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本編
39.ジュードのけじめ
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自分は優しくないと自嘲して笑うジュードのことをエルフリーデは真っ向から否定した。
「でもずっと……ずっとそうしてわたしのこと守っていてくれたんでしょ? そうとは分からないように傍にいてくれたんでしょ?」
「まあ結局はバレちゃったけどね」
「わたし、ジュードが付く優しい嘘なら好きだよ? そういうジュードが好き。嘘ついててもずっとジュードは優しかったし。それにね、今のジュードもすっごく優しいよ? だからジュードが優しいのは本当で嘘じゃないと思うの。だからわたしジュードが好き」
「なっ……!?」
エルフリーデにきっぱりとそう言い切られて口をポカンと開けていたと思ったら、次にジュードは疑わしそうにエルフリーデをジッと見つめてきた。ジュードが心の奥底に抱いていた12年分の思いを吐き出しても、それをすんなり全部エルフリーデが受け入れてくれたことが信じられないようだ。そして探るような目で見られてエルフリーデも内心ドキドキしていた。
「……リー、お人好しって言葉知ってる?」
「知ってるわよ? でもジュードの方がお人好しだってこと、気付いてる?」
「どうしてそう思うの?」
「だってどんなにわたしが無茶してジュードのこと怒らせたり心配させたりしても、結局最後はわたしのこと許してくれるでしょ?」
「まったく……リーには本当に敵わないな」
エルフリーデに受け入れられてジュードは安心したのかもしれない。おいでと身体を抱き寄せられてエルフリーデは強く抱き締められた。エルフリーデを腕の中に閉じ込めたまま、ジュードはエルフリーデの華奢な首筋に顔を埋めて暫くの間動こうとはしなかった。
◇◇◇◇
ジュードの強い抱擁から少しして、エルフリーデの首筋に顔を埋めたままでいるジュードの背中を撫でながら、エルフリーデは遠慮がちに口を開いた。
「あの、もう1つ聞いてもいい?」
「……いいよ。今度は何が知りたいの?」
エルフリーデの問いかけにジュードがやっと顔を上げた。意地悪な魔王の微笑みを浮かべるジュードではなく、いつもの天使の顔をした優しいジュードの顔に戻っている。
「どうしてあんなに、ジュードはケジメにこだわるの?」
「……リーが約束してっていったんだよ」
「えっ?」
「リーが、リーのご両親からキス以上は大人になってからじゃないとしちゃ駄目って言われたのを、そのまま僕に伝えてきたんだけど。……全く覚えてない?」
「…………」
「リー?」
「あ……っ!」
──王城の裏にある隠された庭園。婚約者と認められて以降もそこで遊ぶことを許されたエルフリーデとジュードが、いつものように日向ぼっこを楽しんでいた時のことをエルフリーデは思い出した。
十
『あのね。とおさまとかあさまがね。けっこんするまでキスいじょうはしちゃダメだっていってたの。それいじょうするのはフジュンなんだって。ジュードにもおしえてあげなさいっていってたの』
『……やられたな』
『ジュード、ケジメってなあに?』
しっかり釘を刺された。それも意味を理解していない幼い婚約者の口から語らせる辺り、エルフリーデの両親は相当に頭が良い。ジュードがエルフリーデとの約束を破れないことを、無下に出来ないことをよく知っている。そしてだからこそエルフリーデの婚約者としてジュードを認めてくれたのも確かだった。
『ジュード?』
『何でもないよ。リーは僕にそうして欲しいの?』
『えっとね。よくわからないけど。エルフリーデもケジメなんだって』
『……分かったよ。約束する。リーと結婚するまでキス以上は手を出さない。ちゃんとケジメを付ける。だからリー、18になったら結婚してくれる?』
『うん!』
十
「……そう言えば、そうだった……」
「要約するとリー自身から結婚するまで手を出さないでってことを僕は間接的に言われたんだけど」
言葉も無いとはこのことか。エルフリーデは本当に言うべき言葉が一言も見つからなかった。
「リーとリーのご両親との約束だからね。結婚するまでは手を出さないって。キス以上のことはしないって。だからこの12年間ずっと我慢し続けていた分、あと3ヶ月なんて余裕でクリア出来ると思ってたのにさ、よりにもよってリーから迫られるなんて夢にも思わなかったよ」
「ごっ、ごめんなさぃ……」
だってすっかり忘れていた。そんな約束してたなんて。覚えていたら自分から迫って手を出させようと仕掛けたりなんてしなかったと、エルフリーデは羞恥に顔を赤らめる。
だからジュードはエルフリーデに結婚の期日までの3ヶ月間、自分に手を出さなくて平気なのかと聞かれたときも笑って平気だと答えたのだ。12年間我慢していたのだから3ヶ月位確かに余裕だろう。エルフリーデにこうも積極的に四六時中迫られなければ、の話だが。
「リーって男殺しだよね」
「……えっと、それはその……ホント、ごめんなさい……」
そんなつもりじゃなかったの。と、それ以上は言葉に出せなくてエルフリーデはひたすら心の中でジュードに謝罪した。
「でもずっと……ずっとそうしてわたしのこと守っていてくれたんでしょ? そうとは分からないように傍にいてくれたんでしょ?」
「まあ結局はバレちゃったけどね」
「わたし、ジュードが付く優しい嘘なら好きだよ? そういうジュードが好き。嘘ついててもずっとジュードは優しかったし。それにね、今のジュードもすっごく優しいよ? だからジュードが優しいのは本当で嘘じゃないと思うの。だからわたしジュードが好き」
「なっ……!?」
エルフリーデにきっぱりとそう言い切られて口をポカンと開けていたと思ったら、次にジュードは疑わしそうにエルフリーデをジッと見つめてきた。ジュードが心の奥底に抱いていた12年分の思いを吐き出しても、それをすんなり全部エルフリーデが受け入れてくれたことが信じられないようだ。そして探るような目で見られてエルフリーデも内心ドキドキしていた。
「……リー、お人好しって言葉知ってる?」
「知ってるわよ? でもジュードの方がお人好しだってこと、気付いてる?」
「どうしてそう思うの?」
「だってどんなにわたしが無茶してジュードのこと怒らせたり心配させたりしても、結局最後はわたしのこと許してくれるでしょ?」
「まったく……リーには本当に敵わないな」
エルフリーデに受け入れられてジュードは安心したのかもしれない。おいでと身体を抱き寄せられてエルフリーデは強く抱き締められた。エルフリーデを腕の中に閉じ込めたまま、ジュードはエルフリーデの華奢な首筋に顔を埋めて暫くの間動こうとはしなかった。
◇◇◇◇
ジュードの強い抱擁から少しして、エルフリーデの首筋に顔を埋めたままでいるジュードの背中を撫でながら、エルフリーデは遠慮がちに口を開いた。
「あの、もう1つ聞いてもいい?」
「……いいよ。今度は何が知りたいの?」
エルフリーデの問いかけにジュードがやっと顔を上げた。意地悪な魔王の微笑みを浮かべるジュードではなく、いつもの天使の顔をした優しいジュードの顔に戻っている。
「どうしてあんなに、ジュードはケジメにこだわるの?」
「……リーが約束してっていったんだよ」
「えっ?」
「リーが、リーのご両親からキス以上は大人になってからじゃないとしちゃ駄目って言われたのを、そのまま僕に伝えてきたんだけど。……全く覚えてない?」
「…………」
「リー?」
「あ……っ!」
──王城の裏にある隠された庭園。婚約者と認められて以降もそこで遊ぶことを許されたエルフリーデとジュードが、いつものように日向ぼっこを楽しんでいた時のことをエルフリーデは思い出した。
十
『あのね。とおさまとかあさまがね。けっこんするまでキスいじょうはしちゃダメだっていってたの。それいじょうするのはフジュンなんだって。ジュードにもおしえてあげなさいっていってたの』
『……やられたな』
『ジュード、ケジメってなあに?』
しっかり釘を刺された。それも意味を理解していない幼い婚約者の口から語らせる辺り、エルフリーデの両親は相当に頭が良い。ジュードがエルフリーデとの約束を破れないことを、無下に出来ないことをよく知っている。そしてだからこそエルフリーデの婚約者としてジュードを認めてくれたのも確かだった。
『ジュード?』
『何でもないよ。リーは僕にそうして欲しいの?』
『えっとね。よくわからないけど。エルフリーデもケジメなんだって』
『……分かったよ。約束する。リーと結婚するまでキス以上は手を出さない。ちゃんとケジメを付ける。だからリー、18になったら結婚してくれる?』
『うん!』
十
「……そう言えば、そうだった……」
「要約するとリー自身から結婚するまで手を出さないでってことを僕は間接的に言われたんだけど」
言葉も無いとはこのことか。エルフリーデは本当に言うべき言葉が一言も見つからなかった。
「リーとリーのご両親との約束だからね。結婚するまでは手を出さないって。キス以上のことはしないって。だからこの12年間ずっと我慢し続けていた分、あと3ヶ月なんて余裕でクリア出来ると思ってたのにさ、よりにもよってリーから迫られるなんて夢にも思わなかったよ」
「ごっ、ごめんなさぃ……」
だってすっかり忘れていた。そんな約束してたなんて。覚えていたら自分から迫って手を出させようと仕掛けたりなんてしなかったと、エルフリーデは羞恥に顔を赤らめる。
だからジュードはエルフリーデに結婚の期日までの3ヶ月間、自分に手を出さなくて平気なのかと聞かれたときも笑って平気だと答えたのだ。12年間我慢していたのだから3ヶ月位確かに余裕だろう。エルフリーデにこうも積極的に四六時中迫られなければ、の話だが。
「リーって男殺しだよね」
「……えっと、それはその……ホント、ごめんなさい……」
そんなつもりじゃなかったの。と、それ以上は言葉に出せなくてエルフリーデはひたすら心の中でジュードに謝罪した。
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