墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
9 / 19
第一章 誕生

第9話 ラーシア

しおりを挟む
「あなたがアレア君?」

「え? はい。あなたは?」

「私はラーシア。お金を貸す仕事をしていると言えばわかるかしら?」

 女性がラーシアと名乗ってキセルに火をともした。金貸しか……ハザードさん達の件かな?

「あなたのパーティーメンバーだったハザードって知ってるわよね?」

「はい。借りていたのも聞いていましたけど」

「そう、それなら話が早いわ」

 ラーシアさんはそういって嬉しそうに隣の男の肩を叩いた。男達は屈強でびくともしていない。

「死んでしまったのは残念だけど、ちゃんとお金は返さないといけないと思うのよ。そう思わない?」

「はあ? はい。確かに借りたなら返さないと。で?」

 彼女の言っていることは分かる。だけど、なんで僕のところに来たんだ? やっぱり、僕に払えとか言うのかな?

「元パーティーメンバーのあなたが払うべきだと思うんだけど、嫌かしら?」

 思っていた通りのことを言われて頭を抱える。元パーティーメンバーだけど、親しかったわけじゃないしな~。一年も一緒にいない人たちだったから。

「ハザードさん達とは一年も一緒に居なかったので嫌ですね」

「あら? ハッキリ言うのね。じゃあ、少し痛い思いをしてもらおうかしら?」

「な、何を」

 ラーシアはそういって男たちを差し向けてきた。剣まで抜いてきて明らかに危険な感じだ。

「小僧、恨むなら死んだ男達を恨むんだな」

 男達はそういって剣を振り下ろしてくる。ゆっくりに見える剣を紙一重で避けて【龍光】をマジックバッグから取り出した。

「あら? 抵抗するのね。あんた達! やっちまいな」

『応っ』

 鞘に収まったままの龍光と虎光を両手に構える。左右からはさむように切り込んでくる男達。変わらずにゆっくりに見える攻撃を躱して両手の太刀で吹き飛ばす。手加減しないと死んじゃうから思いっきり手加減してる。

「な、荷物持ちと聞いていたのに!? ならこれで!」

「魔法!?」

 吹き飛ばされた男達を見てラーシアが炎の塊を放ってくる。無詠唱か、魔道具による魔法? たぶん後者だろう。魔道具なら少しMPを込めるだけで魔法が放てる。
 魔道具はとても高価だ。金貸しをしているような人なら簡単に入手できるだろう。

「良く躱す! でもこれならどう! 炎よ。集り嵐を起こせ! 【ファイアストーム】」

「!?」

 数発の炎の塊を躱すとラーシアが背中から大きな杖を取り出して魔法を使ってきた。魔法名を言っているのを見るとMPをかなり消費する魔法だろう。流石に無詠唱とはいかないみたいだな。
 この規模の魔法を使ってくるなんてどうかしてる。僕を仕留めるつもりなのか。
 僕は風の渦巻く中、ため息をついて龍光と虎光をバツの字に構える。

「冗談じゃ済まないぞ!」

 バツの字に構えた両刀を力強く振り下ろす。刀は勢いよく風を切り、剣圧が炎の嵐を切り裂いた。

「な!?」

「おしまいだよ。諦めてくれるかな?」

「……ふ、ふん。ちょっと強いからって調子に乗るんじゃないよ。あんたらいつまで寝てるんだい。帰るよ」

 呆気にとられるラーシアの背後に回る。忠告を呟くとラーシアはなぜか顔を赤くして吹き飛んで気絶していた男を蹴り飛ばして起こすと去っていった。
 これで諦めてくれればいいんだけどね。

「アレアさん大丈夫ですか?」

「ははは、また心配させちゃったね」

 リコさん達が魔法に気が付いて駆けつけてきたみたいだ。三人で心配そうにしてる。

「アレアさん。何かあったらすぐに呼んでくださいね」

「ん。微力だけどマーヤ達が力貸す」

「ありがとうルテナさん、マーヤさん」

 ルテナさんとマーヤさんの言葉に嬉しくなってお礼を言う。とはいえもう大丈夫だろう。

「アレアさん……私達のパーティーに入りませんか?」

「え?」

 リコさんが提案してくる。僕は思わず唖然としてしまう。

「いつまでも一人じゃハザードとかいう人のパーティーだったって言われるじゃないですか。私達のパーティーに入ればそれもなくなるでしょ?」

 彼女の説明を聞いて考え込む。
 確かに一理あるな。別のパーティーに入るだけで、過去のことになる。ラーシアみたいなことにはならないかも? まあそれでも言ってくるやつはいるだろうな。そうなると彼女達に危険が及ぶよな~。

「ん、マーヤ達と一緒になればお父様達に」

「「マーヤ!」」

「ははは、何でもないですよアレアさん」

 マーヤさんが声をあげると遮るようにリコさんとルテナさんが叫ぶ。誤魔化すようにルテナさんが僕に声をあげる。
 どうしたんだろう? お父様って言っていたけど、彼女達のお父様は結構偉い人なのかな?

「とにかくです! 私達とパーティーを組みませんか?」

 三人はそういって手を差し伸べてきた。僕は考え込んで首を横に振った。

「ごめんね。リコさんの言っていることは確かにそうかもしれないけど、ああいった連中はそれでもいちゃもんをつけてくるよ。君たちに迷惑をかけるわけには行かないよ」

「でも」

「ありがとね」

「……」

 断ってお礼を言うと悲しそうな顔になっていく。思わず頭を撫でてしまう。こんな優しい子達に心配されてちゃダメだな。隠居生活は少しの間お預けだな。
 
「じゃあ、私達はこれで」

「うん。ありがとうね」

 三人は残念そうに去っていく。少し悲しそうな背中を見送る。
 少し残念なのは僕の方だ。あんな可愛い子達とパーティーを組めるチャンスだったわけだからね。でも、お情けでパーティーを組むなんて嫌だしな~。

「さて、ラーシアの店にでもいこうかな」

 早速、問題を解決しよう。まだ、諦めていないのなら残念だけど、お金を渡そう。抜き身の剣を使って来たわけだし、彼女達もお金がどうしても必要なんだろう。

 僕はダンジョンのおかげで発展している街、グレイドルの街へと入る。外からの魔物に備えて城壁に囲まれているグレイドル。更に内側にダンジョンが存在していて、そこから得られる資源で発展を遂げた。
 冒険者が資源を拾ってきて冒険者ギルド、商人ギルドに換金。そうして成り立つ街は人口もかなりのものになってきている。
 人が集まるとラーシアのような金貸しやならず者も多くなる。無理やり金を貸すものが冒険者を食い物にするというのも珍しい話じゃない。
 ハザードさんはお金に関しては結構厳格だったはず。無理やりお金を借りることになったんだろう。まあ理由はどうでもいいか。とにかく、もうラーシアと関わらなくていいようにしないとな。

「ここかな?」

 人づてにラーシアの店を探すと簡単に見つかった。【ラーシア質店】という看板が掲げられている店だ。質店と書いてあるがお金も貸すみたいだな。とりあえず、入るか。

「いらっしゃい」

 不愛想な男が受付で声をあげた。僕は小さくお辞儀をして、受付に座る。

「今日はどういった?」

「ラーシアさんに会いたいんですがいらっしゃいます?」

「姉さんに? 姉さんなら外に出てるな~。伝言でも残すかい?」

 まだ帰ってなかったか。僕は男性に帰ってくるまで待つと伝えると笑顔で答えてくれた。
 悪い人じゃなさそうだな。

「は~、まったく、なんで返せないのに借りるかね~」

「姉さんお帰りなさい。お客さんが待ってますよ」

「客~? ってあんた!?」

 しばらくするとラーシアが帰ってきて男性の言葉に視線を僕に向けた。すっごい驚いてる。
 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はランカ。 女の子と言われてしまう程可愛い少年。 アルステードオンラインというVRゲームにはまってラストダンジョンをクリア。 仲間たちはみんな現実世界に帰るけれど、僕は嫌いな現実には帰りたくなかった。 そんな時、アルステードオンラインの神、アルステードが僕の前に現れた 願っても叶わない異世界転移をすることになるとは思わなかったな~

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

社畜おっさんは巻き込まれて異世界!? とにかく生きねばなりません!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はユアサ マモル 14連勤を終えて家に帰ろうと思ったら少女とぶつかってしまった とても人柄のいい奥さんに謝っていると一瞬で周りの景色が変わり 奥さんも少女もいなくなっていた 若者の間で、はやっている話を聞いていた私はすぐに気持ちを切り替えて生きていくことにしました いや~自炊をしていてよかったです

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...