ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 成長

第53話 かしましい

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「ふぁ~……。おはよう~」

「おはようラッド。あなたが最後よ。お寝坊さん」

 聖女との夜会を終えて次の日。宿屋に帰ってきて朝を迎える。最後に起きてきたラッドを食堂で迎えると挨拶を交わす。

「はぁ~、みんな俺がいなくてもちゃんと働いて偉くなっちまったな~」

「ふふ、なに言ってるの。あなたのおかげでしょ? 手本としてしっかり見せたから働けてるのよ」

 食堂の席について大きなため息をつくラッド。彼に本当のことを伝えながらほめると顔を赤くさせる。
 彼がいなかったらあの子達は一人も路上から出ることはできなかった。私はそう思う。彼の偉業。

「確かにそうかもね。でも、それはファムもそうだろ?」

 ラッドを褒めているとネネさんが私を褒めてくれる。私は少しだけ力を貸しただけに過ぎない。買いかぶりすぎ。

「ネネさん。私は違うよ。少し背中を押しただけ」

「ファムは否定するなよ。俺はお前を見て働くことにしたんだからな。俺よりも小さいやつがまっとうに生きようとしてるのを見て頑張ったんだ」

 ネネさんに答えると今度はラッドがほめてくる。

「ファム様の兄弟は沢山いるんですね」

「……で? この二人は誰だ?」

 ネネさんが食事を運んでくれている。既に食事をしている人が声を上げるとラッドが気が付いて見つめる。
 シャーリーがビードと共に食事を楽しんでいた。私達兄弟を見守ってくれることになったので紹介した。教会も既に私の配下になったらしい。
 ラッセルといい、団体の代表の人達は私みたいな子供の下に着くのは嫌じゃないのだろうか? 裏がありそうで怖いな~。

「シャーリー。口についているよ」

「ありがとうビード。あなたは本当に優しい」

 食事を通してイチャイチャを見せつけてくる二人。シャーリーは悪役みたいな言葉を使って煽ってきたのに、今じゃ普通の乙女になってる。
 私が敵だと思って、恐怖を植え付けようとしたのかな? まあ、今はそんなこと考えなくてもいいか。だって、私に逆らえない体になってしまったみたいだからね。
 【契約】とはマスターの言うことを聞かないといけないのと同時にやってはいけないことが追加される。それを破ると【即死】。とても厳しい契約みたい。
 マスターの親、兄弟を傷つけるだけで死んでしまう。血のつながりがなくても絆の繋がりでも機能する。だからシャーリーは兄弟を紹介してほしかったみたい。

「ファム様にはビードを救ってくれた恩があります。これ以上の無礼は致しません」

「それはありがたいけれど。教会はいらないからね」

「といわれましても。シャイン様がそう言っていましたので」

「はぁ~……」

 シャーリーの言葉に答えると頭が痛くなってくる。精神的な攻撃がずっと続いている気分になる。
 それにしても死者を生き返らせてしまうなんて。私は色々とぶっ壊れな美少女になってしまったな~。不老不死なだけでおかしいのにね。

「ファム~! 遊びに来たよ~!」

 シャーリーに困惑しているとメリナの声が聞こえてきた。扉が勢いよく開いて食堂に駆けてくる音が近づいてくる。
 私に一目散に駆け寄ってきて抱き着いてくるメリナ。私は彼女の頭を撫でてあげる。

「今日は何して遊ぼうかしら? ダンジョンで私もレベル上げたい! いいかな?」

「メリナ様! そんな危ないこと、私が許可いたしません! 怪我をしたら王様から何を言われるか」

「お父様なら大丈夫よ。昨日から病気の具合がよくなって機嫌がよかったもの」

 メリナの声にレナリスさんが困惑して答える。昨日から体の具合のいい人が多いって話はユマ君から聞いた。
 洗濯物を頼んでくる人がみんな元気だったんだってさ。おじいさんやおばあさんがキビキビ動いていておかしな感じだったんだって。
 それも私の回復魔法のせいだってシャーリーから教えてもらった。ビードを生き返らせた私の回復魔法は距離がはなれれば離れる程威力が弱くなっていた。
 それでも町の中の人達の不調な体の部位を回復するだけの力があった。恐ろしい。
 
「聖女様が来てくれたおかげね。って!? そこにいるのは聖女様?」

 聖女様の話題を出してシャーリーに気が付いたメリナ。ペコリとお辞儀をして答えるシャーリーに彼女は驚いて私を見つめてくる。

「もしかして知り合いなの?」

「あ~、はい。少しだけ」
 
 メリナは不安な様子で聞いてくる。答えると抱きしめる力を強める。

「教会にはあげないからね! 私の騎士様なんだから!」

 そう声を上げてシャーリーを睨みつけるメリナ。レナリスさんは呆れて頭を抱える。

「教会の奴らの仲間なのかよ! 兄弟を傷つける奴は懲らしめてやる!」

「あぁ~、ラッド。話がこじれるからあなたは入ってこないでね~」

 そこに更にラッドが参戦しようと声を上げる。彼の口にパンを詰めて黙らせるとモグモグとパンを咀嚼して、抗議の視線を送ってくる。
 信用できないのはユマ君のことがあったからだから仕方ないんだけどね。

「とにかく、教会に与することはないから安心してください」

「そうよね! ファムは私の騎士だものね」

 私の声を聞いて安心した様子のメリナ。
 シャーリーとビードはそれを見て安心してイチャイチャを再開させる。まったく、みんな自分勝手でついていけないよ。
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