりです。何故、小さなサンタナリアを隣町に連れて行ったのです!」

 母親のルクナも今回ばかりは声を荒らげ、日頃から娘を虐げていた嫁に文句を言う。

「だってお爺様、サンタナリアはバカだから、自分で警備隊にも行けないし、名前も言えないマヌケだから帰ってこないんです。
 それに、ファイト子爵家にあんな出来損ないは要らないでし・・・」

 パチーン!

「自分が手を離したことを詫びもせず、サンタナリアを出来損ないだと貶めるとは、ナリスティア、私は以後、お前には1エーンたりとも支援しない。
 中級学校と王立高学園の学費は、ファイト子爵家から出すことはない!」

 もう自分が止められなかった。
 本当は嫁を叩きたかったが、ナリスティアの態度が子供とは思えないほど横柄で、あの賢いサンタナリアを見下すことが許せなかった。
 叩かれて泣き出したナリスティアは、「どうして私が叩かれるの! お爺様なんて大嫌い!」と喚いて執務室から出て行った。

「叩いたことが気に入らなければ、アイガーと離縁して出て行け。
 もしもサンタナリアが見付からなければ、アルシスを後継者にすることもない」

 わなわなと怒りで震えている嫁シンシアに、私はきっぱりと言い放った。
 これまで甘すぎた。息子のアイガーが留守で寂しいだろうと思い、放漫な態度を見逃してきた。

「あ、あんまりです。サンタナリアの行方不明と、アルシスの後継者決定は関係ないではないですか! 
 ルクナ、貴女がこの家に戻って来るからいけないのよ。あんな恥ずかしい子、居なくなった方が・・・ゴホン、とにかく、私はちゃんと捜索願いも出しました」

 この嫁の根性は、ここまで醜く歪んでいたのか・・・断っても断っても強引に婚姻を迫っておいて、義父である私をも下に見た物言いをするとは・・・
 私の鬼のような形相に怯んだのか、嫁はそれ以上言い訳せずに出て行った。


「お父様、私、直ぐにゲートルの町にサンタナリアを探しに行きます。馬車を、馬車をお借りします」

「いや待てルクナ、私も行こう」

 そう応えてカバンを手に持ったところで、執事がドアをノックして入ってきた。

「旦那様、ゲートルの町のホッパー商会の商会長から、急ぎの早馬便が届いております」

「何? ゲートルの町のホッパー商会だと?」

 執事の言葉で、失っていた理性が少しだけ戻った。
 逸る気持ちを抑え、早馬便を奪うようにして取り開封する。
 ゲートルの町・・・サンタナリアが行方不明になっている町からの早馬便だ。
 これは何かあると、私の感が告げていた。


 ファイト子爵様

 取り急ぎ報告いたします。
 孫のサンタナリアさまは、当方で保護させていただいております。
 命の危険を心配されておられるようで、暫く逗留をお望みです。
 経緯は直接お会いしてお話しすべきかと思います。
 神の導きにより、私はサンタナリアさまに窮地を救われました。 ホッパー

 ……ああぁぁ、神よ感謝いたします。良かった。サンタナリアは無事だった。

 気付いたら涙が滂沱と流れており、安堵と感謝で一気に力が抜け、その場にしゃがみ込んでしまった。

「ルクナ、サンタナリアは無事だ。だが、そのことは秘密にしておけ」

 ……命の危険? きっと賢いサンタナリアは、自ら戻ってこないのだろう。

「サンタナリアは、本当に無事なのですか?」

 どういうことなのですかと問う娘ルクナに、ホッパーから来た手紙を手渡した。

 ……待っていろサンタナリア。お爺ちゃんが迎えに行くからな。
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