薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ

文字の大きさ
61 / 191
2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……

27.追われているテルマを屋敷で匿いました。

しおりを挟む
「(ストッ)よし、着いたぞテルマ。」
「………あ…あぁ……(ぐったり)」

 取り敢えず、屋敷まで戻って来た。

「大丈夫か?」
「……少し…慣れた。」
「……そうか。」

 実家を追い出され、世話になってた人の屋敷も追い出され、荷物を取りに行けば追われる始末。挙句、逃げるためとはいえ安全装置やベルト無しの絶叫マシンみたいな奴の背に乗って縦横無尽に街中を駆け巡った。

 何故、こんなに災禍に見舞われるのだろう。私が言うのは凄くアレだけど、テルマが不憫でならないな。

「(ガチャッ)ただいま。」
「(タタタッ)おかえりなさいませ。お早いおかえりで……テルマくん!?」
「詳しい事情は後で説明します。取り敢えず今は、水を汲んで来てもらえますか?」
「わかりました!(タタタッ)」

 流石に、一日で慣れたな。

 さて、テルマを客室の椅子に……

「アレク……もう大丈夫だ。自分で歩ける。」
「そうか?(スルッ)あまり無理はするなよ?」
「(ストッ)わかって……る(クラッ)…ぅ……」
「(ガシッ)言った側から……言わんこっちゃない。」
「………」
「テルマ?」
「………」
「おい!テルマ!!どうした!?」

 やはり、無理が祟ったか?

「(ぐぅぅぅぅっ)……すまん、アレク。」
「………え?」

 腹の虫の音が、部屋に鳴り響く。

「……腹、減りすぎて……動けん。」
「………」

 緩急が極端すぎる。電池切れのロボットかよ。

「やっぱり……肩…貸してくれ。」
「……わかった。」

 ……取り敢えず、客間に座らせるか。近いし。

「てか、今朝ウチの小麦在庫にトドメを刺した筈だよな?」
「……あ、あぁ……よくある事だ。」
「マジか。」

 燃費が悪すぎる。マジでカイルみたいだな。

「すぐに…おさまる。気に………すん…な……」
「いや、無理だろ。(トスッ)」

 こいつの言う通りにして大丈夫か?いいや、大丈夫じゃないな。

「何か作ってやる。それまでその席に座ってろ。」
「…………えっ?」

 拍子抜けた様子だった。

「いや、いいって。流石にそれは……申し訳無さ過ぎる。てか、逆じゃないか?一応、師弟関係なわけだし。」
「そんな固い事言うなよ。空腹の奴は見過ごせないし忍びない。それに、私にもちゃんとメリットがある。私の料理を覚えて貰えば、今度はテルマに作って貰えるだろ?今は味を覚える時だ。次は作り方を教えるからな?」
「……まぁ…そういう事なら……」
「じゃあ、ちょっと待ってろ。直ぐに用意を…………」

 そういえば、麦を買い足し忘れてたな。今から買いに……いや、連中が近くを探し回ってる。隠れながら買いに行く時間は無い。

「……ありあわせでも良いか?」
「……頼む。」


 ***


 そういう訳で、ボアの香草焼きを用意した。

 以前、街中に大量発生したヤツらの余りだ。そろそろ消耗しきりたい所だ。

「この肉……ボアか?」
「あぁ、そうだが……苦手だったか?」
「…いや、そうでもないが………」
「まぁ、一口だけ試してくれ。」
「(ゴクリ)………………………」
「お…おい、嫌なら無理は…」
「(ガブッ)」

 多少躊躇いつつも、かぶり付く。

「(ピクッ)」

 直後、硬直した。

「(じゅわわわぁぁぁっ!!)っ!!?!?!?(ゴクッ)」
「どうした!?味付けが濃すぎたりしたか?生焼けだったとか?傷んでた……って事は無いと思うが……」
「いや……何というか………」
「それとも、やっぱりボアの肉は苦手だったか!?」
「美味すぎる。」
「え?」
「ボアの肉は、獣臭いと思ってたが……(ガツッ!ガッガッガツッ!!…モムモムモム……ゴクンッ)全然臭みを感じないな!」
「…まぁ血抜きとか、下処理をちゃんとしてるからな。残った臭みも、香草と焼けば気にならなくなる。とはいえ………私としてはもっと美味しくする余地があったんだが……そんなにうまいか?」
「こんなうまい料理、今まで食べた事ない!」
「……そうか。」
「(ガッガッガツッ)」

 そんな大層なものじゃないんだけどな。

「(ゴクンッ)もう一皿!もう一皿貰えるか!?」
「もちろん(スッ)この肉を今日中に食べ切るつもりだった。まだまだあるから、好きなだけ食え!」
「ありがたい!!」

 作り甲斐のある良いリアクションをしてくれるな。


 ***


「……ふぅ。美味かった。」

 まさか、丸々一頭分食うとはな。カイル並みの食欲だ。

「まるで夢世の様な時間だった。」
「(カチャカチャ)大袈裟な表現だが(コポポポ)悪い気はしないな。」

 食後のハーブティーを淹れる。

「有り合わせで悪いな。(コトッ)何せ食材が足りなくて付け合わせも用意出来なかった。」
「いやいや、俺だったらこれを食うためだけに金貨を払っても良いな。」
「そいつは景気の良い話だな。そんなに気に入ったなら、また今度も作ってやるよ。元から、教えるつもりだったわけだし。」
「(バンッ)ほんとか!!?」
「お、おう。」
「あ……すまん。少し…はしゃぎ過ぎた。」
「あぁ、次からは気をつけてくれ。」

 やたら食い気味で聞いてきた。よほど気に入ってくれた様だ。

「いやぁ、今から楽しみだ。」
「……それなら、今度は私の自信作を用意するとしよう。」
「マジか!!」

 ここまで期待されると、悪い気はしないな。

 食後のハーブティーを飲みながら談笑する。

「(ズズッ)そういや、アレクの故郷では誰でもこれだけ料理出来るもんなのか?」
「ん?……そうだな。これくらいならそんなに難しくないし、多分大体の奴は出来ると思うぞ?」
「て事は……やっぱり、定期的に魔物の肉も食うのか?(ズズッ)」
「いや定期的も何も、毎日食ってたよ。」
「(ゴフッ)………えっ?」
故郷うちでの生活基盤は、狩猟と採取だからな。森番をしていた私も、例に漏れず森の恵みで育ったよ。」
「……なるほど。それでか。」
「いや、この国の市場にも売ってるから王都の人達も日常的に食ってんじゃないのか?」
「は?」
「へ?」
「……アレク?まさかそれを料理に?」
「いいや、高すぎたから自分で取った肉だ。」
「そうか。良かった。」

 良いのか。マウントボアを狩った事について言及は無しか。

「(コトッ)いいかアレク、店で売られてたそれは多分、獣魔用の肉だ。」
「………従魔用?」
「王都で取引されている肉は、基本的には人が食う為の肉じゃなくて使役している従魔に食わせる為の肉だ。だから鮮度も悪いし、貴族ぐらいしか買わないから高いんだよ。」
「えっ?でも、この前串肉を売ってる露店があったし、値段もそんなに高くなかったぞ?」
「俺もあまり詳しくは無いが、そういう店は冒険者から直接買い取ってんだろうな。(カチャッ)そもそも、貴族は肉なんてほとんど食わない。」
「それって、宗教的な理由があるとか?」
「(ズズッ)いいや、獣を喰らうと血が穢れるって迷信を信じてるだけだ。」
「迷信……そういう認識はあるのか。」
「まぁな。」
「じゃあ、貴族様方は普段から何を食ってんだ?」
「主食はパンとイモだ。たまにパスタも食べるけどな。」
「……他には?」
「…………?」
「だから、野菜とか魚とか木の実とか、他の物は食べないのか?」
「いや…食わない。…基本……パン以外は、食わない。」
「それも、何らかの穢れとか迷信を信じているからか?」
「(カチャッ)いや……ただの食わず…嫌いだと思う。(ズズッ)」
「………」

 そんな偏食生活してて大丈夫なのだろうか?

 腸内細菌がパンの栄養から色々と補填してんのか?それとも、こっそり他の物でも食べてんのか?

「(コトッ)けど、まぁ…俺は……気に…しな………い………………(グラッ)」
「(ハシッ…ササッ)」

 倒れかけたテルマをすかさず抱き抱える。

「………(すぅ…すぅ……)」
「……やっと効いたみたいだな。」

 今しがた飲ませたハーブティーには、リラックス効果がある。これで、良質な睡眠を取れる様になる筈だ。

「(ガッ……スクッ)」

 こうでもしないと、寝ないだろうからな。あいつもそうだったし……って、今日はやたらアイツの事を思い出すな。何というか、他人とは思えず、ついついアイツカイルと重ねてしまう。

「カンナさん。」
「(ガチャッ)はい、何ですか?」
「片付けを頼みます。私は……テルマを寝台まで運んで来ます。」
「わかりました。」


***


「よっ(バサッ)」

 テルマをベッドに運び、布団を掛ける。

「詳しい事情は明日の朝聞くよ。」

 思えばコイツは、色々と話してくれたな。貴族である事、出自の事、自らの現状……

 だが、まだ何かを隠している。それらとは明らかに次元が異なる、もっと重大な何かを。

 何となく、そんな気がする。

 そのうち、打ち明けてくれると良いのだが……

「じゃ、おやすみ。(バタン)」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄して廃嫡された馬鹿王子、冒険者になって自由に生きようとするも、何故か元婚約者に追いかけて来られて修羅場です。

平井敦史
ファンタジー
公爵令嬢ヘンリエッタとの婚約破棄を宣言した王太子マルグリスは、父王から廃嫡されてしまう。 マルグリスは王族の身分も捨て去り、相棒のレニーと共に冒険者として生きていこうと決意するが、そんな彼をヘンリエッタが追いかけて来て……!? 素直になれない三人の、ドタバタ冒険ファンタジー。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

処理中です...