ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第17話 トトさんとネネさん

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「ファム! 無事か?」

「あれ? 来ちゃったの?」

 ラッセルの家から出るとラッドが息を切らせてる。大丈夫って言っても心配だったんだろうな。優しい彼らしい。

「無事だよ。話はつけておいたから安心して」

「……凄いなお前って」

 微笑んで答えると彼はニカッと笑う。

「ん? お前は?」

 ラッセルの家の前で話してると声がかけられる。フルプレートの鎧と兜を着た人が私を見つめてくる。

「誰?」

「ああ、私だ。レナリスだ」

「メリナ様の」

 兜を脱いで微笑んでくるレナリスさん。あまりの綺麗さにラッドが緊張してる。改めて見るとやっぱり綺麗だな。

「どうしたんですか?」

「それはこちらのセリフだ。ラッセルの家だろ?」

 レナリスさんは首を傾げる私を睨みつけてくる。

「もしや! お前も仲間か? だからあの時タイミングよく」

「違います。あのおじさんとは今日会いました。この子の兄弟の話でね」

「兄弟?」

 レナリスさんが変な誤解をしてきた。私がしっかりと答えると彼女はラッドを見つめた。

「お、俺の弟が魔法で洗濯する商売を始めたんだ。それで」

「魔法で。それは凄いな。攻撃魔法も使えるようになったら私にいいなさい。騎士になることも出来るでしょう」

「騎士……」

 ラッドが話すと彼女は感心して声を上げる。彼女の話を聞くと複雑な様子で呟く。彼は腰に差している剣を力強く握ってる。

「お、俺も騎士になれるかな?」

「ん? 魔法が使えないなら難しい」

「そ、そうですか……」

 ラッドが騎士に憧れているみたい。瞳を輝かせてレナリスさんに聞いてる。彼女の答えに落胆する。
 そんな彼にレナリスさんは目線を合わせるために膝をついて彼の肩に手を置く。

「毎日訓練してお腹いっぱい食べなさい。そうすればなれないものはない。魔法が使えなくても私のように騎士になることも可能だ」

「え? 使えないんですか?」

「ああ、私は魔法が使えない」

 慰めるように話すレナリスさん。彼女は魔法が使えなくても騎士になった人なんだ。それなのに暗殺者に無傷で勝ってた。凄い人なんだな~。

「おっと、すまない。ラッセルと話をつけに来たんだった。今後、やつには近づかないようにね」

「「はい」」

 レナリスさんはそう言ってラッセルの家の扉をたたく。ビルが扉を開けるとすぐに入っていった。

「……綺麗な人だったな」

「ふふ、ラッドはああいう人が好きなんだ」

「ち、ちげえよ! そういうんじゃなくて……。女性なのに騎士で凄いと思ったら魔法が使えないのに騎士になってて。なんだか自分の弱さが際立ったというか」

 ラッドは顔を赤くして否定してくる。自分を攻めているけど、私はラッドが弱いとは思わない。
 彼はとても強くて優しい子。だから私は彼を守ってあげたいと思ったんだ。こんな残酷で厳しい世界で兄弟を大事にできる人は早々いないと思う。イブリムおじさんみたいな人の方が多いと思っていたしね。

「ラッドお兄ちゃん達おそ~い!」

「お腹すいたよ~」

 トトおじさんの屋台の横にやってくると双子が気が付いて声を上げる。ドロップ君達もおなかを抑えて訴えかけてくる。

「ごめんねみんな。トトおじさんもすみません」

「ははは、いいんだよ。お前達はもう俺の常連客だからな。それよりも聞いたぞ。洗濯屋だってな。最近のお前達の躍進ぶりは凄いな~」

 トトおじさんの屋台の横で騒ぐものだから声をかける。おじさんは嬉しそうに私達の活躍を褒めてくれる。既に焼き串をいくつか焼いておいてくれてるみたいで、すぐに手渡してくれる。

「そんな大人数で来るなら俺の店に来るか?」

「え? ここがお店じゃないんですか?」

「店は店だけどな。家内がやってる店もあるんだ。そっちは宿屋だが、家内の飯はうめえぞ」

 トトおじさんは宿屋もやっているみたい。それを聞いてポンと手を叩く。

「それじゃ! これから私達の宿ってことになりますね」

「ははは、わかったか? 金を稼げるなら入ってもらいたいってわけだ。最近は金払いの悪い奴らばかりでな。ツケばかりで困ってたんだ」

 食事をさせて宿の客としても集客する。トトおじさんは商売上手ね。
 口車に乗ってトトおじさんに案内してもらう。

「ここが俺と家内の宿屋だ。名付けて【トネリコノ宿】だ」

「トネリコ? 木の名前?」

「お? 知ってるのか? なんでも東方の方の木の名前らしい。石造りの外観だが、部屋は木で作ってるから結構いい匂いなんだ。それで木の名前を取り入れたってわけだ」

 自慢げに話すトトおじさん。鼻をこすって誇らしげに扉を開ける。

「ネネ~。お客様だ」

「トト? お客さんってあんた達洗濯屋さんの?」

「なんだ? 知ってるのか?」

「知ってるも何も、明日からお世話になろうと思ってる洗濯屋さんだよ」

 トトさんの声で奥の部屋から顔を覗かせるネネさん。彼女はユマ君と双子を見て声をあげる。
 この人は最初に声を上げてくれたおばさん? まさか、トトおじさんの奥さんだったなんて、これはもう運命だな~。

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