ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます

カムイイムカ(神威異夢華)

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第2章 国

第66話 フェアリーファーム

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「よっ、ほっ、はっと!」

 ケビンさんはそう言ってギルドの壁に立てかけてあった的に矢を射る。早打ちですべて的の真ん中に命中させる。
 ステータスが高くても私じゃできる気がしない。まあ、練習すればできるかもしれないけど。

「新進気鋭のクラン【フェアリーファーム】の目に留まるかな?」

 ケビンさんはなぜか私達のクランに入りたいみたい。これだけの腕があるなら、もっと有名なクランに入ることができると思うんだけど。

「ファム。どうする?」

「ん~……」

 悩んでいるとラッドも困った様子で聞いてくる。とりあえず、面接してみようかな。

「ケビンさんはどこから来たんですか?」

「俺の故郷はレイドレッド帝国との国境の村だ。村でも一番の狩人だったんだ。500メートル先のオークの頭を射抜ける」

「……レイドレッド帝国」

 ケビンさんの言葉に首を傾げる。国境ってことはオルブス王国の人? それともレイドレッド帝国の人?

「ん? レイドレッド帝国の人?」

 私が悩んでいるとレイブンが聞いてくれる。彼は首を横に振って答える。

「いいや。俺はオルブス王国の人間だ。奴らはしょっちゅう村にちょっかいをかけてきていたから、いくらか矢を射って見せたもんだよ。何人かの足を射抜いたら来なくなったっけ。懐かしい」

 ケビンが顎に手を当てて懐かしみながら答える。
 それを聞いて私はラッドとレイブンの顔を見る。

「俺はいいと思うぞ。魔法だけしか援護できる手段がなかっただろ? それにドンタが弓を習いたいって言ってたんだ。この人に教わればすぐにでも上達するかも」

「ん、私もいいと思う」

 ラッドの声にレイブンが同意する。私は……あまり乗り気じゃない。イーターのこともあるし、見知らぬ人をネネさんの傍にいさせたくない。

「おやおや? どうしましたファム君」

 二人が肯定する中、私は一人悩んでいるとランスさんが声をかけてくる。あまりにも悩んでいたから心配してくれたみたい。

「ケビンさんが私達のクランに入りたいって言ってきて」

「ケビン? ああ、最近この町にやってきた方ですね」

 私の声にランスさんが呟きながらケビンさんを見つめる。
 なぜか冷や汗をかいている彼にランスさんは首を傾げる。

「大人のあなたが子供のクランに? 何か怪しいですね」

「あ、やっぱりそう思いますか?」

 ランスさんの疑問に私も同意してケビンさんを見つめる。私とランスさんに見つめられると、彼はいたたまれない様子で冷や汗をかく。

「い、いや~。新進気鋭のクランだって聞いて。それなら手伝おうかな~っと思いまして。ほら、子供だけのクランだから色々と困るだろうな~って」

「困る? それなら我々ギルド職員の出番です。見知らぬ大人が出てくる場面ではありませんね」

「え? あ……はい」

「では私が別のクランを探してあげましょう」

 ケビンさんが冷や汗をかきながら答えるとランスさんが追及していく。彼は残念そうに俯いてランスさんに頭を下げる。
 
「ジュディー君。この方に見合ったクランを紹介してあげてください」

「あ!? そうだ! 俺、仕事があったんだった! クランの話はなかったことに~」

 ランスさんがジュディーさんに声をかける。するとケビンさんがポンッと手を叩いてギルドを勢いよく出ていった。その姿を見てみんなで顔を見あうとクスッと笑いがこぼれる。

「どうやら、あなた方が狙いのようですね。少しケビンさんを調べることにいたしましょうか。ジュディー君」

「わかりました。レイドレッド帝国のギルドに手紙を送ってみます」

 私達との会話もしっかりと聞いていてくれたジュディーさん。ランスさんの話を聞いてすぐに手紙をしたためる。別の職員の人に手紙を手渡す。これですぐにレイドレッド帝国の冒険者ギルドに手紙が届く。

「知らせが戻ってくるのは三日ほど。それまでうかつに彼に近寄らないように。いいですね?」

「あ、はい。ありがとうございますランスさん、ジュディーさん」

 ランスさんの忠告にお礼を言うと二人ともにっこりと微笑んでくれる。

「ラッセルとシャーリーにも話しておかないと」

「ラッセルには俺が知らせに行く」

「ラッド?」

 考えをつぶやいているとラッドが手を上げて声を上げる。急に知らせに行ってくれるというものだから驚いちゃった。どうしたんだろう?

「ん? ラッセル様に何か用でもある?」

「え? あ、いや、別にないけどさ。ファムの役に立ちたいと思って……」

 レイブンが追及すると可愛いことを言ってくれる。大きくなってもまだまだ子供って感じ。それならお願いしようかな?

「じゃあ、お願い。ありがとうね」

「ああ! 任せておけ。適当な依頼を受けて城門にいてくれ。あとで合流する」

「うん、わかった」

 折角の提案、ラッドにお願いをした。彼はすぐにラッセルの元へと走っていく。なんだか嬉しそう。そんなに私の役に立ちたかったのかな?

「……ん~、なんか気になる」

「レイブン? どうしたの?」

「ラッセル様に会いたいとか?」

「ラッドが?」

 レイブンが腕を組んで首を傾げてる。ラッドがラッセルに会いたい? どういうことだろう? 彼女は勘が鋭いからな~。十中八九あってると思う。でも、なんで会いたいんだろう?

「……詮索は野暮ね。レイブン、帰ってきても聞かないこと。いい?」

「ファム様の命令なら仕方ない。気にしないことにする」

「からかうのもダメよ?」

「む? ダメ?」

「ダ~メ」

 レイブンは頑なにラッドのことをからかうのをやめたくないみたい。
 それでもラッセルに会いたいということをからかうのはやめてもらおう。彼なりに何か理由があるはずだからね。それも私達に言えない何かが。
 それを詮索するのは家族でもやっちゃいけない。彼が自分から言うまでは気にしないようにしよう。
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