R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

文字の大きさ
23 / 42
第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第23話 R・P・G

しおりを挟む
「星骸の一人、ベルセフォネの力があれば、なんとかなるかもしれません」

 セレイナの言葉に、場は静まり返った。
 エディアノイさんは、ユリア様の回復への兆しと共に『星骸』という言葉にも反応し、複雑な顔をしている。

 そういえば、エディアノイさんはセレイナに初めて会った時も、星骸と言う言葉に畏怖し、膝を落としていた。
 確かあの時は、なぜ星骸が復活したのかという質問のあと、すぐに兵が入ってきたため、会話は途中で終わってしまったが……

 俺は、その質問の答えを知っている。もし、エディアノイさんがそのことについて聞いて来たら、全てを打ち明けてみようと俺は思っていた。

 そして、その時はすぐにやってきた。

「……セレイナ様。その前に、私には確かめねばならない事がございます」
「なんでしょう?」
「500年前の星魔大戦の時、あなた方星骸は、女神の使徒としてこの地に顕現し、世界を掌握しようとしていた魔族を打ち倒してくださいました。……今回は、何の目的のために再び姿をお見せになられたのでしょうか」
「私たち六人の星骸に与えられた役割りはこの星の維持、安寧にあります。私たちを復活させた主のもと、『Ruin《破滅》』『Purge《浄化》』『Genesis《創世》』これらを行うことが我々の役目です」

「各地に増えている瘴気、ですか……」
「はい」

 気を使ったのか、セレイナは言葉を濁したが、エディアノイさんは自分らの現状を察したようだった。メイさんも俯き、拳に力を入れている。その顔はどこか、自分の力ではその現状を打破できない不甲斐なさから、自分自身に憤っている。そんな風に俺には見えた。


 ――そう、ストレイアが俺に求めていたのは、この世界の自浄作用としての役割。


 残酷な宣告だ。実質、自分たちを滅ぼすと言われているのと同時に、それを行使する人物が目の前にいる。
 そして先の戦いで、その力の片鱗をまざまざと見せつけられている。さらに、同等の力を宿した星骸があと五人いるという事実。

 さすがの豪傑であるメイさんからも、力でそれに抗おうという雰囲気は見て取れない。

「――セレイナさん。復活させた主って、リントのことよね?」

 陰鬱とした空気が立ち込める中、顔を上げたメイさんが尋ねた。

「はい、そうです」

 セレイナの返答のあと、メイさんの視線はこちらの方へと動き俺の所で止まった。その眼には警戒や怒りなどの類は一切なく、ただ、静かに俺が口を開くのを待っているように見えた。

「俺の話を、嘘偽りのない真実として聞いてくれますか?」

 メイさんは静かにうなずき、エディアノイさんも「聞こう」と一言だけ発した。

 自分の正体を話すことで、どのような反応が返ってくるのか。
 起こりうる最悪なケースを想像してしまう俺の悪い癖は、俺の呼吸を圧迫し、息苦しさを感じさせた。
 それでも俺は、この決心が揺らがないうちに話してしまおうと、無理やり息を大きく吸い込み、吐き出した。
 
 
「――俺は、この世界の人間じゃありません。異世界から女神に連れて来られました」


 一瞬の間が空き、二人からは驚きの声が漏れた。

「異世界って……どういうこと?」
「俺がいたのは地球と言う異世界の星です。仕事で出向いていた森の中で女神ストレイアと出会い、ここへ転生と言う形で連れてこられたんです。――そして、俺はストレイアの力でこの星と同化した存在となり、不死の身体を手に入れました」

「女神ストレイア様の……使徒」

 エディアノイさんは、そう呟くと俺の下へ歩み寄ってきた。
 彼は俺の目をまっすぐに見つめてきた。その目は、いつもの突き刺すような刃を宿したものではなく、紳士的な目だった。

「ストレイア様は、この世界の多くの者たちが信仰する新星教の神だ。その使徒である君に私は酷い態度を取ってしまった。膝まづいて許しを請うべきだろうか」
「気にしないでください。俺が隠していたのも悪いですし、今まで通り接して頂ければ嬉しいです」
「寛大なお心遣い、感謝する」

 そういうと、エディアノイは右手を差し出してきた。
 俺もそれに笑顔で応え、二つの手は力強く結ばれた。

「ようやく、あなたがあの森から生きて出て来られた理由が分かったわ。まさか、神の使いだなんて思いもしなかったけど」
「打ち明けるのが遅くなってすみません。どんな反応をされるのか怖くて……」

 俺は安堵していた。いや、安堵と言うよりはスッキリしたというか……
 自分のことを知って、理解してくれる人がいるというのはやっぱり嬉しいものだ。

 そして、打ち明けるタイミング的には今が正解だったと思う。
 メイさんは貴賤のない性格の人だけど、いきなりこんな話をされても、俺一人では正直信じてはもらえなかっただろう。
 セレイナの存在が、俺のこんな突拍子のない話もまごうことなき真実へと押し上げてくれる。
 俺にとって、セレイナはメシア様だ。

「フフ。それで、あなたはどうするの?500年前の星魔大戦みたいに私たちを粛正するのかしら?」
「ストレイアに言われた使命はその通りです。でも、どうせなら俺は俺のやり方で世界を救いたい。――だから、俺自身の目で、世界を見て回りたいと思ってます」
「あなたらしい答えで安心したわ。私は、その旅であなたが導き出した答えを受け入れる。それが、例え破滅であっても」

 俺は俯いてただ頷いた。言葉を出そうとしたけど、胸の辺りで閊えて声帯を振動させるに至らなかった。
 その様子を察してくれたメイさんは、――辛い役目ね。と一言だけ声をかけてくれた。大きな手が、優しく俺の肩に触れた。

 様々な種族、人々の争いが瘴気を産み、星を腐らせている。
 でも、こんなにも良い人達が存在するのも事実であり、ただ滅ぼせばいいと俺は思わない。
 じゃあどうすればいいのか。それには残りの星骸の力が必要だと俺は考えていた。

 セレイナ一人でもこんなに心強いんだ、未だ見ぬ彼らは、きっとちっぽけな俺の、大きな力になってくれるに違いない。

 その前にユリア様の件もある。早く探しに行かないといけないんだ。

「セレイナは星骸の位置がわかってる様だったけど、どの辺かわかる?」

 目を瞑ったセレイナの額の紋様が鈍く光る。

「はい、一人は、ここから東。そう遠くない場所にいます」
「ここから東だと、ポートイリスの街がある」
「ポートイリス?」
「ああ、リンスデール伯爵が治める港町だ。――そこに、妻を治してくれるかもしれない星骸様が?」
「いえ、ベルセフォネの反応はここから南東へ大分遠く。千キロほど離れた位置に感じます。東に感じるのは、多分フェリドゥーンかと」

 フェリドゥーン。その名前を聞いたメイさんは、口元に手をやり何かを思い出そうとしているように見える。

「ここから南東に千キロというと、おそらくは国外。オルディア王国内でしょうな。――国外となると、私が今出向くわけには……」

 エディアノイさんは悔しそうに肩を落とした。愛する奥さんを一刻でも早く助けたいんだろう。
 ユリア様の為にも、俺たちも行動を早めないといけない。
 メイさんに受けた恩も返せるし、他の国も見ることが出来て一石二鳥だ。

 オルディアには俺たちが向かうとして、まずはこの国にいるというもう一人の星骸に会ってからだな。
 仲間は多いほうが道中も賑やかになるってもんだ。……セレイナと二人の時間が無くなるのは少し残念だけど、強い仲間は一人でも多いほうが良い。

「思い出したわ!」

 メイさんが突然手を叩き声を上げた。

「フェリドゥーンってリンスデール伯爵の執事よ。会ったのは三年前だけど、なかなかできそうな男だったから印象が強かったのよね」
「執事って…… え!?同姓同名って事はないですよね」
「――この前、彼の存在を感じ取った時から違和感があったんですけど。どういうわけかフェリドゥーンはすでに復活しているようです。マナの反応は大分小さいのですが」
「弱ってるってこと?」
「いえ、弱っているわけではないと思いますけど、本来の彼が持つマナの十分の一程しか感じ取れないので」

 これは早急に確かめに行かないといけない。普通の人間では三年も星骸を従者にはできないはず。セレイナは、数日で命を落とすと言っていた。

 それが復活しているってことは……


 俺は、これからの行動をエディアノイさんに伝えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...