ラストダンジョンをクリアしたら異世界転移! バグもそのままのゲームの世界は僕に優しいようだ

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
36 / 57
第一章 ゲームの世界へ

第36話 よりよい関係

しおりを挟む
「ふむふむ、限界突破と言うものがあるのですね」

 僕が何してきたかを教えると、取り巻きの吸血鬼を椅子とテーブルにさせて書き物を始めるセリス。ペンで背中をなぞられるのはこそばゆそうだけど、恍惚な表情になってるな。彼らからしたらご褒美なのかもな。

「そんなことを知っているとはランカ様は卓越した知恵をお持ちの様ですね。ではお約束通り、吸血鬼の遺灰を40っと」

 セリスは約束通りの遺灰を手渡してくれる。その際、僕の手を握ると手の甲にキスをしてきた。取り巻きの吸血鬼達がすっごい睨んできてるんだけど、これは?

「あなたをマークしました。わらわの助けが欲しい時、わらわに会いたい時、わらわの名を呼びなさい。すぐにあなたの元に参上いたします。では近いうちに」

 セリスはそれだけ言って取り巻きと共に飛んでいく。片翼の蝙蝠の羽根が印象的な彼女は心なしか嬉しそうにしてるな。

「もう! また鼻の下が伸びてる!」

「え? そ、そんなことないよ!」

 レッドが失礼なことを言ってくる。少女姿のセリスに目を奪われたりはしないさ。まあ、悪い気はしないけれど。

「師匠はモテモテですね……」

「ふむ、儂の若い頃にそっくりだ! がっはっは」

 アスノ君がジト目で話すとルドマンさんが豪快に笑ってる。
 とりあえず、セリスと争いにならなくてよかった。あんなにふざけている吸血鬼達だったけど、ミノタウロスよりも強いはずだからね。あの人数に勝てる未来は見えない。下手に知識のある魔物は厄介だな。徒党を組まれたらレベル上げもあったもんじゃない。

「師匠! 限界突破というのはできたんですね!」

「バッチリだよアスノ君」

 ジト目だった表情を笑顔に変えて抱き着いてくるアスノ君。僕も笑顔で答えると僕の胸に顔をうずめて喜んでくれる。

「はいはい。アスノ君は油断するとすぐにランカに甘えるんだから、疲れてるんだから休ませてあげなさい」

「あ~、もう少し~」

 レッドがアスノ君の首根っこを掴んで吊り下げる。まるで猫を捕まえるようにしててなんだか可愛いな。

「次はアスノ君がやる番だよ。敵は同じだろうから攻略法を教えます」

「は、はい!」

 僕らのステータスならば簡単に倒せることはわかってる。攻撃されても蚊に刺されたくらいのダメージだ。アスノ君は戦闘の方も結構才能があるからね、簡単に倒して見せてくれるだろう。

「なるほど、走るのが好きなんですね」

 ミノタウロスの戦い方を教えるとそんな感想を話す。少年らしい感想で思わず頭を撫でてしまう。少し甘やかしすぎだな。

「じゃあ行ってきます!」

「頑張るんだぞ~」

 アスノ君が遺灰の前で呪文を唱えると僕と同じように光る階段が現れて壁が現れる。壁に入るときも元気でピクニックに行くかのようだ。油断しなければいいんだけどな。

「僕らはアスノ君が帰ってくるまでルドマンさんのレベルをあげようか」

「了解」

 僕が声をあげるとレッドが答えてくれる。心配してても仕方ない。次に控えているルドマンさんの準備をしてあげないと。





「セリス様! なぜあのようなことをしたのですか!」

「わらわが気に入ったからに決まっているだろ」

 わらわの名はセリス。ランカという可笑しな人間に会った帰り道。
 側近であるウランが歯ぎしりをして意見してくる。わらわの答えを聞くと更に激しく歯ぎしりをし始める。

「ウラン。わらわは平和に暮らしたいと思って居る。それは知っているだろ?」

「そ、それは知っています。しかし!」

 わらわの考えを知っていて意見を述べるウラン。少し甘やかしすぎたか?

「わらわに意見を述べるとは、ウラン。お前は偉くなったものだな」

「う!?」

 口うるさいウランの首を掴み少し力を加える。苦しみ爪をわらわの腕に食い込ませるウラン。

「次はないぞ」

「うっ……ありがとうございます!」

 気が済んで首を離すとやつは瞳をハートにしてお礼を言ってくる。まったく、わらわの魅了が効いているとは言え変態が多すぎる。

「皆、忘れるでないぞ。わらわは人間と仲良く暮らしていきたいと思っているのだ。お前達の前の主人のサデスに言ったようにな」

 わらわが目覚めて尖塔から出ると、レイドック城に住み着いていた吸血鬼がいた、それはこやつらの前の主人サデスだった。
 わらわの城に無断で住んでいたサデスと会話を交わすと人間を滅ぼすと息まいていた。わらわは説得をしたが聞く耳を持たずオルコッドへと出立しようとしていたのじゃ。それを止めるためにやつの部下を魅了し、言い聞かせようと思ったがそれでも止まらず滅した。サデスは魔物そのものになっていたようだった。わらわのように理性を持っていればよかったのだが。

「ランカという人を好いてしまわれたのですか?」

「好きという事か? それとは大きく違う。やつは何かを知っているのだ。その何かが気になってしょうがない。わらわの存在そのものの価値を決めるものやもしれぬ」

 ウランの疑問に首を横に振ってこたえる。ランカのわらわを見つめる瞳には何か特別な何かがあった。絶望と恐怖が交じり合うあの瞳の様子の奥深くに何か特別な……。

「ランカと仲良くなっていたあの者達のようになれれば、その特別を教えてくれるのではないだろうか……」

「セリス様! 私はずっと反対いたします!」

「好きにせよ。しかし、人間を傷つけることは許さんぞ。山賊や盗賊の類の人間はいいがな」

 わらわの言葉に意見を述べるウラン。話ながら街道を進んでいると馬に乗る不届きもの達が目を光らせる。わらわ達を獲物と見据えたか。
 わらわ達は吸血鬼。人や動物の血液で生きる獣。ウランたちは目を光らせて目についた不届きものの山賊を襲いだす。わらわ達に出会ったのが運の尽き。潔く餌となるがいい。

しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...