赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)

文字の大きさ
7 / 49
第一章 ジーニアスベル

第7話 王都ジュスペンス

しおりを挟む
「いててて」

「大丈夫かグッツ?」

 ゴブリンの騎士達を切り捨てたお父さんたち、それでも歩みを止めるわけには行かない。魔物は夜だろうが何だろうが近づいてくるから。

「ダブダブ……【バ~ブ】!」

「お! 神童様ありがとよ」

「バブ!」

 グッツさんにヒールの回復魔法をかける。頭を撫でてお礼を言ってくるグッツさん。
 腕の傷が深かったけど、全快してくれた。ついでにみんなにも使っておこう。

「ありがとう赤ん坊さん。さっきもやってくれてたのね。それなのに気づいたのはエリカちゃんだけなんて。ごめんね」

 それぞれお礼を言ってくれて、シリカちゃんもお礼を言ってくれた。こんな赤ん坊に気を使いすぎだよ。この子は。

「ダブダブ」

「ふふ、ありがとう。えっと……名前は?」

「ジーニアスよ、シリカ。ジーニって呼んであげて」

「じゃ、じゃあ。ありがとうございますジーニ様」

 首を振ってお礼なんていいって気持ちを見せるとシリカちゃんは僕の名前を聞いてきた。お母さんが答えるとなぜか様付けしてきた。

「高位の魔法使い様には様付けをするものなの。それが年下でもね」

 へ、へ~。そんな決まりがあるのか。魔法使いって特別なんだな。

「ジーニアス。今回は助かった。だが、覚えておいてくれ。王都ではあまり目立たないようにしたほうがいい。子供と言うだけで人狩りに会うかもしれないからな」

 お父さんが忠告する。人狩りか……やっぱりそういった人もいるんだな。

「いや~、しかし本当に助かるぜ。馬も5頭も手に入った。他は逃げちまったがな」

 ゴブリンが乗ってきた馬を奪うことにも成功したグッツさんとお父さん。グッツさんが大喜びで荷物を馬に載せていく。

「みんな辛いだろうが王都に向かおう。斥候が来たということは本隊が必ずいるはずだ。ゴブリンを手足のように従えている本隊が」

「そ、それってお前……」

「ああ、キングかロード、もしくは魔王だな。亜人種の魔王が生まれたんだろう」

 お父さんが重々しく声をあげる。グッツさんが生唾を飲み込んで声をあげるとお父さんが呟いた。
 魔王……亜人種の魔王ってことは別の魔王も存在するのかな?

「はぁ~。グレース。俺達は無事に王都に着けるかね?」

「何言ってるのよグッツ。王都で店を持つんでしょ。折角、腕の傷を治してもらったんだから、元気出してよ。ほら」

「は~、ダメだわ。お前が好きすぎて頑張れちまう。俺って単純だな」

「バカ……」

 グッツさんが寄り添うグレースさんに愚痴をこぼすとイチャイチャし始めた。しまいにはチュッチュしてるよ。まったく、お父さんたちもそうだけど、リア充ばっかりだな。

「高~い!」

「エリカ。あんまり暴れないで」

 みんなにヒールを使いまくって夜も歩くことに成功。眠気もスッキリさせる僕の回復魔法は最強みたいだ。魔力が普通よりも強いのかもな。
 5頭の馬はお年寄りと子供、荷物を乗せて使われてる。エリカちゃんとそのお母さん、僕とシリカちゃん。後の三頭はお年寄りが乗ってる。申し訳なさそうにしているけど、歩く速度を上げるにはこれしかないんだよな。

「ジーニ様。大丈夫ですか? 酔ったり?」

「ダブ!」

「そうですか……。本当に強いんですね」

 僕を抱きながら馬に跨るシリカちゃん。様付けはいいとしてもこんな赤ん坊に敬語が使えるなんて、なんていい子なんだろうか。

「シリカちゃんは大丈夫?」

「エリアスさん。大丈夫ですよ。ジーニ様はとても軽いので」

「バブ!」

 シリカちゃんはそういって僕を抱きしめる力を強める。

「ふふ、そうよね。それに柔らかい」

「はい。とっても温かくて、いつまでも抱いていたいです」

「バブ!」

 お母さんが笑いながら僕を褒めるとシリカちゃんも同意する。僕の体は人を癒すからだなのだろう。流石は僕。

「王都だ!」

 先頭を歩くグッツさんの声で顔をあげる。朝日に照らされる巨大な城壁が見えた。
 でかい……自分が赤ん坊って言うのもあるけど、40メートルはあるだろうか? そんな城壁が川を飲み込んでいるように見える。

「湖を囲うように城壁が作られているんだ。籠城戦にも適した、王都ジュスペンスだ」

 お父さんが説明してくれる。湖を覆うって……それどんだけ時間かかるの?
 そんな疑問も他所に僕らはそのまま城壁の門へと歩いていく。

「止まれ! お前達は村の者達か?」

「はい。オーベンの村から来ました」

 槍を交差して僕らを止める兵士達。フルフェイスの鎧を着ていて、戦争が近いことをうかがわせる。

「良く来れたな。魔物とは会わなかったか?」

「追いつかれました。斥候のゴブリンが馬に乗って」

「!? それを撃退できたのか!」

 心配してくれる兵士さんにお父さんが答えると驚いて聞き返す。頷いて答えると一人の兵士が門の中へ入って行く。

「少し待ってくれ、難民が増えていてな入れられるかわからないんだ」

「え!? 入れられないって!?」

「す、すまない。騎士様の命令でな」

 兵士さんの声に驚くお父さん。僕らは唖然としてしまう。

「お母さん。私達王都に入れないの?」

「だ、大丈夫よエリカ。ここまで来たんだもの、王様は入れてくれるはずよ」

 エリカちゃんの声にこたえるエリカちゃんお母さん。そ、そうだよね。ここまで来たんだもん入れてくれるはずだ。

「いつまで待てばいい?」

「今知らせに行ってる。待ってくれ」

「……因みに入れなかった人は?」

 いつまで経っても聞きに行った兵士が帰ってこない。お父さんが心配して兵士に聞くと城壁沿いを指さした。

「気づいちゃいたけど、難民とはね……」

 城壁沿いにはテントが立っていた。いくつもの簡素なテント、布を木の棒で支えているだけのテントが数えきれないほど建ってる。
 その数に比例して人々が煮炊きしているのが見える。

「兵士さん。こんなことをあなたに言うのも酷だが、俺達は斥候と戦ったんだ。すぐに本隊がやってくるはず。壁の外の俺達は間違いなく死んじまうんだ」

「い、言われなくても分かっている。しかし、俺達は言われたことしかできないんだ。……難民キャンプを逆側に集めることだけでも進言してみる」

「ありがとう」

 お父さんの言葉に兵士さんは俯いて話してくれた。この悲惨な状況を一番見ている人達だもんな。報告を聞いて動いてくれればいいけれど。

「ふむ、難民が増えているな」

「あっ! ブレイン様!」

 兵士さんと話していると報告に行った兵士さんと共に煌びやかな鎧を着た長い金髪の男が現れた。

「このまま、難民はこちら側に集めておけよ」

「え? それでは魔物の群れに」

「ふむ、分かっているではないか。そう、難民で盾をつくるのだ。魔物は単純だからな。目の前に餌を与えれば食いつく。その間に魔法部隊でドンだ。はははは」

 僕らがいるのに兵士に説明するブレイン。こんな奴が町を守る騎士……終わってる。

「てめえ! 俺達を餌にするつもりか!」

「ん? なんだお前は? 平民風情が騎士である私に意見を言おうというのか? 頭が高いぞ」

「この!」

 グッツさんが我慢できずに声を荒らげる。切りかかろうと腰の剣に手をかけるとお父さんがそれを止めた。

「なんだ、剣を抜かなかったか」

 ブレインがそういって抜いた剣を鞘に戻す。やつはグッツさんよりも遅く剣へと手をかけていた。それなのに剣を抜いて僕らに突きつけてきていた。
 あんな奴だけど、腕は立つみたいだ。

「ジーク、何で止めたんだよ!」

「見てわからなかったか? やつはすでに剣を抜いていた。あいつは間違いなく強い。それに人を斬ることに躊躇がない。あんな奴が騎士の地位、貴族にいたんじゃ王都に入ることは出来ないな」

 グッツさんの言葉にお父さんがひや汗を流して説明した。どうやら、僕らは壁の中に入ることは出来ないみたいだ。このままじゃ、魔物の餌に……。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

処理中です...