【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)

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第1章 村スキル

第32話 城壁戦

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「登らせるな! 弓で落とせ! 魔法を使えるものはいないか?」

 城門にやってくるとそんな声が城壁上からしてくる。
 ゾンビが登ってきてるってこと? 怖すぎるんだけど。

「弓じゃ無理だ! 石を持ってこい!」

 更に声が聞こえてきて緊迫した状況が伝えられてくる。

「マスター! 私達が行きます!」

「う、うん。気を付けてね」

 ジャネット達がそう言って城壁上へと上っていく。僕は城門の前で待つことしかできない。

「魔法を一生懸命覚えるべきだったな」

 ジャネット達の魔法の音が聞こえてくる。それを聞いて少し寂しく思ってしまう。

「ジャンあなたは南の門をルーンとルドラも別々の方角へ」

「「「わかった」」ワン!」

 ジャネットの指示でみんなが散り散りに散っていく。
 魔法を使える人はジャネット達だけか。魔法って珍しい力なんだな。

「城門を開けるぞ! 数を減らす!」

 みんなを羨ましく見ているとそんな声が聞こえてくる。
 ルーザーさんとエクスはいつの間にか前で指揮を取ってる。二人ともこの町の有識者って奴なんだな。
 僕はただの一般人、なんだか少し寂しいな。

『おお!?』

 城門が上がっていく。目の前にゾンビの群れが現れる。ルーザーさんとエクスが道を切り開いていくと、なだれ込む。

「ハァハァ」

 城門は僕らが外に出ると閉まっていく。前進しながら近寄るゾンビを蹴散らしていく。一つの塊にならないと乱戦になる。被害を最小限に防ぎながら群れの中を突破する。

「よし! 抜けた! ここからは各自で対応せよ! 号令がなったら集まってくれ!」

『応っ』

 フルプレートの鎧を着た衛兵と、主に革の鎧を着た冒険者がルーザーさんの声に答えて戦闘に入る。
 ゾンビ達は僕らに背後を取られた形になる。それでも僕らに背を向けたままだ。知能がないから戦いやすい。

「はっ! やっ! ハァハァ……」

 横に広がってゾンビ達を倒していく。
 吐き気を気にしている暇もない。倒しても倒しても減った気がしないゾンビ達。城壁を一目見るとゾンビは死体を階段にして半分くらいまで登ってきてる。
 ジャネットの火の魔法である程度は倒せているけど、ゾンビの数が勝ってる。
 僕らも倒しているけど、全然だめだ。

「おい! ドールス! やっぱりおかしい。減ってねえぞ! こいつらを作ってるやつを倒さねえと」

「そ、そんなこといわれてもな。どこにいるかもわからないもんを探すのか? 無理だろ!」

 ルーザーさんとドールスさんが声を上げる。僕は聞こえているけど、それを気にしている暇はない。目の前のゾンビを倒すことしかできない。

『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』

 二つレベルが上がるまでゾンビを倒した。日が落ちてきていることに気が付く。
 夕日の空を見上げていると笛が鳴る。ホイッスルのような笛の音。

「帰還する! 集まれ! 城門まで突き抜けるぞ!」

 笛を鳴らしたドールスさんが疲れた表情で声を上げる。
 みんなも満身創痍だ。ベテランのみんながそんな状況。僕はヘトヘトでエクスが体を支えてくれている状況。

「お前がいなくなったらジャネット達もいなくなるんだ。頑張ってくれよ」

「わ、わかってるよ……」

 エクスがそう言って支えてくれる。そうだよね。魔法を使えるみんながいなくなったら大変だ。
 死んでラリがなくなったら明日まで何もできない。オルクスが、僕のこの世界の故郷がなくなっちゃう。
 そんなことにはさせない。させてたまるか。

「【火炎よ。龍となり敵を食らえ】」

『おお!?』

 城壁上から炎の龍が放たれる。ジャネットの魔法だ。
 ルーザーさんとドールスさんがその火の魔法に驚きながらもゾンビ達を蹴散らし、僕らを率いてくれる。
 城門に近づくと炎の龍がゾンビ達を焼き払ってくれる。おかげで簡単に城門にたどり着けた。
 ゴゴゴゴと城門が開いていくとジャネットが僕に駆け寄ってくる。

「マスター!」

「じゃ、ジャネット……」

 エクスがニヤニヤしながら僕から離れていくと、ジャネットが抱きしめてくれる。
 疲れた体が彼女の温かさで温められる。

「無理しないでくださいマスター。あなたがいなくなってしまったら」

「はは、ごめんごめん。僕も何かがしたくてさ。死なない程度に何かね」

「マスター……」
 
 みんながそれぞれの帰る場所に散っていく。ジャネットは僕の心配をしてくれて、涙を流してくれる。
 僕はその優しさに甘えてばかりじゃダメなんだ。僕はそんな優しい人から守られるよりも守りたい。そうだよ、僕は守る人になるんだ。彼女達を守る人に。

「マスター。闇の魔法がする方角がわかりました」

「え!? それって?」

 ジャネットの涙を見て決意を新たにしていると、ルーンが声をかけてくる。

「西にいたのですが、その方角からのゾンビが一番多かったのです。なので少し光魔法で調べてみたんです。そうしたら複数の魔法使いが集まっている場所がありました」

「魔法使い……」

 魔法使いが貴重な世界で魔法使いが集まってる。それだけで何かあるのがわかる。
 光魔法って便利だな。そんな調べる魔法があるなんて。

「光を屈折させると遠くが見えるようになるんです。マスターならば蜃気楼というものを知っているかと思いますが」

「蜃気楼……。確か、幻がみえるようになっちゃうんだっけ?」

「光の屈折で遠くの建物が目の前に見えてしまったりしてしまう現象です。それを少し調整すると見えるようになるんです」

 ルーンが説明してくれる。望遠鏡の凄い版って感じかな。凄いな~。
 彼女からの報告をすぐにルーザーさんに知らせないと。
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