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第一章 ゲームの世界へ
第35話 猪突猛進
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「ひぃ!?」
猪突猛進、自慢の頭の角を突き立てて走ってくるミノタウロスに恐怖を感じて避ける。決意を固めて握る手に汗が、あの体躯が迫ってくるのはやっぱり怖い。バス程の体躯を避けてる僕も凄い……、そうか避けれてるんだ。
「僕も強いじゃん」
恐怖で失いかけていた自信が戻ってくる。剣を構えて魔法を付与したこん棒を構える。
「【アイスサークル】!」
「!?」
自慢の頭の角を突き立てて走ってくるミノタウロスが僕の魔法で凍った大地で滑る。その隙を見逃すはずもない。跳躍して奴の太ももに剣を突きたてる。耳を穿つうめき声をあげるミノタウロス。僕は耐えられずに耳を抑えて離れてしまう。
「しまった!?」
耳を塞ぎながら気が付く。ミノタウロスの太ももに剣が突き刺さったままだ。僕は武器を手放してしまった。
「だ、大丈夫だ。予備の武器はあるし、魔法を付与したこん棒もまだある」
アイスサークルのこん棒ももちろん落としてる。でも、別の魔法のこん棒はまだまだある。普通の鉄のロングソードをインベントリから取り出して心を落ち着かせる。
「フゴォ~~~!」
「くっ!?」
痛む足で立ち上がり太ももの剣を引き抜くと僕とは反対方向に投げ捨てるミノタウロス。剣を使われないようにしてるのか、魔物のくせに知恵が回る。
走れないやつはじりじりと近づいてくる。速度は落ちたけれど、あの両腕に掴まれたらおしまいだ。神経を研ぎ澄ませろ。敵の動きを考えるな、感じるんだ。
「フゴォ!」
「どわっ!?」
漫画の主人公みたいなことを考えていたら捕まってしまった。両手でギリギリと握る力を強めてくる。
「痛い痛い~~~……、あれ?」
ギリギリと音をたてている割にはそんなに痛くない。ミスリルアーマーや小手がいい仕事をしてるようだぞ。これなら、
「【ファイアサークル】」
「ブモォ!?」
こん棒に付与された炎の魔法を放つ。僕を中心に炎が包み込む。僕は熱さを感じない、自分の魔法で苦しむなんておかしな魔法はないからね。まあ、ここら辺もゲームと言った感じだろう。凍った大地は別みたいだけど。
「フゴ!? フゴ~!?」
炎に巻かれて苦しむミノタウロス。僕はその隙に奴の傷ついていない方の足に鉄のロングソードを突き立てる。
両膝をついて炎に苦しむ奴を背に、投げ捨てられたアスノ君が作ったミスリルロングソードを拾う。そして、
「これで終わりだ!」
大きく跳躍してミスリルロングソードを振り上げる。
「ハァァ~~~~~!」
「フゴ……」
両手で焼ける顔を抑えていたミノタウロスの脳天にミスリルロングソードを振り落とす。やつを唐竹割に切り落とすと霧散して消えていく。
「ふぅ。終わったな」
ミスリルロングソードを鞘に納めてカッコつける。僕にしてはよくできたといったところかな。以外にステータス差が出来ていたみたいだ。捕まった時は終わったと思ったけど。
でも、これならルドマンさんやアスノ君でもクリアできるな。少し安心したぞ。
『よくぞ試練を乗り越えました。あなたのレベルはさらなる高みへと上れることでしょう』
「あれ? この声はアルステードさん?」
自動音声のような声が聞こえてきて首を傾げる。僕をこの世界に連れてきたアルステードさんそっくりだ。彼女の声を聞いた時に気付かなかったな~。何だか二度目のゲームを楽しんでいるみたいだ。
「アルステードさん! ……ダメか、やっぱり自動音声か」
声をあげてみたけど返答はないな。色々と聞きたいこともあるんだけどな。
「例えば、なんで僕なのかとかね」
ラストダンジョンをクリアしたのは僕だけじゃない。僕の仲間の5人もその資格があるってことになる。偶々僕だけがログアウトしていなかったとしても再度ログインしたらいいだけだもんな。
僕がこの世界に来て余裕で二週間は経っている。彼らがログインしないわけがないもんな。僕と同じでゲーム依存症だし。
「まあ、僕だけ得させてもらってるからいいんだけどさ。さて、みんなが待ってる帰ろう」
ブツブツと独り言を言っていると入ってきた時と同じような光る壁が現れる。
すぐに壁に入ると目の前にセリスと吸血鬼が立っていた。え?
「お客様、先ほどぶりです」
深くお辞儀して言ってくるセリス。取り巻きの吸血鬼達も合わせてお辞儀してきてる。なんでここが分かったんだ?
「なぜ? と言ったご様子。わらわ達も飛べるのですよ。流石に速度は出ませんけれど、ワイバーンがどこに降りたかくらいは見えるのです。そんな話はいいのです。あなたはとても魅力的な殿方だという事が分かったのですから」
怪しく輝く赤い瞳で僕を見つめながら話すセリス。舌なめずりをしていて涎が妖艶に垂れてる。これは食われる!?
「ランカに近づくな!」
「おっと!?」
レッドが剣を振り回してセリスを遠ざける。背後からのレッドの攻撃を易々と躱すセリス。やっぱり強いな。
「ふぅ。人間の女は喧嘩っ早いですね。しかし、ランカ様を取られまいとするのは少々わかります。とても魅力的な殿方ですし」
「そ、それほどでも?」
セリスの言葉に首を傾げて答える。褒められて悪い気はしないよな。
「ちょっとランカ! 鼻の下伸ばしてないで武器を構えて!」
「師匠!」
レッドとアスノ君が怖い顔で怒ってくる。そんなこと言ってもな。褒めてくれてるんだもの。渋々剣を引き抜いて臨戦態勢になる。
「ちょっと待ってくださいランカ様」
セリスが声をあげる。ふと思ったけど、僕らは名乗ってない。なんで名前を知ってるんだ?
「待つけど、なんで僕の名前を?」
「ああ、それは先ほどこの者たちに聞きました。戦闘をしないという契約を取り付けるための代金です」
「なるほど……」
名乗る手間が省けたのはいいけれど、セリスってこんなに取引を持ち込むキャラだったのか。現実になると色々と変わっていて面白いな。
「私達の名前はいいって言ってきたの」
「聞かれても言いませんよ僕は」
レッドとアスノ君が頬を膨らませて憤りを露わにする。結構怒っていたのはそう言う事か。
「さて、本題です。ランカ様、もっと吸血鬼の遺灰が必要でしょう? 今あなたはどこへ、そして何しに行かれていたのですか? その情報で吸血鬼の遺灰をお渡しいたします。どうでしょう?」
なるほど、セリスは光の壁から出てきた僕が多くの情報を持っていると察したのか。ラスボスらしい、目ざとい奴だ。
猪突猛進、自慢の頭の角を突き立てて走ってくるミノタウロスに恐怖を感じて避ける。決意を固めて握る手に汗が、あの体躯が迫ってくるのはやっぱり怖い。バス程の体躯を避けてる僕も凄い……、そうか避けれてるんだ。
「僕も強いじゃん」
恐怖で失いかけていた自信が戻ってくる。剣を構えて魔法を付与したこん棒を構える。
「【アイスサークル】!」
「!?」
自慢の頭の角を突き立てて走ってくるミノタウロスが僕の魔法で凍った大地で滑る。その隙を見逃すはずもない。跳躍して奴の太ももに剣を突きたてる。耳を穿つうめき声をあげるミノタウロス。僕は耐えられずに耳を抑えて離れてしまう。
「しまった!?」
耳を塞ぎながら気が付く。ミノタウロスの太ももに剣が突き刺さったままだ。僕は武器を手放してしまった。
「だ、大丈夫だ。予備の武器はあるし、魔法を付与したこん棒もまだある」
アイスサークルのこん棒ももちろん落としてる。でも、別の魔法のこん棒はまだまだある。普通の鉄のロングソードをインベントリから取り出して心を落ち着かせる。
「フゴォ~~~!」
「くっ!?」
痛む足で立ち上がり太ももの剣を引き抜くと僕とは反対方向に投げ捨てるミノタウロス。剣を使われないようにしてるのか、魔物のくせに知恵が回る。
走れないやつはじりじりと近づいてくる。速度は落ちたけれど、あの両腕に掴まれたらおしまいだ。神経を研ぎ澄ませろ。敵の動きを考えるな、感じるんだ。
「フゴォ!」
「どわっ!?」
漫画の主人公みたいなことを考えていたら捕まってしまった。両手でギリギリと握る力を強めてくる。
「痛い痛い~~~……、あれ?」
ギリギリと音をたてている割にはそんなに痛くない。ミスリルアーマーや小手がいい仕事をしてるようだぞ。これなら、
「【ファイアサークル】」
「ブモォ!?」
こん棒に付与された炎の魔法を放つ。僕を中心に炎が包み込む。僕は熱さを感じない、自分の魔法で苦しむなんておかしな魔法はないからね。まあ、ここら辺もゲームと言った感じだろう。凍った大地は別みたいだけど。
「フゴ!? フゴ~!?」
炎に巻かれて苦しむミノタウロス。僕はその隙に奴の傷ついていない方の足に鉄のロングソードを突き立てる。
両膝をついて炎に苦しむ奴を背に、投げ捨てられたアスノ君が作ったミスリルロングソードを拾う。そして、
「これで終わりだ!」
大きく跳躍してミスリルロングソードを振り上げる。
「ハァァ~~~~~!」
「フゴ……」
両手で焼ける顔を抑えていたミノタウロスの脳天にミスリルロングソードを振り落とす。やつを唐竹割に切り落とすと霧散して消えていく。
「ふぅ。終わったな」
ミスリルロングソードを鞘に納めてカッコつける。僕にしてはよくできたといったところかな。以外にステータス差が出来ていたみたいだ。捕まった時は終わったと思ったけど。
でも、これならルドマンさんやアスノ君でもクリアできるな。少し安心したぞ。
『よくぞ試練を乗り越えました。あなたのレベルはさらなる高みへと上れることでしょう』
「あれ? この声はアルステードさん?」
自動音声のような声が聞こえてきて首を傾げる。僕をこの世界に連れてきたアルステードさんそっくりだ。彼女の声を聞いた時に気付かなかったな~。何だか二度目のゲームを楽しんでいるみたいだ。
「アルステードさん! ……ダメか、やっぱり自動音声か」
声をあげてみたけど返答はないな。色々と聞きたいこともあるんだけどな。
「例えば、なんで僕なのかとかね」
ラストダンジョンをクリアしたのは僕だけじゃない。僕の仲間の5人もその資格があるってことになる。偶々僕だけがログアウトしていなかったとしても再度ログインしたらいいだけだもんな。
僕がこの世界に来て余裕で二週間は経っている。彼らがログインしないわけがないもんな。僕と同じでゲーム依存症だし。
「まあ、僕だけ得させてもらってるからいいんだけどさ。さて、みんなが待ってる帰ろう」
ブツブツと独り言を言っていると入ってきた時と同じような光る壁が現れる。
すぐに壁に入ると目の前にセリスと吸血鬼が立っていた。え?
「お客様、先ほどぶりです」
深くお辞儀して言ってくるセリス。取り巻きの吸血鬼達も合わせてお辞儀してきてる。なんでここが分かったんだ?
「なぜ? と言ったご様子。わらわ達も飛べるのですよ。流石に速度は出ませんけれど、ワイバーンがどこに降りたかくらいは見えるのです。そんな話はいいのです。あなたはとても魅力的な殿方だという事が分かったのですから」
怪しく輝く赤い瞳で僕を見つめながら話すセリス。舌なめずりをしていて涎が妖艶に垂れてる。これは食われる!?
「ランカに近づくな!」
「おっと!?」
レッドが剣を振り回してセリスを遠ざける。背後からのレッドの攻撃を易々と躱すセリス。やっぱり強いな。
「ふぅ。人間の女は喧嘩っ早いですね。しかし、ランカ様を取られまいとするのは少々わかります。とても魅力的な殿方ですし」
「そ、それほどでも?」
セリスの言葉に首を傾げて答える。褒められて悪い気はしないよな。
「ちょっとランカ! 鼻の下伸ばしてないで武器を構えて!」
「師匠!」
レッドとアスノ君が怖い顔で怒ってくる。そんなこと言ってもな。褒めてくれてるんだもの。渋々剣を引き抜いて臨戦態勢になる。
「ちょっと待ってくださいランカ様」
セリスが声をあげる。ふと思ったけど、僕らは名乗ってない。なんで名前を知ってるんだ?
「待つけど、なんで僕の名前を?」
「ああ、それは先ほどこの者たちに聞きました。戦闘をしないという契約を取り付けるための代金です」
「なるほど……」
名乗る手間が省けたのはいいけれど、セリスってこんなに取引を持ち込むキャラだったのか。現実になると色々と変わっていて面白いな。
「私達の名前はいいって言ってきたの」
「聞かれても言いませんよ僕は」
レッドとアスノ君が頬を膨らませて憤りを露わにする。結構怒っていたのはそう言う事か。
「さて、本題です。ランカ様、もっと吸血鬼の遺灰が必要でしょう? 今あなたはどこへ、そして何しに行かれていたのですか? その情報で吸血鬼の遺灰をお渡しいたします。どうでしょう?」
なるほど、セリスは光の壁から出てきた僕が多くの情報を持っていると察したのか。ラスボスらしい、目ざとい奴だ。
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