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第1章 成長
第27話 異常
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「ファム!?」
私に当たった斧が砕けるのを見てラッドが悲鳴に似た声を上げる。
私はそれを聞いてオークに体当たりを当てる。そして、
「【我がマナを糧に敵を穿て。【ファイアアロー】」
ゼロ距離で魔法を放つ。オークのお腹に風穴が空いてチリチリと焼ける音を立てる。
「……ファム、ごめん。俺、動けなかった」
「ううん。私こそごめん。邪魔なんて言って」
ラッドが申し訳なさそうに手を差し出してくる。私はその手を取って立たせてもらうとニッコリと微笑んだ。
彼は私の笑顔を正直に受け止めることはできなかった。俯いて申し訳なさそうにしてる。
「ラッドは頑張った。私は動こうとも思えなかった。諦めてた。凄い」
「……ありがとよ」
慰めるようなレイブンの言葉。ラッドはお礼を言って彼女の肩に手を置いた。
彼女が諦めてしまうような状況だった。私は二人を守ることが出来たけど、声を荒らげちゃった。失敗しちゃった。
「大丈夫なのか?」
「あ、うん。服は破れちゃったけどね」
ラッドが再度心配してくれる。
レナリスさんからもらった服に穴が開いちゃった。とてもいい服だったのに、これじゃウォッシュをしても綺麗にならない。一張羅だったのにな~。
「はぁ~、俺ってダメだな~。もっと動けないとな~」
大きく天を仰いで声を上げるラッド。急に声を上げたから驚いちゃった。
「ファムはすげえな~。魔法も使えて強くてさ。俺の目指すものはお前かもな~」
ラッドはいつもの彼に戻って嬉しそうにニカッと笑う。彼は恐怖体験をしてもトラウマにしない強さを持ってる。心配はいらないみたいね。
「ん、レベル上がった。これで5レベル」
「ええ!? まじかよ! 俺は3レベルなのに……。はぁ~、この差は縮まんないんだよな~」
レイブンが無表情に報告してくる。ラッドもレベルが上がったみたいで3に。二人は私を見てくるけど、私は教えてあげない。教えても信じなさそうだしね。
「どうせすげぇレベルなんだろ? あの斧が砕けちゃうんだから。でも、そのレベルになるまで地獄のような特訓をしたんだ。きっと」
ラッドは勝手に妄想して語る。この年齢でそんな特訓してたら嫌だな~。
まあ、あの狼の胃の中に入るのが地獄の特訓みたいなものだけどね。はぁ~、今思い出して気持ち悪い。
「……これは持って帰れない」
レイブンの声に頷く。オーク3匹は流石に持って帰れない。
街中をこれを引きずって通るのは流石に憚られる。1匹でも注目のまとだったんだから。インベントリが使えればいいんだけど、冒険者ギルドで使ってる人はいない。それだけ珍しいスキルなんだ。あまり人前で使うのは控えたい。それが彼らでも。
「なあファム? あの剣を取り出す魔法って入れられないのか?」
「え!? な、なんの事?」
レイブンとオークの死骸を見ながらため息をついているとラッドがおかしなことを言ってくる。剣ってダモクレスのことかな? なんで知ってるんだろ?
「隠してるから今まで聞かなかったけどさ。なんか凄そうな剣を使ってゴブリン倒してただろ? その時にしまってたりしてたから、もしかしたらこれも入れられるのかなって思ってさ」
「……見られてたんだ」
ラッドが申し訳なさそうに言ってくる。彼は色々知っていて知らないふりをしてくれてたのね。
なんだか恥ずかしいな。仲間に隠し事をするなんて。
「ごめん。珍しい能力だから隠してた」
私は謝りながらダモクレスをインベントリから取り出して見せる。レイブンは無表情で口を開いて驚いてる。ラッドは頷くだけ。
「1匹だけ引きずって他は入れちゃうね」
全部を入れていくと怪しまれる。私はそう思ってオークを2匹インベントリにしまう。
「それにしてもレナリスさんが言っていた通り、この森おかしいな」
ラッドはそう言って見回す。
毎日私とラッドが狩りをしているのに魔物が枯渇しない。
私達くらいがどんなに狩っても枯渇なんてしないと思っていたけどな~。
「ファム様、オークは私が引きずっていきます!」
「え? ああ、ありがとうレイブン。どうしたの?」
「いえ! ファム様が強くて尊敬していただけです」
レイブンは輝く瞳で見つめてきてオークを引きずってくれる。どうやら、彼女は私の本当の強さを見て感動してくれてるみたい。
彼女が様付けしてくるのは、本能で私の強さに気が付いていたからかもしれないな。彼女は勘がいいから。
「よ~し! 帰ろうぜ!」
周りを確認してラッドが声を上げる。今日は大収穫。インベントリの中のオークはジュディーさんに話して換金してもらおう。彼女ならわかってくれると思うから。
「ん? ああ、君たちがレナリス隊長の言っていた少年少女だね」
町に帰ろうと歩いていると町の方から騎士の鎧を着た人たちが歩いてくる。三人で兜を脱いで微笑んでる。
「レナリスさんってことは調査ですか?」
「ああ、そうなんだ。近くの森の様子が可笑しいと聞いてね。街道の先のダンジョンがなくなったことに起因しているかもしれないから慎重に調べるように言われたんだ。そっちは何か変わったことはあったかい?」
騎士の青年の問いかけに素直に答える。オークが3匹いたことを話すと顎に手を当てて考え込む。
「確かに可笑しいな。それにしてもレナリス隊長の言っていた通り、凄い子達だな~。情報ありがとう。後は私達で調査するよ。帰り道気を付けて帰るんだぞ、って心配は無用か」
「いえ、心配ありがとうございます。皆さんも気を付けて」
騎士の青年を見送って町に振り返る。レナリスさんは仕事が早いな~。隊長って言っていたけど、彼女は騎士団みたいなものの隊長なのかな。凄い人なんだな~。
私に当たった斧が砕けるのを見てラッドが悲鳴に似た声を上げる。
私はそれを聞いてオークに体当たりを当てる。そして、
「【我がマナを糧に敵を穿て。【ファイアアロー】」
ゼロ距離で魔法を放つ。オークのお腹に風穴が空いてチリチリと焼ける音を立てる。
「……ファム、ごめん。俺、動けなかった」
「ううん。私こそごめん。邪魔なんて言って」
ラッドが申し訳なさそうに手を差し出してくる。私はその手を取って立たせてもらうとニッコリと微笑んだ。
彼は私の笑顔を正直に受け止めることはできなかった。俯いて申し訳なさそうにしてる。
「ラッドは頑張った。私は動こうとも思えなかった。諦めてた。凄い」
「……ありがとよ」
慰めるようなレイブンの言葉。ラッドはお礼を言って彼女の肩に手を置いた。
彼女が諦めてしまうような状況だった。私は二人を守ることが出来たけど、声を荒らげちゃった。失敗しちゃった。
「大丈夫なのか?」
「あ、うん。服は破れちゃったけどね」
ラッドが再度心配してくれる。
レナリスさんからもらった服に穴が開いちゃった。とてもいい服だったのに、これじゃウォッシュをしても綺麗にならない。一張羅だったのにな~。
「はぁ~、俺ってダメだな~。もっと動けないとな~」
大きく天を仰いで声を上げるラッド。急に声を上げたから驚いちゃった。
「ファムはすげえな~。魔法も使えて強くてさ。俺の目指すものはお前かもな~」
ラッドはいつもの彼に戻って嬉しそうにニカッと笑う。彼は恐怖体験をしてもトラウマにしない強さを持ってる。心配はいらないみたいね。
「ん、レベル上がった。これで5レベル」
「ええ!? まじかよ! 俺は3レベルなのに……。はぁ~、この差は縮まんないんだよな~」
レイブンが無表情に報告してくる。ラッドもレベルが上がったみたいで3に。二人は私を見てくるけど、私は教えてあげない。教えても信じなさそうだしね。
「どうせすげぇレベルなんだろ? あの斧が砕けちゃうんだから。でも、そのレベルになるまで地獄のような特訓をしたんだ。きっと」
ラッドは勝手に妄想して語る。この年齢でそんな特訓してたら嫌だな~。
まあ、あの狼の胃の中に入るのが地獄の特訓みたいなものだけどね。はぁ~、今思い出して気持ち悪い。
「……これは持って帰れない」
レイブンの声に頷く。オーク3匹は流石に持って帰れない。
街中をこれを引きずって通るのは流石に憚られる。1匹でも注目のまとだったんだから。インベントリが使えればいいんだけど、冒険者ギルドで使ってる人はいない。それだけ珍しいスキルなんだ。あまり人前で使うのは控えたい。それが彼らでも。
「なあファム? あの剣を取り出す魔法って入れられないのか?」
「え!? な、なんの事?」
レイブンとオークの死骸を見ながらため息をついているとラッドがおかしなことを言ってくる。剣ってダモクレスのことかな? なんで知ってるんだろ?
「隠してるから今まで聞かなかったけどさ。なんか凄そうな剣を使ってゴブリン倒してただろ? その時にしまってたりしてたから、もしかしたらこれも入れられるのかなって思ってさ」
「……見られてたんだ」
ラッドが申し訳なさそうに言ってくる。彼は色々知っていて知らないふりをしてくれてたのね。
なんだか恥ずかしいな。仲間に隠し事をするなんて。
「ごめん。珍しい能力だから隠してた」
私は謝りながらダモクレスをインベントリから取り出して見せる。レイブンは無表情で口を開いて驚いてる。ラッドは頷くだけ。
「1匹だけ引きずって他は入れちゃうね」
全部を入れていくと怪しまれる。私はそう思ってオークを2匹インベントリにしまう。
「それにしてもレナリスさんが言っていた通り、この森おかしいな」
ラッドはそう言って見回す。
毎日私とラッドが狩りをしているのに魔物が枯渇しない。
私達くらいがどんなに狩っても枯渇なんてしないと思っていたけどな~。
「ファム様、オークは私が引きずっていきます!」
「え? ああ、ありがとうレイブン。どうしたの?」
「いえ! ファム様が強くて尊敬していただけです」
レイブンは輝く瞳で見つめてきてオークを引きずってくれる。どうやら、彼女は私の本当の強さを見て感動してくれてるみたい。
彼女が様付けしてくるのは、本能で私の強さに気が付いていたからかもしれないな。彼女は勘がいいから。
「よ~し! 帰ろうぜ!」
周りを確認してラッドが声を上げる。今日は大収穫。インベントリの中のオークはジュディーさんに話して換金してもらおう。彼女ならわかってくれると思うから。
「ん? ああ、君たちがレナリス隊長の言っていた少年少女だね」
町に帰ろうと歩いていると町の方から騎士の鎧を着た人たちが歩いてくる。三人で兜を脱いで微笑んでる。
「レナリスさんってことは調査ですか?」
「ああ、そうなんだ。近くの森の様子が可笑しいと聞いてね。街道の先のダンジョンがなくなったことに起因しているかもしれないから慎重に調べるように言われたんだ。そっちは何か変わったことはあったかい?」
騎士の青年の問いかけに素直に答える。オークが3匹いたことを話すと顎に手を当てて考え込む。
「確かに可笑しいな。それにしてもレナリス隊長の言っていた通り、凄い子達だな~。情報ありがとう。後は私達で調査するよ。帰り道気を付けて帰るんだぞ、って心配は無用か」
「いえ、心配ありがとうございます。皆さんも気を付けて」
騎士の青年を見送って町に振り返る。レナリスさんは仕事が早いな~。隊長って言っていたけど、彼女は騎士団みたいなものの隊長なのかな。凄い人なんだな~。
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