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第二章
第48話 黒幕
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「エリン!?」
声をあげてエリンの前に立ちふさがる。生気のない目のエリン、何が起こってるんだ?
「ティル様。気をつけてください。普通の剣ではありません。自己回復が妨げられています」
傷つく体でビシャスさんが声をあげた。僕は振り返らずに頷いて答え、エリンへと近づく。
「く、来るな!」
「どうしたんだよエリン」
「来るな!」
剣を構えるエリン。近づく僕の胸に切っ先をつける。僕は構わずに前へと足を踏み出すと彼女はどんどん離れていく。壁まで追い込むとその場に座り込んでしまった。
「出来ない。できないよお父様」
「お父様?」
「エリンは昨日の夜、外へと出ていっていました。その時に誰かに会っていたのかも……」
クランロード様に支えられてるビシャスさんが話す。彼女の方を向かずにエリンへと再度近づく。
「剣はもういらないね」
「……」
エリンは生気のない目で僕を見つめてくる。戦う意思はないみたいだ。
剣を握って剣を離させようと力を入れるとエリンが立ち上がった。
『親不孝な子供だエリン』
「ん? エリン?」
エリンから彼女じゃない声が聞こえてくる。親不孝? 何のことだ?
「お兄ちゃん! 変な匂いがするよ!」
「どこ!」
「エリンお姉ちゃんの腕輪」
リルムちゃんが声をあげる。匂いの場所を聞くとすぐにエリンの腕輪を奪い取る。同時にグレンさんが彼女を抑え込んでくれた。
確かに声が聞こえて、たぶん身に着けている人に声が聞こえるようになっている魔道具だろう。そういったものがあるって聞いたことがある。
エリンに触れていたことで魔道具の効果が僕にも働いたんだろう。そう理解して僕は腕輪に声をかける。
「お前は誰だ!」
『……』
腕輪から声が聞こえることはなかった。でも、確かに腕輪から親不孝な子供と声が聞こえたはずだ。
「リルムちゃん。匂いを覚えておいて必ず接触があるはずだから」
「は~い!」
「ビシャスさん、すぐに回復するね」
「あ、ありがとうございます」
怪我の治りの遅いビシャスさんに回復魔法をかける。すぐに治るのを確認すると声が聞こえてきた。
『くく、かっはっはっは。治るはずがないだろう。ヒュドラの毒だぞ! その女は死ぬんだ。そして、お前達もな!』
腕輪から勝ち誇ったような声が聞こえてくる。僕らも死ぬって言われたから窓や扉を警戒したけど何も起こらない。襲撃されると思ったんだけどな。
「何を言ってるの?」
『な!? なぜまだ生きている!? ヒュドラの毒は入った生物の体を毒で犯すと周りにも伝染するはずだ。なぜ!?』
声に対してリルムちゃんが告げる。彼女に手渡した腕輪だったけど、僕にも聞こえてきた。少しの間は影響があるみたいだ。
「僕が回復させたからね」
『回復魔法など効かん! ヒュドラの毒は最強の毒だ! 大賢者でもない限り治せん!』
「へ~ヒュドラの毒ってそんなに凄いんだ」
「「「ヒュドラ!?」」」
腕輪に話して驚きの声が聞こえてくる。ヒュドラの事を言うとグレンさん達が驚いてる。どっちも驚いてるからなんかおかしな状況だ。
そんな状況で空気を読まない声が聞こえてくる。
『大司祭に認められました。大賢者の資格を獲得。大賢者に転生が可能になりました』
「大司祭!?」
『!? な、なぜわかった!?』
いつものシステム音声を聞いて驚きの声をあげると腕輪の声が驚愕に声を震わせた。
腕輪の向こうでは僕の力を認めてしまったのかもしれないな。それで職業が解放されてしまったわけだ。結構、このシステム音声は優秀だね。
「大司祭。行方不明のはず。お前は今どこにいるんだ」
『……』
クランロード様がビシャスさんから離れて腕輪に触れる。声をかけるけど腕輪は何も声を発しなかった。
「なるほどな。行方不明じゃなくて自分から身を隠したわけだ。それで王様が死んだ。ん? もしかしたら王様は殺されたんじゃないか? クランロードが城に居ない隙に」
「そうか!? それなら急死も納得がいく」
グレンさんが推測を話しだす。腕輪には聞こえていないけど、クランロード様も同意して声をあげた。
「でもおかしいです。エリンをクランロード様のところに向かわしたことです。あの時は彼女の様子は普通でしたし」
「そうか? 疲れ切っていただけでエイクテッドでクランロードに会っていたら剣を抜いてたんじゃないか?」
ビシャスさんの話を聞いてグレンさんが声をあげる。僕はエリンに視線を向ける。彼女は力なく座り込んでしまってる。
「とにかく、腕輪は壊しておこう」
「ああ、こっちの話を聞かれても仕方ないしな」
クランロード様の声でグレンさんが腕輪を掴んで握りつぶす。なんの抵抗もなく壊れていく腕輪。
「お、お兄様……」
「エリン!?」
腕輪が壊れると同時にエリンが倒れた。まさか、腕輪が彼女と何か関係があったの?
「私が見ます!」
ビシャスさんがエリンの服を脱がせてベッドに寝かせる。僕らは目を背けて結果を待つ。
「こ、これは……魔核」
「魔核?」
「これで操っていたのね……」
ビシャスさんの言葉にみんなで首を傾げる。
「魔核は大きな魔物の核です。それをつけられた人間は力が強くなったり魔法が強くなったりしますが寿命が短くなってしまうのです。エリンが14歳で騎士になったのはこのおかげでしょう」
「そんなもんが……。でも、それでエリンが操られて?」
「はい、従わなかったら電撃を浴びせることも可能です。精神を支配することも……」
ビシャスさんの説明に答えると怒りが込みあがってくる。
「大司祭のやろう。大臣たちとグルってことか」
「そうみたいだね」
同じく憤りを露わにするグレンさんとクランロード様が怒りをもらす。ギリギリと剣を握る手を強めると部屋を出ていく。
「どこへ?」
「「きまってる! 大臣のところだ!」」
二人は剣と槍を肩に掲げて答えた。扉の向こうに消える二人を見送って僕はビシャスさんに振り替える。
「エリンをお願いします」
「はい。行ってらっしゃいティル様」
ビシャスさんに声をかけ、リルムちゃんと一緒に二人の後を追った。
声をあげてエリンの前に立ちふさがる。生気のない目のエリン、何が起こってるんだ?
「ティル様。気をつけてください。普通の剣ではありません。自己回復が妨げられています」
傷つく体でビシャスさんが声をあげた。僕は振り返らずに頷いて答え、エリンへと近づく。
「く、来るな!」
「どうしたんだよエリン」
「来るな!」
剣を構えるエリン。近づく僕の胸に切っ先をつける。僕は構わずに前へと足を踏み出すと彼女はどんどん離れていく。壁まで追い込むとその場に座り込んでしまった。
「出来ない。できないよお父様」
「お父様?」
「エリンは昨日の夜、外へと出ていっていました。その時に誰かに会っていたのかも……」
クランロード様に支えられてるビシャスさんが話す。彼女の方を向かずにエリンへと再度近づく。
「剣はもういらないね」
「……」
エリンは生気のない目で僕を見つめてくる。戦う意思はないみたいだ。
剣を握って剣を離させようと力を入れるとエリンが立ち上がった。
『親不孝な子供だエリン』
「ん? エリン?」
エリンから彼女じゃない声が聞こえてくる。親不孝? 何のことだ?
「お兄ちゃん! 変な匂いがするよ!」
「どこ!」
「エリンお姉ちゃんの腕輪」
リルムちゃんが声をあげる。匂いの場所を聞くとすぐにエリンの腕輪を奪い取る。同時にグレンさんが彼女を抑え込んでくれた。
確かに声が聞こえて、たぶん身に着けている人に声が聞こえるようになっている魔道具だろう。そういったものがあるって聞いたことがある。
エリンに触れていたことで魔道具の効果が僕にも働いたんだろう。そう理解して僕は腕輪に声をかける。
「お前は誰だ!」
『……』
腕輪から声が聞こえることはなかった。でも、確かに腕輪から親不孝な子供と声が聞こえたはずだ。
「リルムちゃん。匂いを覚えておいて必ず接触があるはずだから」
「は~い!」
「ビシャスさん、すぐに回復するね」
「あ、ありがとうございます」
怪我の治りの遅いビシャスさんに回復魔法をかける。すぐに治るのを確認すると声が聞こえてきた。
『くく、かっはっはっは。治るはずがないだろう。ヒュドラの毒だぞ! その女は死ぬんだ。そして、お前達もな!』
腕輪から勝ち誇ったような声が聞こえてくる。僕らも死ぬって言われたから窓や扉を警戒したけど何も起こらない。襲撃されると思ったんだけどな。
「何を言ってるの?」
『な!? なぜまだ生きている!? ヒュドラの毒は入った生物の体を毒で犯すと周りにも伝染するはずだ。なぜ!?』
声に対してリルムちゃんが告げる。彼女に手渡した腕輪だったけど、僕にも聞こえてきた。少しの間は影響があるみたいだ。
「僕が回復させたからね」
『回復魔法など効かん! ヒュドラの毒は最強の毒だ! 大賢者でもない限り治せん!』
「へ~ヒュドラの毒ってそんなに凄いんだ」
「「「ヒュドラ!?」」」
腕輪に話して驚きの声が聞こえてくる。ヒュドラの事を言うとグレンさん達が驚いてる。どっちも驚いてるからなんかおかしな状況だ。
そんな状況で空気を読まない声が聞こえてくる。
『大司祭に認められました。大賢者の資格を獲得。大賢者に転生が可能になりました』
「大司祭!?」
『!? な、なぜわかった!?』
いつものシステム音声を聞いて驚きの声をあげると腕輪の声が驚愕に声を震わせた。
腕輪の向こうでは僕の力を認めてしまったのかもしれないな。それで職業が解放されてしまったわけだ。結構、このシステム音声は優秀だね。
「大司祭。行方不明のはず。お前は今どこにいるんだ」
『……』
クランロード様がビシャスさんから離れて腕輪に触れる。声をかけるけど腕輪は何も声を発しなかった。
「なるほどな。行方不明じゃなくて自分から身を隠したわけだ。それで王様が死んだ。ん? もしかしたら王様は殺されたんじゃないか? クランロードが城に居ない隙に」
「そうか!? それなら急死も納得がいく」
グレンさんが推測を話しだす。腕輪には聞こえていないけど、クランロード様も同意して声をあげた。
「でもおかしいです。エリンをクランロード様のところに向かわしたことです。あの時は彼女の様子は普通でしたし」
「そうか? 疲れ切っていただけでエイクテッドでクランロードに会っていたら剣を抜いてたんじゃないか?」
ビシャスさんの話を聞いてグレンさんが声をあげる。僕はエリンに視線を向ける。彼女は力なく座り込んでしまってる。
「とにかく、腕輪は壊しておこう」
「ああ、こっちの話を聞かれても仕方ないしな」
クランロード様の声でグレンさんが腕輪を掴んで握りつぶす。なんの抵抗もなく壊れていく腕輪。
「お、お兄様……」
「エリン!?」
腕輪が壊れると同時にエリンが倒れた。まさか、腕輪が彼女と何か関係があったの?
「私が見ます!」
ビシャスさんがエリンの服を脱がせてベッドに寝かせる。僕らは目を背けて結果を待つ。
「こ、これは……魔核」
「魔核?」
「これで操っていたのね……」
ビシャスさんの言葉にみんなで首を傾げる。
「魔核は大きな魔物の核です。それをつけられた人間は力が強くなったり魔法が強くなったりしますが寿命が短くなってしまうのです。エリンが14歳で騎士になったのはこのおかげでしょう」
「そんなもんが……。でも、それでエリンが操られて?」
「はい、従わなかったら電撃を浴びせることも可能です。精神を支配することも……」
ビシャスさんの説明に答えると怒りが込みあがってくる。
「大司祭のやろう。大臣たちとグルってことか」
「そうみたいだね」
同じく憤りを露わにするグレンさんとクランロード様が怒りをもらす。ギリギリと剣を握る手を強めると部屋を出ていく。
「どこへ?」
「「きまってる! 大臣のところだ!」」
二人は剣と槍を肩に掲げて答えた。扉の向こうに消える二人を見送って僕はビシャスさんに振り替える。
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「はい。行ってらっしゃいティル様」
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