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第1章 成長
第19話 赤毛の少女
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◇
「これはこれはレナリス様。今日はどういったご用で?」
「白々しい。わかってるだろ?」
私はレナリス。メリナ様を狙った盗賊がラッセルが雇った者達だと判明して、奴の家にやってきた。
なぜか石造りの机が真っ二つになって壁に立てかけられている。それを気にしないようにして、奴の声に答える。
「はっは~、私に命令されたと言ったのだろ? 違う違う。私じゃないさ。あくまでも依頼だよ」
「依頼を受けたのだからお前の命令だろ?」
「商売なんだからしょうがないだろ?」
「……聞くに堪えん。死ね」
私はラッセルの言葉に苛立ちがつのり剣に手を付ける。半身、刀身が見えると奴は白い紙をヒラヒラと見せてくる。
「依頼主の書かれている紙だ。受け取れ」
「素直だな。命が惜しいか?」
「ああ、命は惜しいさ。あんたとやって勝てるわけもねえからな。レナリス様」
ラッセルは素直に紙を手渡してくる。それを受け取ると驚愕の内容が書かれていた。
「オルブス・ルード・レイナ!? 第二王女!? どういうこと!?」
声を荒らげてラッセルを睨みつける。
第二王女レイナ様はまだ3歳になったばかりの少女。彼女が依頼を出せるはずもない。因みにメリナ様は5歳で彼女もまだまだ王族というものを理解していない。そんな第二王女が依頼を? おかしな話だ。
私は憤りを見せてラッセルの胸ぐらをつかむ。
「お~お~。怒っちゃってま~」
「言え! 本当の依頼人を!」
片手でラッセルを壁に叩きつけて持ち上げる。
「流石は魔法なしで騎士になった女だな」
「煩い。質問以外の言葉を吐くな。さもないと、そのうるさい口が後頭部まで開くことになるぞ」
ラッセルは余裕綽々と言った様子で無駄口をたたいてくる。
殺気のこもった睨みを利かせるが、奴には利かなかった。まだ何か持っているのか?
「なぜ俺の部下がここにお前を呼んだかわかるか?」
「呼んだ? 我々が吐かせたんだ」
「いいや違うね。元々こうなるように、吐いていいと言っておいたのさ。無駄に時間を使わせたみたいだな」
なにを言っているんだこの男は。私は無駄口の多いラッセルにいら立ちが募る。
「取引がしたい」
「取引だと? この状況で? 気でも狂ったか?」
ラッセルの言葉に胸ぐらをつかむ力を強める。それでもやつは涼しい顔をしてる。首が絞められているはずなのに。
「俺はメリナ様を敵に回したくねえ。この机がその理由だ」
「机がなに? 早く要件を言いなさい」
最初から気になっていた石造りの机。ラッセルはそれを顎で指すとニッコリと笑う。
「あんたらも知ってるだろ? 赤毛の少女だよ。そいつが俺がメリナ様を襲ったやつらの首謀者だと分かったら机を壊したんだ。それも指一本でゆっくりとな。あれは人間のなせる業じゃねえよ」
「……」
赤毛の少女とは助けてくれた少女のことか。あのままメリナ様を守りながら戦っていたら、彼女を守ることはできなかった。
あの子、ファムが来ていなかったら……。
「メリナ様を攻撃するならこうなるってな。恐ろしい子供だぜ」
「それで? それをあなたが守ると思うの?」
ファムが強いのは分かっている。だけど、そんな脅迫で仕事をやめる男じゃない。金払いのいい客ならば依頼を受けるだろう。
「俺は守るつもりだ。ホントに死にたくねえからな。それに妻も娼婦達もお気に入りになりそうなんでな」
「お気に入り?」
「まあ、そういうことだからよ。今回は大目に見てくれ。無理にでも俺を裁くっていうならこっちも覚悟を決めて町もろともいくぜ?」
ラッセルは笑ったと思ったら覚悟のこもった視線を送ってくる。
どちらも勝者になれない戦いになってしまうか。そんなこと私一人では決められないな。
「わかった。今のところは休戦と行こうか。しかし、今後は監視をつける」
「わかったわかった。まっとうな仕事をしていくよ。当分はな」
胸ぐらを話すと彼はほっと胸を撫でおろしてる。演技だったのか? この男はどこまでが嘘だったんだ?
「今度来る時があなたの死ぬ時じゃないことを祈るわ」
「ああ、俺も祈るよ。今度来るのがあのガキじゃないことをな」
私はそう言ってラッセルの家を後にする。奴はファムじゃなければ逃げ切れると言っているのか?
言ってくれるわね。でも、私が命を狩りに来たときは後悔するでしょうね。その軽口を。
「洗濯屋をやると言っていたな。そのお客に奴の妻と娼婦がいるわけね」
いつもの町の風景と違う。洗濯物が風になびいている姿がなくなってる。それが彼女達の仕事になった証拠。町の全ての洗濯物を片付けたとは思えないけど、少なくとも半分くらいのいつもの風景がなくなってる。
「メリナ様にいい土産話ができたな」
私は城を見上げて呟くと兜をかぶる。メリナ様喜ぶだろうな。ファムが守ってくれてるなんて言ったらすぐにでも城を飛び出してしまうだろう。……、
「外にいつでも出れるようにしないと」
予定を組んでおかないようにしないとダメだな。私はそう思って城への内壁の門を通った。
◇
「これはこれはレナリス様。今日はどういったご用で?」
「白々しい。わかってるだろ?」
私はレナリス。メリナ様を狙った盗賊がラッセルが雇った者達だと判明して、奴の家にやってきた。
なぜか石造りの机が真っ二つになって壁に立てかけられている。それを気にしないようにして、奴の声に答える。
「はっは~、私に命令されたと言ったのだろ? 違う違う。私じゃないさ。あくまでも依頼だよ」
「依頼を受けたのだからお前の命令だろ?」
「商売なんだからしょうがないだろ?」
「……聞くに堪えん。死ね」
私はラッセルの言葉に苛立ちがつのり剣に手を付ける。半身、刀身が見えると奴は白い紙をヒラヒラと見せてくる。
「依頼主の書かれている紙だ。受け取れ」
「素直だな。命が惜しいか?」
「ああ、命は惜しいさ。あんたとやって勝てるわけもねえからな。レナリス様」
ラッセルは素直に紙を手渡してくる。それを受け取ると驚愕の内容が書かれていた。
「オルブス・ルード・レイナ!? 第二王女!? どういうこと!?」
声を荒らげてラッセルを睨みつける。
第二王女レイナ様はまだ3歳になったばかりの少女。彼女が依頼を出せるはずもない。因みにメリナ様は5歳で彼女もまだまだ王族というものを理解していない。そんな第二王女が依頼を? おかしな話だ。
私は憤りを見せてラッセルの胸ぐらをつかむ。
「お~お~。怒っちゃってま~」
「言え! 本当の依頼人を!」
片手でラッセルを壁に叩きつけて持ち上げる。
「流石は魔法なしで騎士になった女だな」
「煩い。質問以外の言葉を吐くな。さもないと、そのうるさい口が後頭部まで開くことになるぞ」
ラッセルは余裕綽々と言った様子で無駄口をたたいてくる。
殺気のこもった睨みを利かせるが、奴には利かなかった。まだ何か持っているのか?
「なぜ俺の部下がここにお前を呼んだかわかるか?」
「呼んだ? 我々が吐かせたんだ」
「いいや違うね。元々こうなるように、吐いていいと言っておいたのさ。無駄に時間を使わせたみたいだな」
なにを言っているんだこの男は。私は無駄口の多いラッセルにいら立ちが募る。
「取引がしたい」
「取引だと? この状況で? 気でも狂ったか?」
ラッセルの言葉に胸ぐらをつかむ力を強める。それでもやつは涼しい顔をしてる。首が絞められているはずなのに。
「俺はメリナ様を敵に回したくねえ。この机がその理由だ」
「机がなに? 早く要件を言いなさい」
最初から気になっていた石造りの机。ラッセルはそれを顎で指すとニッコリと笑う。
「あんたらも知ってるだろ? 赤毛の少女だよ。そいつが俺がメリナ様を襲ったやつらの首謀者だと分かったら机を壊したんだ。それも指一本でゆっくりとな。あれは人間のなせる業じゃねえよ」
「……」
赤毛の少女とは助けてくれた少女のことか。あのままメリナ様を守りながら戦っていたら、彼女を守ることはできなかった。
あの子、ファムが来ていなかったら……。
「メリナ様を攻撃するならこうなるってな。恐ろしい子供だぜ」
「それで? それをあなたが守ると思うの?」
ファムが強いのは分かっている。だけど、そんな脅迫で仕事をやめる男じゃない。金払いのいい客ならば依頼を受けるだろう。
「俺は守るつもりだ。ホントに死にたくねえからな。それに妻も娼婦達もお気に入りになりそうなんでな」
「お気に入り?」
「まあ、そういうことだからよ。今回は大目に見てくれ。無理にでも俺を裁くっていうならこっちも覚悟を決めて町もろともいくぜ?」
ラッセルは笑ったと思ったら覚悟のこもった視線を送ってくる。
どちらも勝者になれない戦いになってしまうか。そんなこと私一人では決められないな。
「わかった。今のところは休戦と行こうか。しかし、今後は監視をつける」
「わかったわかった。まっとうな仕事をしていくよ。当分はな」
胸ぐらを話すと彼はほっと胸を撫でおろしてる。演技だったのか? この男はどこまでが嘘だったんだ?
「今度来る時があなたの死ぬ時じゃないことを祈るわ」
「ああ、俺も祈るよ。今度来るのがあのガキじゃないことをな」
私はそう言ってラッセルの家を後にする。奴はファムじゃなければ逃げ切れると言っているのか?
言ってくれるわね。でも、私が命を狩りに来たときは後悔するでしょうね。その軽口を。
「洗濯屋をやると言っていたな。そのお客に奴の妻と娼婦がいるわけね」
いつもの町の風景と違う。洗濯物が風になびいている姿がなくなってる。それが彼女達の仕事になった証拠。町の全ての洗濯物を片付けたとは思えないけど、少なくとも半分くらいのいつもの風景がなくなってる。
「メリナ様にいい土産話ができたな」
私は城を見上げて呟くと兜をかぶる。メリナ様喜ぶだろうな。ファムが守ってくれてるなんて言ったらすぐにでも城を飛び出してしまうだろう。……、
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