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第一章 ジーニアスベル
第7話 王都ジュスペンス
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「いててて」
「大丈夫かグッツ?」
ゴブリンの騎士達を切り捨てたお父さんたち、それでも歩みを止めるわけには行かない。魔物は夜だろうが何だろうが近づいてくるから。
「ダブダブ……【バ~ブ】!」
「お! 神童様ありがとよ」
「バブ!」
グッツさんにヒールの回復魔法をかける。頭を撫でてお礼を言ってくるグッツさん。
腕の傷が深かったけど、全快してくれた。ついでにみんなにも使っておこう。
「ありがとう赤ん坊さん。さっきもやってくれてたのね。それなのに気づいたのはエリカちゃんだけなんて。ごめんね」
それぞれお礼を言ってくれて、シリカちゃんもお礼を言ってくれた。こんな赤ん坊に気を使いすぎだよ。この子は。
「ダブダブ」
「ふふ、ありがとう。えっと……名前は?」
「ジーニアスよ、シリカ。ジーニって呼んであげて」
「じゃ、じゃあ。ありがとうございますジーニ様」
首を振ってお礼なんていいって気持ちを見せるとシリカちゃんは僕の名前を聞いてきた。お母さんが答えるとなぜか様付けしてきた。
「高位の魔法使い様には様付けをするものなの。それが年下でもね」
へ、へ~。そんな決まりがあるのか。魔法使いって特別なんだな。
「ジーニアス。今回は助かった。だが、覚えておいてくれ。王都ではあまり目立たないようにしたほうがいい。子供と言うだけで人狩りに会うかもしれないからな」
お父さんが忠告する。人狩りか……やっぱりそういった人もいるんだな。
「いや~、しかし本当に助かるぜ。馬も5頭も手に入った。他は逃げちまったがな」
ゴブリンが乗ってきた馬を奪うことにも成功したグッツさんとお父さん。グッツさんが大喜びで荷物を馬に載せていく。
「みんな辛いだろうが王都に向かおう。斥候が来たということは本隊が必ずいるはずだ。ゴブリンを手足のように従えている本隊が」
「そ、それってお前……」
「ああ、キングかロード、もしくは魔王だな。亜人種の魔王が生まれたんだろう」
お父さんが重々しく声をあげる。グッツさんが生唾を飲み込んで声をあげるとお父さんが呟いた。
魔王……亜人種の魔王ってことは別の魔王も存在するのかな?
「はぁ~。グレース。俺達は無事に王都に着けるかね?」
「何言ってるのよグッツ。王都で店を持つんでしょ。折角、腕の傷を治してもらったんだから、元気出してよ。ほら」
「は~、ダメだわ。お前が好きすぎて頑張れちまう。俺って単純だな」
「バカ……」
グッツさんが寄り添うグレースさんに愚痴をこぼすとイチャイチャし始めた。しまいにはチュッチュしてるよ。まったく、お父さんたちもそうだけど、リア充ばっかりだな。
「高~い!」
「エリカ。あんまり暴れないで」
みんなにヒールを使いまくって夜も歩くことに成功。眠気もスッキリさせる僕の回復魔法は最強みたいだ。魔力が普通よりも強いのかもな。
5頭の馬はお年寄りと子供、荷物を乗せて使われてる。エリカちゃんとそのお母さん、僕とシリカちゃん。後の三頭はお年寄りが乗ってる。申し訳なさそうにしているけど、歩く速度を上げるにはこれしかないんだよな。
「ジーニ様。大丈夫ですか? 酔ったり?」
「ダブ!」
「そうですか……。本当に強いんですね」
僕を抱きながら馬に跨るシリカちゃん。様付けはいいとしてもこんな赤ん坊に敬語が使えるなんて、なんていい子なんだろうか。
「シリカちゃんは大丈夫?」
「エリアスさん。大丈夫ですよ。ジーニ様はとても軽いので」
「バブ!」
シリカちゃんはそういって僕を抱きしめる力を強める。
「ふふ、そうよね。それに柔らかい」
「はい。とっても温かくて、いつまでも抱いていたいです」
「バブ!」
お母さんが笑いながら僕を褒めるとシリカちゃんも同意する。僕の体は人を癒すからだなのだろう。流石は僕。
「王都だ!」
先頭を歩くグッツさんの声で顔をあげる。朝日に照らされる巨大な城壁が見えた。
でかい……自分が赤ん坊って言うのもあるけど、40メートルはあるだろうか? そんな城壁が川を飲み込んでいるように見える。
「湖を囲うように城壁が作られているんだ。籠城戦にも適した、王都ジュスペンスだ」
お父さんが説明してくれる。湖を覆うって……それどんだけ時間かかるの?
そんな疑問も他所に僕らはそのまま城壁の門へと歩いていく。
「止まれ! お前達は村の者達か?」
「はい。オーベンの村から来ました」
槍を交差して僕らを止める兵士達。フルフェイスの鎧を着ていて、戦争が近いことをうかがわせる。
「良く来れたな。魔物とは会わなかったか?」
「追いつかれました。斥候のゴブリンが馬に乗って」
「!? それを撃退できたのか!」
心配してくれる兵士さんにお父さんが答えると驚いて聞き返す。頷いて答えると一人の兵士が門の中へ入って行く。
「少し待ってくれ、難民が増えていてな入れられるかわからないんだ」
「え!? 入れられないって!?」
「す、すまない。騎士様の命令でな」
兵士さんの声に驚くお父さん。僕らは唖然としてしまう。
「お母さん。私達王都に入れないの?」
「だ、大丈夫よエリカ。ここまで来たんだもの、王様は入れてくれるはずよ」
エリカちゃんの声にこたえるエリカちゃんお母さん。そ、そうだよね。ここまで来たんだもん入れてくれるはずだ。
「いつまで待てばいい?」
「今知らせに行ってる。待ってくれ」
「……因みに入れなかった人は?」
いつまで経っても聞きに行った兵士が帰ってこない。お父さんが心配して兵士に聞くと城壁沿いを指さした。
「気づいちゃいたけど、難民とはね……」
城壁沿いにはテントが立っていた。いくつもの簡素なテント、布を木の棒で支えているだけのテントが数えきれないほど建ってる。
その数に比例して人々が煮炊きしているのが見える。
「兵士さん。こんなことをあなたに言うのも酷だが、俺達は斥候と戦ったんだ。すぐに本隊がやってくるはず。壁の外の俺達は間違いなく死んじまうんだ」
「い、言われなくても分かっている。しかし、俺達は言われたことしかできないんだ。……難民キャンプを逆側に集めることだけでも進言してみる」
「ありがとう」
お父さんの言葉に兵士さんは俯いて話してくれた。この悲惨な状況を一番見ている人達だもんな。報告を聞いて動いてくれればいいけれど。
「ふむ、難民が増えているな」
「あっ! ブレイン様!」
兵士さんと話していると報告に行った兵士さんと共に煌びやかな鎧を着た長い金髪の男が現れた。
「このまま、難民はこちら側に集めておけよ」
「え? それでは魔物の群れに」
「ふむ、分かっているではないか。そう、難民で盾をつくるのだ。魔物は単純だからな。目の前に餌を与えれば食いつく。その間に魔法部隊でドンだ。はははは」
僕らがいるのに兵士に説明するブレイン。こんな奴が町を守る騎士……終わってる。
「てめえ! 俺達を餌にするつもりか!」
「ん? なんだお前は? 平民風情が騎士である私に意見を言おうというのか? 頭が高いぞ」
「この!」
グッツさんが我慢できずに声を荒らげる。切りかかろうと腰の剣に手をかけるとお父さんがそれを止めた。
「なんだ、剣を抜かなかったか」
ブレインがそういって抜いた剣を鞘に戻す。やつはグッツさんよりも遅く剣へと手をかけていた。それなのに剣を抜いて僕らに突きつけてきていた。
あんな奴だけど、腕は立つみたいだ。
「ジーク、何で止めたんだよ!」
「見てわからなかったか? やつはすでに剣を抜いていた。あいつは間違いなく強い。それに人を斬ることに躊躇がない。あんな奴が騎士の地位、貴族にいたんじゃ王都に入ることは出来ないな」
グッツさんの言葉にお父さんがひや汗を流して説明した。どうやら、僕らは壁の中に入ることは出来ないみたいだ。このままじゃ、魔物の餌に……。
「大丈夫かグッツ?」
ゴブリンの騎士達を切り捨てたお父さんたち、それでも歩みを止めるわけには行かない。魔物は夜だろうが何だろうが近づいてくるから。
「ダブダブ……【バ~ブ】!」
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「バブ!」
グッツさんにヒールの回復魔法をかける。頭を撫でてお礼を言ってくるグッツさん。
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「ありがとう赤ん坊さん。さっきもやってくれてたのね。それなのに気づいたのはエリカちゃんだけなんて。ごめんね」
それぞれお礼を言ってくれて、シリカちゃんもお礼を言ってくれた。こんな赤ん坊に気を使いすぎだよ。この子は。
「ダブダブ」
「ふふ、ありがとう。えっと……名前は?」
「ジーニアスよ、シリカ。ジーニって呼んであげて」
「じゃ、じゃあ。ありがとうございますジーニ様」
首を振ってお礼なんていいって気持ちを見せるとシリカちゃんは僕の名前を聞いてきた。お母さんが答えるとなぜか様付けしてきた。
「高位の魔法使い様には様付けをするものなの。それが年下でもね」
へ、へ~。そんな決まりがあるのか。魔法使いって特別なんだな。
「ジーニアス。今回は助かった。だが、覚えておいてくれ。王都ではあまり目立たないようにしたほうがいい。子供と言うだけで人狩りに会うかもしれないからな」
お父さんが忠告する。人狩りか……やっぱりそういった人もいるんだな。
「いや~、しかし本当に助かるぜ。馬も5頭も手に入った。他は逃げちまったがな」
ゴブリンが乗ってきた馬を奪うことにも成功したグッツさんとお父さん。グッツさんが大喜びで荷物を馬に載せていく。
「みんな辛いだろうが王都に向かおう。斥候が来たということは本隊が必ずいるはずだ。ゴブリンを手足のように従えている本隊が」
「そ、それってお前……」
「ああ、キングかロード、もしくは魔王だな。亜人種の魔王が生まれたんだろう」
お父さんが重々しく声をあげる。グッツさんが生唾を飲み込んで声をあげるとお父さんが呟いた。
魔王……亜人種の魔王ってことは別の魔王も存在するのかな?
「はぁ~。グレース。俺達は無事に王都に着けるかね?」
「何言ってるのよグッツ。王都で店を持つんでしょ。折角、腕の傷を治してもらったんだから、元気出してよ。ほら」
「は~、ダメだわ。お前が好きすぎて頑張れちまう。俺って単純だな」
「バカ……」
グッツさんが寄り添うグレースさんに愚痴をこぼすとイチャイチャし始めた。しまいにはチュッチュしてるよ。まったく、お父さんたちもそうだけど、リア充ばっかりだな。
「高~い!」
「エリカ。あんまり暴れないで」
みんなにヒールを使いまくって夜も歩くことに成功。眠気もスッキリさせる僕の回復魔法は最強みたいだ。魔力が普通よりも強いのかもな。
5頭の馬はお年寄りと子供、荷物を乗せて使われてる。エリカちゃんとそのお母さん、僕とシリカちゃん。後の三頭はお年寄りが乗ってる。申し訳なさそうにしているけど、歩く速度を上げるにはこれしかないんだよな。
「ジーニ様。大丈夫ですか? 酔ったり?」
「ダブ!」
「そうですか……。本当に強いんですね」
僕を抱きながら馬に跨るシリカちゃん。様付けはいいとしてもこんな赤ん坊に敬語が使えるなんて、なんていい子なんだろうか。
「シリカちゃんは大丈夫?」
「エリアスさん。大丈夫ですよ。ジーニ様はとても軽いので」
「バブ!」
シリカちゃんはそういって僕を抱きしめる力を強める。
「ふふ、そうよね。それに柔らかい」
「はい。とっても温かくて、いつまでも抱いていたいです」
「バブ!」
お母さんが笑いながら僕を褒めるとシリカちゃんも同意する。僕の体は人を癒すからだなのだろう。流石は僕。
「王都だ!」
先頭を歩くグッツさんの声で顔をあげる。朝日に照らされる巨大な城壁が見えた。
でかい……自分が赤ん坊って言うのもあるけど、40メートルはあるだろうか? そんな城壁が川を飲み込んでいるように見える。
「湖を囲うように城壁が作られているんだ。籠城戦にも適した、王都ジュスペンスだ」
お父さんが説明してくれる。湖を覆うって……それどんだけ時間かかるの?
そんな疑問も他所に僕らはそのまま城壁の門へと歩いていく。
「止まれ! お前達は村の者達か?」
「はい。オーベンの村から来ました」
槍を交差して僕らを止める兵士達。フルフェイスの鎧を着ていて、戦争が近いことをうかがわせる。
「良く来れたな。魔物とは会わなかったか?」
「追いつかれました。斥候のゴブリンが馬に乗って」
「!? それを撃退できたのか!」
心配してくれる兵士さんにお父さんが答えると驚いて聞き返す。頷いて答えると一人の兵士が門の中へ入って行く。
「少し待ってくれ、難民が増えていてな入れられるかわからないんだ」
「え!? 入れられないって!?」
「す、すまない。騎士様の命令でな」
兵士さんの声に驚くお父さん。僕らは唖然としてしまう。
「お母さん。私達王都に入れないの?」
「だ、大丈夫よエリカ。ここまで来たんだもの、王様は入れてくれるはずよ」
エリカちゃんの声にこたえるエリカちゃんお母さん。そ、そうだよね。ここまで来たんだもん入れてくれるはずだ。
「いつまで待てばいい?」
「今知らせに行ってる。待ってくれ」
「……因みに入れなかった人は?」
いつまで経っても聞きに行った兵士が帰ってこない。お父さんが心配して兵士に聞くと城壁沿いを指さした。
「気づいちゃいたけど、難民とはね……」
城壁沿いにはテントが立っていた。いくつもの簡素なテント、布を木の棒で支えているだけのテントが数えきれないほど建ってる。
その数に比例して人々が煮炊きしているのが見える。
「兵士さん。こんなことをあなたに言うのも酷だが、俺達は斥候と戦ったんだ。すぐに本隊がやってくるはず。壁の外の俺達は間違いなく死んじまうんだ」
「い、言われなくても分かっている。しかし、俺達は言われたことしかできないんだ。……難民キャンプを逆側に集めることだけでも進言してみる」
「ありがとう」
お父さんの言葉に兵士さんは俯いて話してくれた。この悲惨な状況を一番見ている人達だもんな。報告を聞いて動いてくれればいいけれど。
「ふむ、難民が増えているな」
「あっ! ブレイン様!」
兵士さんと話していると報告に行った兵士さんと共に煌びやかな鎧を着た長い金髪の男が現れた。
「このまま、難民はこちら側に集めておけよ」
「え? それでは魔物の群れに」
「ふむ、分かっているではないか。そう、難民で盾をつくるのだ。魔物は単純だからな。目の前に餌を与えれば食いつく。その間に魔法部隊でドンだ。はははは」
僕らがいるのに兵士に説明するブレイン。こんな奴が町を守る騎士……終わってる。
「てめえ! 俺達を餌にするつもりか!」
「ん? なんだお前は? 平民風情が騎士である私に意見を言おうというのか? 頭が高いぞ」
「この!」
グッツさんが我慢できずに声を荒らげる。切りかかろうと腰の剣に手をかけるとお父さんがそれを止めた。
「なんだ、剣を抜かなかったか」
ブレインがそういって抜いた剣を鞘に戻す。やつはグッツさんよりも遅く剣へと手をかけていた。それなのに剣を抜いて僕らに突きつけてきていた。
あんな奴だけど、腕は立つみたいだ。
「ジーク、何で止めたんだよ!」
「見てわからなかったか? やつはすでに剣を抜いていた。あいつは間違いなく強い。それに人を斬ることに躊躇がない。あんな奴が騎士の地位、貴族にいたんじゃ王都に入ることは出来ないな」
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