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第1章 成長
第18話 家族
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「この部屋と隣の部屋の二つを使っていいよ~」
ネネさんが部屋を案内してくれる。
扉を開くと双子が元気よく入っていってベッドにダイブ。嬉しそうにベッドの匂いを嗅いでる。
「臭くな~い!」
「お日様のにお~い」
「ははは、うちは毎日干してるからね。魔法で綺麗にしてもらったものも一度日干しする予定だよ」
ネネさんは豪快に笑って双子に答える。やっとラッド達を野宿から救える。一つの目標を達成できた。
「本当にいいんですか?」
「一部屋一日銅貨20枚、二部屋だから40枚だね。それを毎日用意できればお客さんだよ。それにね。一番に洗濯を頼めるってことだろ? これほど助かることはないよ」
私の問いかけにネネさんはほほ笑んで答える。確かに、毎日洗濯して干していたならユマ君を囲えるんだからいいことなのかも。
「ユマは凄いな~。あ、そうだ。騎士のレナリスさんが攻撃魔法が使えるようになったら来なさいって言ってたんだ」
「え!? 騎士? 凄いよ兄さん! 兄さんって騎士様とも知り合いなの?」
「え? ま、まあな!」
ラッドがユマ君を褒めると彼はラッドに尊敬した眼差しを向ける。なんだか微笑ましい兄弟だな~。共に尊敬しあってる。
「さあさあ、部屋はわかっただろ。食事の時間だよ。料理を運ぶの手伝ってくれるかい?」
『は~い』
ネネさんの声にみんなで答えると厨房から食堂へ料理を運び出す。今日は私達だけみたいなので貸し切りみたい。
「昼に食べにくるのはあまりいないからね。ゆっくり食べてていいよ」
「そういうこと。だから夕食時までは外で料理をうるわけだ」
「そうだね~。おまけって言ってタダで振舞ったりね~。儲けがないときがね~」
ネネさんの声にトトさんが答えると彼女はジト目で彼を見つめた。私達におまけしてくれた時のことかな。トトさんはやっぱり怒られたんだ。
「でも、そのおかげで今があるんじゃねえか。いいことはしなくちゃな~。ファムもそう思うだろ?」
「あ、はい」
「まったく、子供を味方につけて……」
トトさんは私に同意を求めて見つめてきた。私は頷いて答える。ネネさんは呆れてるけど、あの時は本当にありがたかった。
トトさんは本当にいい人。こんな人が沢山いれば世界はよりよくなると思う。こんな世界でもね。
「ん! ん~~~~!」
「ははは、美味しいかい? 喋れない子なんだね。でも、わかるよ」
ドロップ君が白いパンとスープを飲んで感嘆の声を上げる。ネネさんは彼の頭を撫でてほほ笑む。子供一人一人の個性をちゃんと受け止めてくれる。
トトさんとネネさんは最強の夫婦。羨ましいな。私もそんな人と結婚してたから。
「ねえねえ。ラッドお兄ちゃん! 俺も冒険者になれるかな?」
「そうだな~。薬草とりなら一緒に行けるかな」
「ほんと! 明日から一緒に行ってもいい?」
「そうだな~」
ドンタ君がみんなに感化されて声を上げる。彼は私よりも小さい子。外に出るのは危険だと思う。ラッドはうまくいったから楽観的に考えてるんだろうな。
「ダメだよラッド。ドンタ君はまだ無理だよ」
「え~。ファム姉ちゃんは大丈夫なのに?」
「ゴブリンがいるの。もしもはぐれたら命にかかわる」
「ちぇ~。おいらもみんなの為に稼ぎたいのにな~」
ドンタ君はわかってくれたみたいだけど、いじけてしまった。もぐもぐとパンを食べてるけど、泣きそうになってる。
「それじゃ、こういうのはどうだい? 私の助手をするんだ」
「え? 助手? なにそれ~」
「厨房でお皿を洗ったり、今日みたいに料理を運んだりするんだよ。言われたことをやる仕事さ」
ネネさんは気前よく仕事をくれる。ドンタ君は目を輝かせて大きくうなずいた。
「やるよ!」
「じゃあ決まりだ。他の子もやりたかったら言ってね。料理も教えるし、仕事はいくらでもあるんだ」
ドンタ君の元気な声にネネさんは手を叩いて応じる。ネーナちゃんもドロップ君もやる気を見せてる。
「私達はユマお兄ちゃんの手伝いだもんね~」
「ね~、洗濯屋さんだもんね~」
ナナちゃんとムムちゃんはそう言ってユマ君に抱き着く。確かに外から見ていてムムちゃん達は看板娘になっていたように感じる。
ユマ君だけだと声も小さかった。双子っていうのもよかった要因かな。
「明日もよろしくね」
「「は~い。えへへへ」」
ユマ君が二人の頭を撫でる。嬉しそうに目を細める双子ちゃん。可愛いったらないな~。私も撫でてあげたい。
「よし! ファム! 俺達ももうひと稼ぎしていこうぜ!」
みんなを見ていたラッドは急に声を上げて、残っていた白いパンを平らげる。みんなに触発されてやる気が出ちゃったかな。
「ネネさん。二日分を先に渡しておきますね」
「銀貨1枚だね。確かにもらったよ。少し多いけれど、ちゃんとこっちで保管しておくよ」
ラッドがすぐに店を出て行ってしまうものだから、ネネさんに銀貨1枚を手渡して急いで追いかける。トトさんも屋台の方へ行くみたいで私の次に店を出た。
「これから家族だな」
「え?」
「同じ家から出て仕事に向かうだろ? これはもう家族も同然だ。違うか?」
トトさんがにっこりと微笑んで私とラッドに声をかける。私はラッドと顔を見あってクスッと笑った。
「確かにそうですね。じゃあ、トトお父さんってことですね」
「はは、確かにそうだ。トトお父さん!」
「ははは、急に沢山の子宝に恵まれて俺は嬉しいぜ」
私の声にラッドが笑いながら同意する。トトさんも楽しそうに答えてくれて頭を撫でてくれる。
この世界で家族をやっと手に入れられた。嬉しい。
ネネさんが部屋を案内してくれる。
扉を開くと双子が元気よく入っていってベッドにダイブ。嬉しそうにベッドの匂いを嗅いでる。
「臭くな~い!」
「お日様のにお~い」
「ははは、うちは毎日干してるからね。魔法で綺麗にしてもらったものも一度日干しする予定だよ」
ネネさんは豪快に笑って双子に答える。やっとラッド達を野宿から救える。一つの目標を達成できた。
「本当にいいんですか?」
「一部屋一日銅貨20枚、二部屋だから40枚だね。それを毎日用意できればお客さんだよ。それにね。一番に洗濯を頼めるってことだろ? これほど助かることはないよ」
私の問いかけにネネさんはほほ笑んで答える。確かに、毎日洗濯して干していたならユマ君を囲えるんだからいいことなのかも。
「ユマは凄いな~。あ、そうだ。騎士のレナリスさんが攻撃魔法が使えるようになったら来なさいって言ってたんだ」
「え!? 騎士? 凄いよ兄さん! 兄さんって騎士様とも知り合いなの?」
「え? ま、まあな!」
ラッドがユマ君を褒めると彼はラッドに尊敬した眼差しを向ける。なんだか微笑ましい兄弟だな~。共に尊敬しあってる。
「さあさあ、部屋はわかっただろ。食事の時間だよ。料理を運ぶの手伝ってくれるかい?」
『は~い』
ネネさんの声にみんなで答えると厨房から食堂へ料理を運び出す。今日は私達だけみたいなので貸し切りみたい。
「昼に食べにくるのはあまりいないからね。ゆっくり食べてていいよ」
「そういうこと。だから夕食時までは外で料理をうるわけだ」
「そうだね~。おまけって言ってタダで振舞ったりね~。儲けがないときがね~」
ネネさんの声にトトさんが答えると彼女はジト目で彼を見つめた。私達におまけしてくれた時のことかな。トトさんはやっぱり怒られたんだ。
「でも、そのおかげで今があるんじゃねえか。いいことはしなくちゃな~。ファムもそう思うだろ?」
「あ、はい」
「まったく、子供を味方につけて……」
トトさんは私に同意を求めて見つめてきた。私は頷いて答える。ネネさんは呆れてるけど、あの時は本当にありがたかった。
トトさんは本当にいい人。こんな人が沢山いれば世界はよりよくなると思う。こんな世界でもね。
「ん! ん~~~~!」
「ははは、美味しいかい? 喋れない子なんだね。でも、わかるよ」
ドロップ君が白いパンとスープを飲んで感嘆の声を上げる。ネネさんは彼の頭を撫でてほほ笑む。子供一人一人の個性をちゃんと受け止めてくれる。
トトさんとネネさんは最強の夫婦。羨ましいな。私もそんな人と結婚してたから。
「ねえねえ。ラッドお兄ちゃん! 俺も冒険者になれるかな?」
「そうだな~。薬草とりなら一緒に行けるかな」
「ほんと! 明日から一緒に行ってもいい?」
「そうだな~」
ドンタ君がみんなに感化されて声を上げる。彼は私よりも小さい子。外に出るのは危険だと思う。ラッドはうまくいったから楽観的に考えてるんだろうな。
「ダメだよラッド。ドンタ君はまだ無理だよ」
「え~。ファム姉ちゃんは大丈夫なのに?」
「ゴブリンがいるの。もしもはぐれたら命にかかわる」
「ちぇ~。おいらもみんなの為に稼ぎたいのにな~」
ドンタ君はわかってくれたみたいだけど、いじけてしまった。もぐもぐとパンを食べてるけど、泣きそうになってる。
「それじゃ、こういうのはどうだい? 私の助手をするんだ」
「え? 助手? なにそれ~」
「厨房でお皿を洗ったり、今日みたいに料理を運んだりするんだよ。言われたことをやる仕事さ」
ネネさんは気前よく仕事をくれる。ドンタ君は目を輝かせて大きくうなずいた。
「やるよ!」
「じゃあ決まりだ。他の子もやりたかったら言ってね。料理も教えるし、仕事はいくらでもあるんだ」
ドンタ君の元気な声にネネさんは手を叩いて応じる。ネーナちゃんもドロップ君もやる気を見せてる。
「私達はユマお兄ちゃんの手伝いだもんね~」
「ね~、洗濯屋さんだもんね~」
ナナちゃんとムムちゃんはそう言ってユマ君に抱き着く。確かに外から見ていてムムちゃん達は看板娘になっていたように感じる。
ユマ君だけだと声も小さかった。双子っていうのもよかった要因かな。
「明日もよろしくね」
「「は~い。えへへへ」」
ユマ君が二人の頭を撫でる。嬉しそうに目を細める双子ちゃん。可愛いったらないな~。私も撫でてあげたい。
「よし! ファム! 俺達ももうひと稼ぎしていこうぜ!」
みんなを見ていたラッドは急に声を上げて、残っていた白いパンを平らげる。みんなに触発されてやる気が出ちゃったかな。
「ネネさん。二日分を先に渡しておきますね」
「銀貨1枚だね。確かにもらったよ。少し多いけれど、ちゃんとこっちで保管しておくよ」
ラッドがすぐに店を出て行ってしまうものだから、ネネさんに銀貨1枚を手渡して急いで追いかける。トトさんも屋台の方へ行くみたいで私の次に店を出た。
「これから家族だな」
「え?」
「同じ家から出て仕事に向かうだろ? これはもう家族も同然だ。違うか?」
トトさんがにっこりと微笑んで私とラッドに声をかける。私はラッドと顔を見あってクスッと笑った。
「確かにそうですね。じゃあ、トトお父さんってことですね」
「はは、確かにそうだ。トトお父さん!」
「ははは、急に沢山の子宝に恵まれて俺は嬉しいぜ」
私の声にラッドが笑いながら同意する。トトさんも楽しそうに答えてくれて頭を撫でてくれる。
この世界で家族をやっと手に入れられた。嬉しい。
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