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第二章 黒煙

第六話 無限湧きシリーズ

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 少女に引き留められて僕は少女を見る。少女は眼帯をしていて無邪気に笑っているけど何だか僕を品定めしているように見える。

「お兄さんって兄妹いるの?」
「えっ、まあ、いるけどって君は誰、僕に用なの?」

 少女にそう問いかけると目が一瞬トカゲのような目になって微笑んだ。少女は僕の手を取ってギルドの外へと出ていく。メイさんとモナーナも首を傾げながらついてきた。少女はブドウ畑の方へと走っていく、少女の割には少し早いような気がする。

「ここら辺でいいじゃろ」
「じゃろ?」

 少女の語尾に若干の違和感を感じて僕は首を傾げた。ブドウ畑の真ん中で少女は僕に振り返って眼帯を外した。痛々しい姿に僕は見ていられなくなってそっぽを向いた。

「お前の兄妹にやられた傷じゃ、どうにかせい!」
「ええ?どういう事」
「ユアンとか言ったか、あの聖属性の小僧の兄妹なのだろ。匂いが似ておる」

 話が見えない。この少女は何を言っているんだろ?

「わらわは黒煙龍、人間達に恐怖を振りまいている存在じゃ」
「「「・・・」」」

 少し遅れてきたモナーナとメイさんは唖然としている。僕は呆気に取られた。堂々とそう話す少女は姿とは違って大分目上の人のような感じを受ける。それを考えると少女の言っている事は本当なのかもしれない。

「信じられないのなら少しみせてやろうかの」

 少女がそう言うと少女の腕から黒い煙が出てきて龍の腕を作り出した。それを見る限りやはり本物のようです。

「二人共下がってください。本物のようです」
「だからいっておろう。わらわは黒煙龍じゃと」

 メイさんが僕らを庇うように前に出ると少女は苛立ちを見せた。

「あの忌々しい小僧に眼を潰されて困っておるんじゃ。この目を治すことはできんか?」
「なぜ私達人間が宿敵ともいえるお前を治すんだ」
「ふむ、面白い事をいう。ここでわらわが暴れたら困るのはそっちではないのか」

 メイさんの指摘に少女は不敵に笑いながら話した。確かにここで暴れられたら困ります。

「わらわはもう、人を襲うのをやめたんじゃ、人として暮らそうと思ったんじゃ。そうなるとこの目が見えんのに困っているんじゃ」

 少女の姿で黒煙龍は俯いた。傍から見たらこの光景は危ない、まるで僕らが少女をいじめているみたいです。

「欠損を治せるような賢者はいないかの?それかアイテムでもいいんじゃ。アイテムを持っているなら儂の鱗を好きなだけ上げるぞ」

 黒煙龍の鱗、僕がその鱗で武器や防具を作ったらどうなるんだろう。そんな事を考えているとモナーナとメイさんにジト目で見られました。素材に眼がくらんで黒煙龍を助けてしまうんじゃないかって嫌がっているみたいです。だけど、困っているなら助けてあげたい、だって人を襲うのをやめたって言ってるし。

「なんじゃ、まさか治せるのか?」
「治せません。ではまた」
「そう冷たくするでない。いくらでも礼はするぞ。鱗だけじゃなくて涙や角もどうじゃ、爪もあるぞ」

 思いつくすべての素材を提示してくる少女、僕はその全てに耳を傾けるけどモナーナとメイさんに引っ張られて嗜む子牛亭へと連行された。

「まさか、あちらから近づいてくるとは」

 メイさんは驚きを隠せない様子、そりゃそうだよね。Sランクの魔物である黒煙龍が人に化けててそれが少女だったんだから。
 この後の事を話し合うために僕の部屋へと集合した。だけど本当に困っている様子だったんだよね。もうちょっと話を聞いてあげても良かったと思うんだけど。

「私は少し黒煙龍を調べておきます。嘘を言っているようではなかったですからね。何かわけがあるのかも」

 メイさんに黒煙龍を探ってもらって僕に接触した理由を調べるようです。ユアンの匂いがしたら復讐みたいな感じで八つ裂きにするんじゃないかな。自分で言っていて怖いけど。
 そんな間柄の僕に会話を求めてあまつさえ助けを求めてきたんだ。たぶん僕の情報を少し持っている可能性がある。その割には治せることに驚いてたけど。

「とりあえず、今日は宿でゆっくりしてください。あとは私が調べておきます」

 メイさんの優しい言葉に遠慮せず、僕とモナーナはベッドに横になった。やっぱり旅って疲れるもの何だね、夕飯までぐっすりでした。

 夕飯を食べた後、ワインプールを見学していいアイデアが思い浮かんだ。芸のない事だけどワインの無限に湧くタルなんてどうだろうか。自動販売機も作ったらこの街にぴったりな物になるんじゃないかな。作るだけ作ってメイさんに相談しよう。エリントスでの勝手な行動みたいなことは致しません。僕も常識を知ったんだからね。
 
 見事ワインの湧くタルを作り出してアイテムバッグにしまったルークはベッドに横になり意識を手放した。彼の作る物はどれも市場を混乱させるものである。
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