ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
18 / 81
第1章 成長

第18話 家族

しおりを挟む
「この部屋と隣の部屋の二つを使っていいよ~」

 ネネさんが部屋を案内してくれる。
 扉を開くと双子が元気よく入っていってベッドにダイブ。嬉しそうにベッドの匂いを嗅いでる。

「臭くな~い!」

「お日様のにお~い」

「ははは、うちは毎日干してるからね。魔法で綺麗にしてもらったものも一度日干しする予定だよ」

 ネネさんは豪快に笑って双子に答える。やっとラッド達を野宿から救える。一つの目標を達成できた。

「本当にいいんですか?」

「一部屋一日銅貨20枚、二部屋だから40枚だね。それを毎日用意できればお客さんだよ。それにね。一番に洗濯を頼めるってことだろ? これほど助かることはないよ」

 私の問いかけにネネさんはほほ笑んで答える。確かに、毎日洗濯して干していたならユマ君を囲えるんだからいいことなのかも。

「ユマは凄いな~。あ、そうだ。騎士のレナリスさんが攻撃魔法が使えるようになったら来なさいって言ってたんだ」

「え!? 騎士? 凄いよ兄さん! 兄さんって騎士様とも知り合いなの?」

「え? ま、まあな!」

 ラッドがユマ君を褒めると彼はラッドに尊敬した眼差しを向ける。なんだか微笑ましい兄弟だな~。共に尊敬しあってる。

「さあさあ、部屋はわかっただろ。食事の時間だよ。料理を運ぶの手伝ってくれるかい?」

『は~い』

 ネネさんの声にみんなで答えると厨房から食堂へ料理を運び出す。今日は私達だけみたいなので貸し切りみたい。

「昼に食べにくるのはあまりいないからね。ゆっくり食べてていいよ」

「そういうこと。だから夕食時までは外で料理をうるわけだ」

「そうだね~。おまけって言ってタダで振舞ったりね~。儲けがないときがね~」

 ネネさんの声にトトさんが答えると彼女はジト目で彼を見つめた。私達におまけしてくれた時のことかな。トトさんはやっぱり怒られたんだ。

「でも、そのおかげで今があるんじゃねえか。いいことはしなくちゃな~。ファムもそう思うだろ?」

「あ、はい」

「まったく、子供を味方につけて……」

 トトさんは私に同意を求めて見つめてきた。私は頷いて答える。ネネさんは呆れてるけど、あの時は本当にありがたかった。
 トトさんは本当にいい人。こんな人が沢山いれば世界はよりよくなると思う。こんな世界でもね。

「ん! ん~~~~!」

「ははは、美味しいかい? 喋れない子なんだね。でも、わかるよ」

 ドロップ君が白いパンとスープを飲んで感嘆の声を上げる。ネネさんは彼の頭を撫でてほほ笑む。子供一人一人の個性をちゃんと受け止めてくれる。
 トトさんとネネさんは最強の夫婦。羨ましいな。私もそんな人と結婚してたから。

「ねえねえ。ラッドお兄ちゃん! 俺も冒険者になれるかな?」

「そうだな~。薬草とりなら一緒に行けるかな」

「ほんと! 明日から一緒に行ってもいい?」

「そうだな~」

 ドンタ君がみんなに感化されて声を上げる。彼は私よりも小さい子。外に出るのは危険だと思う。ラッドはうまくいったから楽観的に考えてるんだろうな。

「ダメだよラッド。ドンタ君はまだ無理だよ」

「え~。ファム姉ちゃんは大丈夫なのに?」

「ゴブリンがいるの。もしもはぐれたら命にかかわる」

「ちぇ~。おいらもみんなの為に稼ぎたいのにな~」

 ドンタ君はわかってくれたみたいだけど、いじけてしまった。もぐもぐとパンを食べてるけど、泣きそうになってる。

「それじゃ、こういうのはどうだい? 私の助手をするんだ」

「え? 助手? なにそれ~」

「厨房でお皿を洗ったり、今日みたいに料理を運んだりするんだよ。言われたことをやる仕事さ」

 ネネさんは気前よく仕事をくれる。ドンタ君は目を輝かせて大きくうなずいた。

「やるよ!」

「じゃあ決まりだ。他の子もやりたかったら言ってね。料理も教えるし、仕事はいくらでもあるんだ」

 ドンタ君の元気な声にネネさんは手を叩いて応じる。ネーナちゃんもドロップ君もやる気を見せてる。

「私達はユマお兄ちゃんの手伝いだもんね~」

「ね~、洗濯屋さんだもんね~」

 ナナちゃんとムムちゃんはそう言ってユマ君に抱き着く。確かに外から見ていてムムちゃん達は看板娘になっていたように感じる。
 ユマ君だけだと声も小さかった。双子っていうのもよかった要因かな。

「明日もよろしくね」

「「は~い。えへへへ」」

 ユマ君が二人の頭を撫でる。嬉しそうに目を細める双子ちゃん。可愛いったらないな~。私も撫でてあげたい。

「よし! ファム! 俺達ももうひと稼ぎしていこうぜ!」

 みんなを見ていたラッドは急に声を上げて、残っていた白いパンを平らげる。みんなに触発されてやる気が出ちゃったかな。

「ネネさん。二日分を先に渡しておきますね」

「銀貨1枚だね。確かにもらったよ。少し多いけれど、ちゃんとこっちで保管しておくよ」

 ラッドがすぐに店を出て行ってしまうものだから、ネネさんに銀貨1枚を手渡して急いで追いかける。トトさんも屋台の方へ行くみたいで私の次に店を出た。

「これから家族だな」

「え?」

「同じ家から出て仕事に向かうだろ? これはもう家族も同然だ。違うか?」

 トトさんがにっこりと微笑んで私とラッドに声をかける。私はラッドと顔を見あってクスッと笑った。

「確かにそうですね。じゃあ、トトお父さんってことですね」

「はは、確かにそうだ。トトお父さん!」

「ははは、急に沢山の子宝に恵まれて俺は嬉しいぜ」

 私の声にラッドが笑いながら同意する。トトさんも楽しそうに答えてくれて頭を撫でてくれる。
 この世界で家族をやっと手に入れられた。嬉しい。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。 下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。 キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。 家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。 隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。 一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。 ハッピーエンドです。 最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...