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2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……
2.餞別(たぶん形見)を受け取ります。
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何やら口論をしている様だ。少し様子を伺う事にしよう。
「何度も言わすな!貴様らに用はない!アレクを連れて来い!!」
「いえ、ですからアレクは来られないんですよ。」
「退学通知を確認したら直ぐに王都を出て行ってしまったんです。」
「俺たちに出来る事はありませんか??……例えば、届けて欲しい物とか。」
そっちから追い返したくせに勝手な事を言ってくれる。だが、寧ろ好都合かもしれないな。
「ふざけるな!!ワシは約束したのだ!!退学通知を確認したら、必ず会いに来る様にと!!」
「俺たちに言われてもわかりませんよ。とにかく、これからは俺たちがあなたの相手をします。」
「ワシの好きな紅茶は?」
「……えっ?」
「答えてみぃ。知らんのか?」
「えっ……と………」
「そこのお前、果物は剥けるか??」
「あ…いや……それは……ちょっと…」
「では、この中にワシが掛かっている病の名を答えられる奴はおるか?」
「「「…………」」」
「もうよい!!貴様ら全員出て行け!!」
「「「………(バタン)」」」
あれで引き継ぎなしを選んだとか馬鹿か?
いや、馬鹿だからわからなかったんだな。
「全く……」
「(コンコン)」
「……ん?」
「(ガチャッ)お取り込み中でしたでしょうか?マサールさん。」
「!?………アレク?」
「退学通知は確認していませんが、会いに来ましたよ。(ストッ)見舞い人として。」
「……全く、お主はいつもワシを退屈させないのぉ。」
「思ったより元気そうでよかったです。」
「それより、退学通知を確認しとらんとは、どういう事だ?」
「実は……」
マサールさんに、一連の経緯を話す。
「カァッカッカッカッ!!そうかそうか。まっこと痛快じゃのう。」
「えぇ。お陰でもうしばらくは王都にいる事になりました。」
「ほう……」
「ですから、これからは見舞い人としてここに……」
「いや、もうよい。もうよいのだ。」
「えっ……?」
「もし仮にお主が正面から足繁く通えば、薬慈院の面目丸潰れじゃ。そうなればお主もただでは済まんぞ?」
「えぇ、ですので今回の様に……」
「こんな不法侵入の様な真似を続けると?それは悪手じゃろ。あらぬ冤罪をかけられるやもしれん。」
「………」
的確に状況を突いて来る。やはり只者ではないな。
「それに、ワシはあと数日で実家に戻る。もうじき息子達が迎えに来るんじゃ。全く、今になって腹を決めたようじゃな。」
「えっ!?それって……」
「ワシは充分生きた。やりたい事も出来たし、これ以上望む事はない。」
「……何言ってるんですか!このままだと死ぬかもしれないんですよ!?」
「お主こそ、何を言っておる?ワシの命は、ワシだけのものじゃ。誰にも好きにはさせん。例えお主にもな。」
「っ………」
強い意志を感じられる目だ。
「体の不調も大分和らいだ。いい加減ここでの暮らしにも飽きた。せめて、最後くらい豪邸で優雅に余生を過ごしたいんじゃ。」
「………わかりました。」
人生の選択は当事者の自由意志だ。拒否してる以上強要することは出来ない。
「一つお聞きします。実家に毒を盛らないと信用出来る人間は居ますか?」
「ん?……おぉ、それなら一人だけおるな。」
「(シャカシャカシャカッ)では、(ピッ)せめてこれを(スッ)」
「なんじゃ?これは。」
本当は、これを渡す為に会いに来た様なものなんだ。
「これまで、あなたにお渡ししていた薬の処方箋です。」
薬慈院の治療では、大した効果がない事は薄々わかっていた。だから、薬慈院で処方される薬はマサールさんのものだけ私製のものとすり替えていた。
もちろん、提案した当初はマサールさんも半信半疑だったから私自身が飲んで毒ではない事をアピールした。ちゃんと同意を得ているから違法ではないが、知られれば各方面から睨まれる事になるだろう。思えば、それを見て初めて笑う様になったんだよな、この人。
「このメモ通りに作った薬を飲めば、これまで通りあなたの体に走る痛みを弱める事が出来ます。あなたが考えた配合だと言えば、誰も文句は言わないでしょう。」
「良いのか?」
「えぇ、私はもう薬を作れませんので。次の方に任せます。」
「……薬慈院に売れば、白金貨数枚は下らないぞ?」
「かまいません。あなたの安寧に比べれば端金です。あなたには……安らかな余生を……謳歌して頂きたい。」
わかってる。人はいずれ死ぬ。大切なのは、死ぬ間際までどんな気持ちでいられるかだ。
エネルギッシュでパワフルなこの人には、最後まで苦痛を忘れて爽快で痛快で快活な高笑いをしていて欲しい。
「……では、ありがたく受け取る事とするかの。」
「では、私はこれで」
「待て。」
「……まだ何か?」
「お主、忘れとらんか?餞別がまだじゃろうが。」
そういえば、そんな約束してたっけな。少し状況は違うけど。
「これまでのお主との日々はとても楽しかった。せめてもの餞別として、わしの一番の宝を受け取って欲しいんじゃが?」
「宝?……一応言っておきますが、金銭の類ならば受け取る訳には…」
「なーに心配するな。(ゴソゴソ)子供の頃、拾った石で作った代物じゃ。友へのほんの細やかな贈り物としては、ピッタリじゃろ?」
「……まぁ、そういう事なら。」
「ほれ(チャラッ)見てみぃ。」
そうして、一つのブローチを差し出された。
「………」
確かに、高貴な装飾はあしらわれていない。しかし、装飾が無いからこそ、このブローチの造形が素人が簡単に作れるものでは無い事が分かる。
「本当に良いんですか?かなりの代物に見えますが?」
「構わん。わしの手作りじゃ。これそのものに大した値打ちは付かんよ。」
「……そうでしょうか?」
「それに、あやつらにこれの本当の価値が分かる筈もない。どうせ捨てられるのは目に見えとる。受け取ってくれ。」
奴らとは……聞くまでもないな。
「……そう言う事なら、(ギュッ)ありがたく。」
そうして、私は餞別を受け取った。
「では……こんなことを言うのもおかしな話ですが………」
「なんだ?」
「どうか、お元気で。」
「おぉ、お主もな。」
そうして私は、友人に別れを告げて去った。
「何度も言わすな!貴様らに用はない!アレクを連れて来い!!」
「いえ、ですからアレクは来られないんですよ。」
「退学通知を確認したら直ぐに王都を出て行ってしまったんです。」
「俺たちに出来る事はありませんか??……例えば、届けて欲しい物とか。」
そっちから追い返したくせに勝手な事を言ってくれる。だが、寧ろ好都合かもしれないな。
「ふざけるな!!ワシは約束したのだ!!退学通知を確認したら、必ず会いに来る様にと!!」
「俺たちに言われてもわかりませんよ。とにかく、これからは俺たちがあなたの相手をします。」
「ワシの好きな紅茶は?」
「……えっ?」
「答えてみぃ。知らんのか?」
「えっ……と………」
「そこのお前、果物は剥けるか??」
「あ…いや……それは……ちょっと…」
「では、この中にワシが掛かっている病の名を答えられる奴はおるか?」
「「「…………」」」
「もうよい!!貴様ら全員出て行け!!」
「「「………(バタン)」」」
あれで引き継ぎなしを選んだとか馬鹿か?
いや、馬鹿だからわからなかったんだな。
「全く……」
「(コンコン)」
「……ん?」
「(ガチャッ)お取り込み中でしたでしょうか?マサールさん。」
「!?………アレク?」
「退学通知は確認していませんが、会いに来ましたよ。(ストッ)見舞い人として。」
「……全く、お主はいつもワシを退屈させないのぉ。」
「思ったより元気そうでよかったです。」
「それより、退学通知を確認しとらんとは、どういう事だ?」
「実は……」
マサールさんに、一連の経緯を話す。
「カァッカッカッカッ!!そうかそうか。まっこと痛快じゃのう。」
「えぇ。お陰でもうしばらくは王都にいる事になりました。」
「ほう……」
「ですから、これからは見舞い人としてここに……」
「いや、もうよい。もうよいのだ。」
「えっ……?」
「もし仮にお主が正面から足繁く通えば、薬慈院の面目丸潰れじゃ。そうなればお主もただでは済まんぞ?」
「えぇ、ですので今回の様に……」
「こんな不法侵入の様な真似を続けると?それは悪手じゃろ。あらぬ冤罪をかけられるやもしれん。」
「………」
的確に状況を突いて来る。やはり只者ではないな。
「それに、ワシはあと数日で実家に戻る。もうじき息子達が迎えに来るんじゃ。全く、今になって腹を決めたようじゃな。」
「えっ!?それって……」
「ワシは充分生きた。やりたい事も出来たし、これ以上望む事はない。」
「……何言ってるんですか!このままだと死ぬかもしれないんですよ!?」
「お主こそ、何を言っておる?ワシの命は、ワシだけのものじゃ。誰にも好きにはさせん。例えお主にもな。」
「っ………」
強い意志を感じられる目だ。
「体の不調も大分和らいだ。いい加減ここでの暮らしにも飽きた。せめて、最後くらい豪邸で優雅に余生を過ごしたいんじゃ。」
「………わかりました。」
人生の選択は当事者の自由意志だ。拒否してる以上強要することは出来ない。
「一つお聞きします。実家に毒を盛らないと信用出来る人間は居ますか?」
「ん?……おぉ、それなら一人だけおるな。」
「(シャカシャカシャカッ)では、(ピッ)せめてこれを(スッ)」
「なんじゃ?これは。」
本当は、これを渡す為に会いに来た様なものなんだ。
「これまで、あなたにお渡ししていた薬の処方箋です。」
薬慈院の治療では、大した効果がない事は薄々わかっていた。だから、薬慈院で処方される薬はマサールさんのものだけ私製のものとすり替えていた。
もちろん、提案した当初はマサールさんも半信半疑だったから私自身が飲んで毒ではない事をアピールした。ちゃんと同意を得ているから違法ではないが、知られれば各方面から睨まれる事になるだろう。思えば、それを見て初めて笑う様になったんだよな、この人。
「このメモ通りに作った薬を飲めば、これまで通りあなたの体に走る痛みを弱める事が出来ます。あなたが考えた配合だと言えば、誰も文句は言わないでしょう。」
「良いのか?」
「えぇ、私はもう薬を作れませんので。次の方に任せます。」
「……薬慈院に売れば、白金貨数枚は下らないぞ?」
「かまいません。あなたの安寧に比べれば端金です。あなたには……安らかな余生を……謳歌して頂きたい。」
わかってる。人はいずれ死ぬ。大切なのは、死ぬ間際までどんな気持ちでいられるかだ。
エネルギッシュでパワフルなこの人には、最後まで苦痛を忘れて爽快で痛快で快活な高笑いをしていて欲しい。
「……では、ありがたく受け取る事とするかの。」
「では、私はこれで」
「待て。」
「……まだ何か?」
「お主、忘れとらんか?餞別がまだじゃろうが。」
そういえば、そんな約束してたっけな。少し状況は違うけど。
「これまでのお主との日々はとても楽しかった。せめてもの餞別として、わしの一番の宝を受け取って欲しいんじゃが?」
「宝?……一応言っておきますが、金銭の類ならば受け取る訳には…」
「なーに心配するな。(ゴソゴソ)子供の頃、拾った石で作った代物じゃ。友へのほんの細やかな贈り物としては、ピッタリじゃろ?」
「……まぁ、そういう事なら。」
「ほれ(チャラッ)見てみぃ。」
そうして、一つのブローチを差し出された。
「………」
確かに、高貴な装飾はあしらわれていない。しかし、装飾が無いからこそ、このブローチの造形が素人が簡単に作れるものでは無い事が分かる。
「本当に良いんですか?かなりの代物に見えますが?」
「構わん。わしの手作りじゃ。これそのものに大した値打ちは付かんよ。」
「……そうでしょうか?」
「それに、あやつらにこれの本当の価値が分かる筈もない。どうせ捨てられるのは目に見えとる。受け取ってくれ。」
奴らとは……聞くまでもないな。
「……そう言う事なら、(ギュッ)ありがたく。」
そうして、私は餞別を受け取った。
「では……こんなことを言うのもおかしな話ですが………」
「なんだ?」
「どうか、お元気で。」
「おぉ、お主もな。」
そうして私は、友人に別れを告げて去った。
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