墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
8 / 19
第一章 誕生

第8話 本心

しおりを挟む
「は~。本当に白金貨が入ってる。綺麗だな~」

 自分の家に帰ってきて皮袋を取り出すとうっとりと白金貨を見つめる。初めて見る白金貨。白く煌めいていて心を奪われてしまう。

「しばらくは大人しく暮らそう。ダンジョンはもうこりごりだし」

 お金も手に入ったし、危険なことをする意味はないよね。
 お墓の仕事に集中するのもいいかもな。雑草とかも生えてるし、手入れしないと。
 そう思って次の日。
 お墓を掃除してふとじいちゃんの小屋を見る。

「そういえば、じいちゃんの小屋は掃除してなかったな~。埃とか凄いことになってるだろうな~」

 じいちゃんの小屋に入る。人が一人住めるくらいの狭い家。かまどとベッドとタンス、あとは机と椅子があるだけの小屋。

「思った通り、埃が凄いや。じいちゃんが死んじゃってから掃除は数回やったくらいだったっけ」

 思いふけて呟く。その時、ふと床に視線を落とした。

「あれ? 軋んでるな~。補修しておいた方がいいかな」

 床板がやせ細っていて今にも抜けてしまいそうになってる。人が住まないと家も息をしなくなっちゃうとかいうから、痛んでしまったんだろうな。しかし、危ないな~。
 床を手で触って傷み具合を確認する。ミシミシと悲鳴をあげる床、床下が見えてしまってる。

「はぁ~。これはダメだな~。補修しないと……? あれ? 床下に空間がある?」

 ため息をついて床下を見る。そこには人が入れるほどの空間があることに気が付いた。よくみるとその床自体外せるようになってる。

「じいちゃんの秘密の部屋か。そういえば、職業が侍で忍者だったんだっけ。上位職と言われるレアな職業なんだよな。レベルをあげてなれるか慣れないかって言う職業だ」

 神様から贈られる職業はもらってから育てることが出来る。グナトと言われていた戦士もあと少しで勇者になれたと言われていたように再度教会で神様から選定しなおしてもらえば勇者になれた。今の僕が教会に行ったらどうなるか。想像しただけでも怖いな。

「とにかく、入ってみるか」

 想像して身震いしながら気を取り直す。床板を外して中を確認する。梯子がかかっているので降りることにした。

「は~……忍者って本当だったんだな~」

 小刀に手裏剣とかいう投げもの、忍者の黒装束まであるよ。

「凄いな~。ん? 手紙?」

 小さな木箱にすっぽりとはまる手紙。手に取って開くとじいちゃんが僕に向けて言葉をつづっていた。

「『アレアへ。この手紙を読んでいるころ儂は死んでいるだろう』じいちゃん……」

 思わず涙がこぼれる。続きを読もうと思って目を擦る。

「『この部屋に入ったということは気が付いたじゃろう、儂の過去に。そう、儂は忍者だったんじゃ。職業としては侍と忍者の両立をなしたんじゃがな。なかなかに凄い人物だったんじゃぞ』分かってるよそんなの……」

 涙で揺れる文字に思わず笑みがこぼれる。武勇伝なんて全然話さなかった癖に手紙だと饒舌なんだから。

「『アレアがどんな職業に就くかわからなかったが儂の孫じゃからな。相当凄いものになっておるだろう』……」

 じいちゃんの予想と反してダメな方の職業だったよ。少し落ち込んで読み続ける。

「『ダメでも気に病むことはないぞ。儂の継承者なんじゃ、ある裏技があるからの』それって!? 『気づいておるかもしれんが【墓守の継承者】のスキルじゃ。これは遺体の一部、爪でも持って居れば効果が発揮される。その人物の力が手に入るんじゃ。儂の力を存分に使いなさい』」

 じいちゃん、やっぱり知ってたんだ。でもじいちゃんがそんなものを持っていたなんて気づかなかったな。

「『優しいアレアじゃからな。知り合いである儂の力を使うのがやっとじゃろ』ははは、じいちゃんには敵わないや」

 帰ってきた時に思ったことを言い当てられてる。思わず笑っちゃった。

「『この部屋の武器や防具は儂が王に使えた時に使っていたものじゃ。自由に使いなさい。儂の力を得たのなら馴染むはずじゃ』武器? 防具?」

 周りを見渡す。小刀と手裏剣しか見えないけどな。

「あっ、大きな箱か」

 手紙とは反対にあった大きな箱。人が一人入れるくらいの箱だな。
 箱を開けるとそこには箱いっぱいの長さの大きな刀と半分くらいの刀、それとチェーンメイルと言われる鎧が入っていた。

「大きな刀だな~。それにこっちはあそこに置いてある小刀よりも大きい。これがじいちゃんが使っていた刀達か。なんか侍になった気分だな」

 背中に背負ってやっと持てるような大きな刀。半分の大きさの刀も僕が持っている剣よりも大きめだ。ロングソードと同じくらいの長さがある。

「『大きな刀は【龍光】小さな方は【虎光】どちらも名のある鍛冶師が作ったものじゃ。大事にしておくれ。それとミスリルのチェーンメイル。これは肌着としても着れる優れもんじゃ。衣服の下に着れば透明になり、まるでなにも着ていないかのように見える。暗殺されないように着ていたものじゃな。まあ、儂程となると切りつけられる前に返り討ちにしておったがの』はは、じいちゃんってこんなに武勇伝語るの好きだったのか」

 じいちゃんの新たな一面が見れて面白いな。しかし、どれも凄い物っぽい。僕なんかが持っていていいのかな。

「『目立たぬようになど考えるでないぞ。自由に生きるんじゃ。アレアのしたいことをしてゆけよ。幸あらんことを』最後までじいちゃんには驚かされるよ……」

 読み終わって更に涙が溢れてくる。じいちゃんは僕の事よくわかってたんだな。改めて愛されていたことが分かった。

「【龍光】【虎光】よろしくね」

 刀を抱えて声をかける。返事をするように薄っすらと光る二本の刀、チェーンメイルにも挨拶するとこっちも光って答えてくれる。どれも温かみのある熱を感じた。

「温かい」

 二本の刀をマジックバッグにしまってチェーンメイルを着こんだ。ホッと体が温められているように感じる。

「さあ、掃除再開だな」

 じいちゃんの小屋とお墓の手入れ。ちゃっちゃと済ませちゃうぞ。
 
 掃除を初めて次の日。あらかた片付いて家でホットミルクに舌鼓。椅子に腰かけて日の上る姿をただ目で追う。平和だな~。

「じいちゃんには悪いけど、やっぱり目立ちたくないよな~。お金も手に入ったし、冒険者も廃業かな~」

 僕のやりたいことって隠居生活なんだよな~。今まさに実現できてるわけだし、無駄にダンジョンや冒険者の依頼はしなくていいよな。
 ゆったりと日の上る姿と下る姿を見送って眠る。そんな日を三日程過ごした。
 
「は~平和」

 前日と同じように過ごしてる。
 思ってみればじいちゃんもこんな毎日を送ってたよな。僕に勉強を教えてくれたりしていたけど、お墓の掃除を終えるとハンモックに寝そべって毎日お茶を飲んでた。僕は椅子に座ってるけどね。

「アレアさ~ん」

「ん? 誰だろ?」

 町の方から声が聞こえてくる。この声はリコさんかな?

「アレアさん」

「どうしたのリコさん?」

「あ~、またさんなんて言って。呼び捨てにしてって言ったでしょ」

 リコさんがルテナさんとマーヤさんを伴ってやってきた。頬を膨らませて憤りを露わにしてくる。呼び捨ては流石にな~。

「えっと、それで何か用かな?」

「あ~話逸らした……。まあいいけど」

「アレアさん最近見ないなって。それでツィンさんにお願いされて見に来ました」

 疑問を口にするとリコさんが頭の上で両手を組んで不貞腐れた。見かねてルテナさんが答えてくれる。
 あんなことがあった後だし、お金も普通に暮らせるほどもらったからな~。

「アレアさん、冒険者やめるの?」

「「え?」」

 マーヤさんの言葉にリコさんとルテナさんが驚いて見てくる。二人は悲しい顔になっていく。

「そんな。なんでですか?」

「アレアさんみたいな凄い人がなんで?」

 悲しい顔で問いかけてくる二人。僕はポリポリと頬を掻いて答える。

「九死に一生を得てね。少し冒険が嫌になったというか。まあ、色々理由つけてはいるけど、隠居したいなって思ってね」

「もったいないですよ。アレアさんみたいな凄い人が隠居なんて」

「ははは、そんなすごくないよ。でも、ありがと」

 リコさんの頭をポンポンしてお礼を言う。彼女は恥ずかしそうに俯いてしまった。思わず、頭を触ってしまった。嫌だったかな。

「本人がそういうなら仕方ない。私も頭撫でてほしいです」

「マーヤも」

「え?」

 ルテナさんとマーヤさんが僕に頭を向けてくる。驚いて頭に手を置くと嬉しそうにしてくれてる。
 僕みたいな人に親しくしてくれる、優しい子達だな。

「とにかく、ツィンさんがたまには顔を見せてほしそうだったので」

「分かったよ。偶にはいくよ。ってほしそうだったって? 頼まれてきたんじゃ?」

「あっ……」

 リコさんの言葉に疑問に思って声をあげると口を抑えて狼狽えるリコさん。ルテナさんが頭を抱えてる。

「すみませんアレアさん。実はアレアさんの姿を最近見なかったのでツィンさんに家を聞いて様子を見に来たんです。お願いされたというのは嘘でした」

 ルテナさんが申し訳なさそうに説明してくれた。
 なんだ、そうだったのか。別に隠さなくてもいいのにな。なんで嘘をついたんだろ?

「「「ごめんなさい」」」

「別に謝らなくていいよ。心配してくれたんだから。でもなんで嘘を?」

 三人で謝ってくれた。質問すると三人は顔を見合ってマーヤさんが口を開く。

「調べてきたとか思われたら怖いかなって思って」

 ん、そうか。つきまとわれてるみたいな感覚かな? 女の子ならではって感じだな。別に僕はモテないからそうは思わないけどな。

「アレアさんに嫌われたくなくてそれで……」

「え?」

 リコさんが付け加える。思わずため息がでてしまう。

「はぁ~。そんなことで嫌わないよ。色々心配させちゃったみたいだね。明日にはギルドに行くことにするよ」

「本当ですか?」

「うん。心配してくれてありがとね」

 再度、頭を撫でる。彼女達は嫌がらずに撫でられてくれた。
 彼女達が帰るのを見送る。その時、町とは別の方向から男達を引き連れた女性がやってきた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...