手出しさせてやろうじゃないの! ~公爵令嬢の幼なじみは王子様~

薄影メガネ

文字の大きさ
41 / 58
本編

39.ジュードのけじめ

しおりを挟む
 自分は優しくないと自嘲じちょうして笑うジュードのことをエルフリーデは真っ向から否定した。

「でもずっと……ずっとそうしてわたしのこと守っていてくれたんでしょ? そうとは分からないように傍にいてくれたんでしょ?」
「まあ結局はバレちゃったけどね」
「わたし、ジュードが付く優しい嘘なら好きだよ? そういうジュードが好き。嘘ついててもずっとジュードは優しかったし。それにね、今のジュードもすっごく優しいよ? だからジュードが優しいのは本当で嘘じゃないと思うの。だからわたしジュードが好き」
「なっ……!?」
 
 エルフリーデにきっぱりとそう言い切られて口をポカンと開けていたと思ったら、次にジュードは疑わしそうにエルフリーデをジッと見つめてきた。ジュードが心の奥底に抱いていた12年分の思いを吐き出しても、それをすんなり全部エルフリーデが受け入れてくれたことが信じられないようだ。そして探るような目で見られてエルフリーデも内心ドキドキしていた。

「……リー、お人好しって言葉知ってる?」
「知ってるわよ? でもジュードの方がお人好しだってこと、気付いてる?」
「どうしてそう思うの?」
「だってどんなにわたしが無茶してジュードのこと怒らせたり心配させたりしても、結局最後はわたしのこと許してくれるでしょ?」
「まったく……リーには本当に敵わないな」

 エルフリーデに受け入れられてジュードは安心したのかもしれない。おいでと身体を抱き寄せられてエルフリーデは強く抱き締められた。エルフリーデを腕の中に閉じ込めたまま、ジュードはエルフリーデの華奢な首筋に顔を埋めて暫くの間動こうとはしなかった。



◇◇◇◇



 ジュードの強い抱擁から少しして、エルフリーデの首筋に顔を埋めたままでいるジュードの背中を撫でながら、エルフリーデは遠慮がちに口を開いた。

「あの、もう1つ聞いてもいい?」
「……いいよ。今度は何が知りたいの?」

 エルフリーデの問いかけにジュードがやっと顔を上げた。意地悪な魔王の微笑みを浮かべるジュードではなく、いつもの天使の顔をした優しいジュードの顔に戻っている。

「どうしてあんなに、ジュードはケジメにこだわるの?」 
「……リーが約束してっていったんだよ」
「えっ?」
「リーが、リーのご両親からキス以上は大人になってからじゃないとしちゃ駄目って言われたのを、そのまま僕に伝えてきたんだけど。……全く覚えてない?」
「…………」
「リー?」
「あ……っ!」

 ──王城の裏にある隠された庭園。婚約者と認められて以降もそこで遊ぶことを許されたエルフリーデとジュードが、いつものように日向ぼっこを楽しんでいた時のことをエルフリーデは思い出した。





『あのね。とおさまとかあさまがね。けっこんするまでキスいじょうはしちゃダメだっていってたの。それいじょうするのはフジュンなんだって。ジュードにもおしえてあげなさいっていってたの』
『……やられたな』
『ジュード、ケジメってなあに?』

 しっかり釘を刺された。それも意味を理解していない幼い婚約者の口から語らせる辺り、エルフリーデの両親は相当に頭が良い。ジュードがエルフリーデとの約束を破れないことを、無下むげに出来ないことをよく知っている。そしてだからこそエルフリーデの婚約者としてジュードを認めてくれたのも確かだった。

『ジュード?』
『何でもないよ。リーは僕にそうして欲しいの?』
『えっとね。よくわからないけど。エルフリーデもケジメなんだって』
『……分かったよ。約束する。リーと結婚するまでキス以上は手を出さない。ちゃんとケジメを付ける。だからリー、18になったら結婚してくれる?』
『うん!』





「……そう言えば、そうだった……」
「要約するとリー自身から結婚するまで手を出さないでってことを僕は間接的に言われたんだけど」
 
 言葉も無いとはこのことか。エルフリーデは本当に言うべき言葉が一言も見つからなかった。

「リーとリーのご両親との約束だからね。結婚するまでは手を出さないって。キス以上のことはしないって。だからこの12年間ずっと我慢し続けていた分、あと3ヶ月なんて余裕でクリア出来ると思ってたのにさ、よりにもよってリーから迫られるなんて夢にも思わなかったよ」
「ごっ、ごめんなさぃ……」
 
 だってすっかり忘れていた。そんな約束してたなんて。覚えていたら自分から迫って手を出させようと仕掛けたりなんてしなかったと、エルフリーデは羞恥しゅうちに顔を赤らめる。
 だからジュードはエルフリーデに結婚の期日までの3ヶ月間、自分に手を出さなくて平気なのかと聞かれたときも笑って平気だと答えたのだ。12年間我慢していたのだから3ヶ月位確かに余裕だろう。エルフリーデにこうも積極的に四六時中しろくじちゅう迫られなければ、の話だが。

「リーって男殺しだよね」
「……えっと、それはその……ホント、ごめんなさい……」

 そんなつもりじゃなかったの。と、それ以上は言葉に出せなくてエルフリーデはひたすら心の中でジュードに謝罪した。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

お姫さんと呼ばないで

秋月朔夕
恋愛
華族の娘として生まれたからにはお家のために結婚しなさい。そう父に言われ続けて、わたしは今日幼馴染と結婚する。けれど洋館で出迎えた男は全く違う人だった。

私を抱かないと新曲ができないって本当ですか? 〜イケメン作曲家との契約の恋人生活は甘い〜

入海月子
恋愛
「君といると曲のアイディアが湧くんだ」 昔から大ファンで、好きで好きでたまらない 憧れのミュージシャン藤崎東吾。 その人が作曲するには私が必要だと言う。 「それってほんと?」 藤崎さんの新しい曲、藤崎さんの新しいアルバム。 「私がいればできるの?私を抱いたらできるの?」 絶対後悔するとわかってるのに、正気の沙汰じゃないとわかっているのに、私は頷いてしまった……。 ********************************************** 仕事を頑張る希とカリスマミュージシャン藤崎の 体から始まるキュンとくるラブストーリー。

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

恋に恋するお年頃

柳月ほたる
恋愛
王城で開催される舞踏会で社交界デビューを果たした伯爵令嬢・エウフェミア。 しかし予想外に殺到するダンスの申し込みに疲れ切って大広間から逃げ出した彼女は、迷った先で絵本に出てくる王子様そっくりの見目麗しい男性と出会う。 2日後に出征するという彼にすっかり心奪われてしまったエウフェミアは…。 素直で天真爛漫な箱入り娘と、彼女を手に入れたくて堪らない王太子様の、甘い恋の物語。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...