ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第28話 インベントリ

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「おかえりなさい」

 冒険者ギルドに帰ってくるとジュディーさんが迎えてくれる。オークの死骸を見せると微笑んで換金してくれる。

「内臓は難しいわよね」

「あ、はい。えっとそれとですね」

 ジュディーさんに耳打ちする。オークがあと2匹いることを伝えると驚いて聞き返してくる。

「もしかして……【インベントリ】?」

 ジュディーさんの問いかけに頷いて答える。すると周りをキョロキョロ見回してから奥の扉を指さす。ラッド達は受付で待ってもらって、奥の扉に入ると通路をとおって別の部屋に通される。そこは大きな包丁が置いてある部屋。天井の高い部屋で大きな魔物を解体するところなのかな?

「ここはギルドの裏側。外から直接魔物を入れられるようになってる解体部屋よ。依頼がないと人はいない」

 ジュディーさんはそう言って頷く。私も答えてインベントリからオークを2匹取り出す。

「ふふ、ファムちゃんのことは買っていたけど。まさかインベントリを持っているなんてね。安心して、私とギルドマスターだけが知ることになるわ」

「ギルドマスター?」

 ジュディーさんの言葉に首を傾げる。冒険者ギルドのマスターって会ったことないな。大丈夫なのかな? ラッセルみたいな人だったら困る。

「元Sランクの冒険者だった【ランス】様よ。大丈夫、人柄はとてもいい人よ」

「そうですか。よかった」

 ジュディーさんが言うなら大丈夫かな? でも、実際にあってみたい気はするけど。

「おや?」

「あ、噂をすれば」

 外から解体部屋に入ってくるおじさんが私達に気が付いて声を上げる。赤い帽子をかぶっていたけど、帽子を脱いでお辞儀をしてくれる。私も頭を下げると彼はニッコリと微笑む。

「これはこれは可愛いお嬢さんだ。君がジュディー君が言っていた有望株のファム君だね。私はギルドマスターの【ランス】だ。よろしくね」

「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 ランスさんはニッコリと微笑んで握手を求めてきた。私はそれに答えて握手を交わす。

「マスター。ファムちゃんはインベントリを持っているみたいなんです」

「ははは、それは凄いね。戦闘能力に加えて運送能力まで高い。人にバレてしまったら引っ張りだこだよ。しっかりと秘密にしておいてあげよう」

 ジュディーさんの報告にランスさんはそう言って人差し指で口を押えて笑う。

「オークを2匹。これで3匹目だね。少し多くなっているね」

「あ、はい。更に表の受付に1匹いるので4匹目です」

「4匹? それは凄い。すべてファム君達がやったのかい?」

 ランスさんはオークの死骸を見てつぶやく。ジュディーさんの答えに更に驚いて私に問いかけてきた。
 私は頷いて答える。すると彼は顎に手を当てて考え込む。

「ふむ、近くの森でそんなに魔物が沸いているのか。城からの使いが言っていた話に起因しているのかな?」

「あ、ダンジョンの話ですか?」

「おや? 知っているのかい?」

「騎士のお兄さんたちが近くの森に来ていたので、その時に聞きました」

 ランスさんの呟きに問いかけるとランスさんは微笑む。私の答えを聞くと彼は頷く。

「騎士団がすでに動いているか。それならこちらは傍観しておいた方がいいね。無駄に接触すると冒険者と騎士で摩擦が起きる」

「そうですね。騎士の方の中には冒険者をよく思っていない方もいますので」

 ランスさんの声にジュディーさんが同意して答える。騎士のお兄さんたちはそんな感じはしなかったけど、中には差別してくる人もいるんだ。気を付けないとな。

「ファム君。他に我々が知っておくことはあるかい?」

「え? えっとないです」

「そうかい? 一人ですべてを背負ってはいけないよ。秘密を持つ女性は美しいが、秘密に押しつぶされる女性は見たくない。我々じゃなくてもいい。秘密を共有できる仲間を持ちなさい」

 ランスさんは私の何かを察して言葉をかけてくれる。私はクスッと笑って頷いて答える。

「ありがとうございますランスさん」

「こちらこそ。ありがとうございます」

 お礼を言うとランスさんもお礼を言ってくる。共に顔を見あってクスッと笑う。

「じゃあ、お金を渡すわね。受付に戻りましょ」

「はい」

 ジュディーさんが私とランスさんを見て笑うと受付へと戻る。会って分かってけど、ランスさんはとてもいいおじさん。人の気持ちを汲んでくれる紳士みたいな人だ。あの人なら信用できそう。

「はい、革袋に全部入れるわ。持ってる革袋をくれる?」

 受付に戻ってくると早速銀貨を革袋に入れてくれるジュディーさん。いくらもらったかわからないように、元々持っていた革袋に入れてくれるみたい。

「はぁ~、俺が倒したんじゃないのにお金が貯まってく」

「ん? 何がそんなに残念?」

「残念ってわけじゃねえけどさ。なんていうか、養ってもらっているような気分になるんだよ。情けねえなってこと」

 ラッドが革袋を覗いてつぶやく。レイブンが首を傾げて聞くと彼は恥ずかしそうに答える。
 そう思えているだけラッドはまともだよ。養ってもらっているのに、自覚のない人もいるわけだからね。

「ん、私の武器もみたい。オークくらいは倒せるようにしておかないと」

「お? ってことは武器屋に行くか。俺は大剣にしたからいいけど、ファムの防具を見ようぜ。服が穴開いただろ?」

「あ、そうだった」

 レイブンがナイフを見て呟く。彼女の声を聞いてラッドが私の服を指さす。
 私は思い出して斧の刃の形に開いている服を指でいじる。レナリスさんにもらったのにな。残念。
 同じような服は売ってないだろう。だってお姫様の使っていた服だよ。そんないい服が普通の店で売ってるはずがない。はぁ~、もったいない。
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