赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)

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第一章 ジーニアスベル

第8話 難民生活

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「お腹すいた~」

「ごめんね。食べる物はないの……」

「う~……」

 エリカちゃんの言葉に彼女のお母さんが俯いて答える。持ってきた食べ物は全部食べてしまった。
 王都について二日が経った。ブレインが言っていたように僕ら、難民は東側に集められてる。僕らの村があった方向だ。

「近くの森で狩りをしてくる」

「ジーク! 俺も行くぜ」

「いや、グッツは周りを警戒しててくれ。今は同じ難民でも……」

「あっ……。わかった」

 お父さんが手作りの弓矢と剣をもって森に入って行く。王都に入ることすらできないとなると魔石をお金に変えることも出来ない。森で狩りをすることくらいしかできないな。僕も行ってこようかな。

「……。どうぞ」

「え? いいの?」

「ん……」

 森に行こうか悩んでいるとエリカちゃんにパンを手渡している女の子がいた。黒髪、黒目の小さな女の子。短剣を背中の腰辺りにつけてる。冒険者かな?

「ありがと、私はシリカ。あなたも難民?」

「ん。私はララ、孤児」

「そうなの? 王都の中で暮らしているの?」

「うん。冒険者してる」

 シリカちゃんが自己紹介するとララと名乗ってくれた。中に住んでいる冒険者か。それで難民に食べ物を配ってくれてるのかな。よく見たらそういった人が何人かいるな。みんな冒険者みたいだけど。

「貴族がいれないと決めてから食料を少しだけど配ってる。頑張って」

「ありがとう……」

 ララちゃんはそういって別の人にパンを配り始める。あのパンもただじゃないだろうに。
 ……よし!

「バブ!」

「ど、どうしたのジーニ?」

「ダブダブダブ!」

「へ? 森? 危険よ。動物じゃなくて魔物がいたらどうするの!」

「バブ!」

「じ、ジーニ~!」

 お母さんの制止を振り切って僕はお父さんの入って行った森にハイハイで駆ける。試練をクリアして素早さの秘薬をいくつものんだから早くなってしまった。もう、僕を止められるものはいない!

 ジーニアス 0歳 【祝福】

 LV14

【体力】105+180
【魔力】137


【筋力】111

【生命力】58+40

【命中性】55

【敏捷性】90

【知力】86

【精神力】86+40

スキル

【試練受注】【試練変更】

 レベルが上がるのがかなり遅く感じるな。こんな世界で魔物なんかと命の取り合いをしないと強くなれないなんて酷な世界だ。
 森に入ると早速動物を発見。

「グルルルル!」

「バブ!?」

 熊!? 流石の対格差に怖気づく。でも! みんなには食べ物が必要なんだ!

「ガウ!」

「ダブ!」

 覆いかぶさってくる熊。僕が思いっきり腕を振り上げると熊が宙に浮く。僕の振り上げた腕がゴワゴワな毛皮をものともしないでその巨躯を宙に浮かせた。
 そして、

「ダブ!」

「!?」

 両手をグーにして跳躍! 熊の背骨の折れる感触が両手を伝わる。熊は絶命してるな。
 どうやら、僕はかなり強くなってしまっているようだ。

「ダブダブダブダブ!」

 ズルズルと熊を引きずりながら帰路にたつ。大収穫に上機嫌だ。

「ジーニ!?」

 難民キャンプに帰ってくると驚くお母さんが迎えてくれた。グッツさん達も驚いちゃってる。

「ダブダブ!」

「わ、私達の為に狩ってきたのね……。ありがとう、だけどこんな無茶しないで。あなたは私の大切な子なんだから」

 元気に声をあげるとお母さんが泣いてしまった。ごめんなさいお母さん。だけど、僕は決めたんだ。難民のみんなの為に動くって、あのララっていう人達みたいに。
 それから僕は動物を狩り始めた。ついでに試練も達成して素早さの秘薬を大量にゲット。
 ステータスを確認したら新たに称号という欄が現れていたことに気が付いた。

【0歳児で熊を狩る】効果 体力+500 筋力+100 生命力+100

 完全に脳筋なステータスアップ。まあ、0歳で熊を狩れる子なんて僕くらいなものだからこのくらいは普通かもな。

「ジーニ様とジーク様のおかげでみんなお腹いっぱいですね」

 焚火を囲んでみんなでゆったりしているとシリカちゃんが呟いた。お父さんは僕とは別に獲物を取ってきてくれてたんだよな。
 彼女の呟きを聞いて僕は思わずお父さんとお母さんを見る。

「シリカちゃん。様なんてやめて、貴族様じゃないんだから」

「そうそう、俺達は高位魔法使いじゃないしな。ジーニアスだけでいいぞ」

 お母さんとお父さんがそういうとシリカちゃんは首を横に振って、

「ジーニ様の凄さを再確認して思いました。ジーク様達は偉大な方の親なのだと。そんな方々に親しく話すなんて」

 シリカちゃんは僕らを偉大な人だと思ってるみたいだ。そんな真剣に言われると照れちゃうな。

「そういうことか……。じゃあ、こうしよう。シリカちゃんも俺達の家族!」

「え?」

「!? そうね。そうよ! グッツさんも家族だし、エリカちゃん達も家族。それなら敬語は要らないでしょ」

 お父さんの提案に驚くシリカちゃん。お母さんも同意するとみんなを見つめた。

「そ、そんな。私なんて家族になってもなんの役にも……」

「ふふ、じゃあ、シリカは長女ね。ジーニを抱いていて」

「あっ。ジーニ様」

 抱いていた僕を手渡すお母さん。温かな腕に抱きしめられると眠くなってくる。

「あら? ジーニはお眠なのかしら?」

「ははは、美人さんに抱きしめられたからか?」

「ちょっとジーク……」

「!? いやいや、エリアスも美人だぞ。ははは……」

 意識を手放す間、お父さんとお母さんの痴話げんかが聞こえてくる。薄く開いた目がシリカちゃんを最後に捉えて真っ暗になって言った。
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