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2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……
3.仔猫の導きに従います。
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幸いにも、その後誰にも気付かれる事なく病室を抜け出す事が出来た。結果だけで言えば、今日会いに行った意味はあったと思う。
「(カチャッ)餞別……いや、形見になるかもしれないな。」
受け取ったブローチを見定めながらそんな事を呟いた。
「(ステステステ)………にしても……遠いな。」
今は王都立の図書館へ向かっている。
ここで少し、王都の地理を説明しよう。
知ってのとおり、王都は樹の海に囲まれた文字通りの陸の孤島だ。
樹海の向こうには4方位それぞれの統治を任された公爵領があり、王都と公爵領を結ぶ4つの大橋が外部との膨大な物流をも担う国道となっている。
各地方公爵領同士の領境には険しい山脈がある為、王都は物流の中継地としての役割から物流が盛んとなっている。
そして、その物流を含めた各地方公爵との様々なやり取りを行い易くする為にこの大橋を延長する形で王都内にも4つの太い道が作られ、それに合わせて王都は北西区北東区南西区南東区の4つの区域に分けられている。
ブレルスク学園、薬慈院、私の住んでいる屋敷は南東区にあるが、王都立図書館は北西区にある。
つまり、都立図書館に行くには、どうしても南西区を経由する必要がある為、どうしても時間が掛かってしまう。
そして今私は、南西区を横断している所だ。
普段なら時間的に行けないが、停学になった上に薬慈院をクビになった今なら何も問題はない。
《さっきから、誰に説明してるんですか?》
誰にって……今度手紙を書く時、カイルにどう説明するかを整理してたんだよ。
《たまに説明口調になっていたのもそう言う事ですか?》
当たり前だろ。私たちを傍観してる連中がいるわけじゃあるまいし…
「(ピクッ)……?」
向かう途中のとある路地で足を止める。
「………」
なんだか、奥の方から物々しい雰囲気が漂って来る。
実は、南西区は廃墟が立ち並ぶゴーストタウンと化していて、王都最大級のスラム街『オルキス』があることでも知られている。
故に、本来なら横断しようなんて考える奴は居ない。実は、それが私にとっては好都合だったりする。
……まぁ、触らぬ神に祟り無しって言うし、これ以上余計なトラブルは抱えない方が良いな。
「(カリカリカリッ)」
「…ん?」
足元で何かがズボンの裾を引っ掻いて来る。なんだか、小動物みたいな……
"「みゃ~」“
「おや?君はいつかの。」
あの時助けた仔猫じゃないか。確か、あの後カンナさんが引き取る事になった筈だけど……
「お前、ご主人様はどうしたんだ?まさか、抜け出して来たのか?悪い子だな、お前。」
“「ミーッ!ミーッミーッ!!」“
「………ん??」
どうにも、様子がおかしい。まるで、何かを訴えかけて来るかの様な……
「おい、どうしたんだ?またどこか怪我でも(スッ)」
「(タタッ)」
「あっ、おい!」
手を伸ばすと、路地の奥へ走って行く。
"「(ピタッ)ミーッ!!」"
と、思ったら立ち止まってこちらへ鳴きかけて来る。
「……なんだ?」
あれだけ元気なら足の骨折は完治した筈だ。
「おい、そっちは危ないからこっちへ……」
"「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」"
見た所、足を引き摺ったりしている様子もない。
「だから待てって!」
“「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」“
ならば何故……
「逃げるな!そっちは……」
「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」
「…………?」
さっきから、こちらが近づいては離れて距離を取り、立ち止まってはこちらを呼ぶ様に鳴く。
《どこかへ案内しようとしているみたいですね。》
言い得て妙だ。そう、ちょうどこの禍々しい気配の元へ………
「(ダダダッ!!)」
気づくと、考えるより先に走り出していた。
"「ミーッミーッ!!(タタタタッ)」"
仔猫も、案内する様に先頭を駆けていく。……何か、とてつもなく嫌な予感がする。
***
もう、どれだけ進んだろうか?路地裏は迷路の様に入り組んでいた。
この辺りは所謂スラム街とは違い、廃墟化したゴーストタウンといった感じだ。
"「(ピタッ)ミーッ!」"
「……ここか?」
仔猫の案内に従って進むと、一軒のボロ屋に着いた。
だいぶ老朽化が進んでおり、今にも崩壊しかかっていた。
「(キィィッ)………ミャーッ」
仔猫が扉の隙間を押し開けて小屋へと入っていく。
……仔猫ちゃん。怒らないから、頼むから、ただの悪戯であってくれ。
「(キィィッ)」
仔猫に続いて、朽ちた扉を開いて空き家の中へ入る。
「………」
空き家の中は簡素な作りだったが、十分な手入れが行き届いており、生活感が滲み出ていた。恐らく、清掃に精通した本職レベルの仕事だろう。
「ケッホッ……ケホッケホッ……」
そして、部屋の奥に置かれたベッドで誰かが寝込んでいる。恐らく、ここの手入れを行った家主だろう。咳き込んだ声から、女性であると察せる。
「………女性か。(スタスタスタ)」
出来れば男性であって欲しかった。
そんな事を思いながらベッドへと向かって行く。
ベッドの側には本棚があり、見覚えのある本が置いてある。薬師学園の教科書だ。
……同じ学園の生徒か。尚悪い。
「ケホッ…ケホッ……ヒュッ…ヒュッ……」
「………」
ベッドの側まで来ると、シーツをかぶっていて顔が見えなかった。だが、シーツ越しでもわかるほど、彼女は息を荒げていた。
「……っ!(バサッ)」
意を決してシーツを剥ぎ、ベッドに横たわる少女を見る。
「ヒュッ……ヒュッヒュッ……ヒュッ……」
「…っ……っ………」
横たわった少女を見た瞬間、口の奥で金属の様な苦味を感じた。
しかし、驚きはしなかった。最悪な事に、予想通りの人物だったからだ。
「……カンナ」
変わり果てたその容姿は、見まごう事なく、私の友達だった。
病状は深刻で咳き込んではいるが意識がない。
所謂危篤状態だった。
「(カチャッ)餞別……いや、形見になるかもしれないな。」
受け取ったブローチを見定めながらそんな事を呟いた。
「(ステステステ)………にしても……遠いな。」
今は王都立の図書館へ向かっている。
ここで少し、王都の地理を説明しよう。
知ってのとおり、王都は樹の海に囲まれた文字通りの陸の孤島だ。
樹海の向こうには4方位それぞれの統治を任された公爵領があり、王都と公爵領を結ぶ4つの大橋が外部との膨大な物流をも担う国道となっている。
各地方公爵領同士の領境には険しい山脈がある為、王都は物流の中継地としての役割から物流が盛んとなっている。
そして、その物流を含めた各地方公爵との様々なやり取りを行い易くする為にこの大橋を延長する形で王都内にも4つの太い道が作られ、それに合わせて王都は北西区北東区南西区南東区の4つの区域に分けられている。
ブレルスク学園、薬慈院、私の住んでいる屋敷は南東区にあるが、王都立図書館は北西区にある。
つまり、都立図書館に行くには、どうしても南西区を経由する必要がある為、どうしても時間が掛かってしまう。
そして今私は、南西区を横断している所だ。
普段なら時間的に行けないが、停学になった上に薬慈院をクビになった今なら何も問題はない。
《さっきから、誰に説明してるんですか?》
誰にって……今度手紙を書く時、カイルにどう説明するかを整理してたんだよ。
《たまに説明口調になっていたのもそう言う事ですか?》
当たり前だろ。私たちを傍観してる連中がいるわけじゃあるまいし…
「(ピクッ)……?」
向かう途中のとある路地で足を止める。
「………」
なんだか、奥の方から物々しい雰囲気が漂って来る。
実は、南西区は廃墟が立ち並ぶゴーストタウンと化していて、王都最大級のスラム街『オルキス』があることでも知られている。
故に、本来なら横断しようなんて考える奴は居ない。実は、それが私にとっては好都合だったりする。
……まぁ、触らぬ神に祟り無しって言うし、これ以上余計なトラブルは抱えない方が良いな。
「(カリカリカリッ)」
「…ん?」
足元で何かがズボンの裾を引っ掻いて来る。なんだか、小動物みたいな……
"「みゃ~」“
「おや?君はいつかの。」
あの時助けた仔猫じゃないか。確か、あの後カンナさんが引き取る事になった筈だけど……
「お前、ご主人様はどうしたんだ?まさか、抜け出して来たのか?悪い子だな、お前。」
“「ミーッ!ミーッミーッ!!」“
「………ん??」
どうにも、様子がおかしい。まるで、何かを訴えかけて来るかの様な……
「おい、どうしたんだ?またどこか怪我でも(スッ)」
「(タタッ)」
「あっ、おい!」
手を伸ばすと、路地の奥へ走って行く。
"「(ピタッ)ミーッ!!」"
と、思ったら立ち止まってこちらへ鳴きかけて来る。
「……なんだ?」
あれだけ元気なら足の骨折は完治した筈だ。
「おい、そっちは危ないからこっちへ……」
"「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」"
見た所、足を引き摺ったりしている様子もない。
「だから待てって!」
“「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」“
ならば何故……
「逃げるな!そっちは……」
「(タタッ……ピタッ)ミーッ!!」
「…………?」
さっきから、こちらが近づいては離れて距離を取り、立ち止まってはこちらを呼ぶ様に鳴く。
《どこかへ案内しようとしているみたいですね。》
言い得て妙だ。そう、ちょうどこの禍々しい気配の元へ………
「(ダダダッ!!)」
気づくと、考えるより先に走り出していた。
"「ミーッミーッ!!(タタタタッ)」"
仔猫も、案内する様に先頭を駆けていく。……何か、とてつもなく嫌な予感がする。
***
もう、どれだけ進んだろうか?路地裏は迷路の様に入り組んでいた。
この辺りは所謂スラム街とは違い、廃墟化したゴーストタウンといった感じだ。
"「(ピタッ)ミーッ!」"
「……ここか?」
仔猫の案内に従って進むと、一軒のボロ屋に着いた。
だいぶ老朽化が進んでおり、今にも崩壊しかかっていた。
「(キィィッ)………ミャーッ」
仔猫が扉の隙間を押し開けて小屋へと入っていく。
……仔猫ちゃん。怒らないから、頼むから、ただの悪戯であってくれ。
「(キィィッ)」
仔猫に続いて、朽ちた扉を開いて空き家の中へ入る。
「………」
空き家の中は簡素な作りだったが、十分な手入れが行き届いており、生活感が滲み出ていた。恐らく、清掃に精通した本職レベルの仕事だろう。
「ケッホッ……ケホッケホッ……」
そして、部屋の奥に置かれたベッドで誰かが寝込んでいる。恐らく、ここの手入れを行った家主だろう。咳き込んだ声から、女性であると察せる。
「………女性か。(スタスタスタ)」
出来れば男性であって欲しかった。
そんな事を思いながらベッドへと向かって行く。
ベッドの側には本棚があり、見覚えのある本が置いてある。薬師学園の教科書だ。
……同じ学園の生徒か。尚悪い。
「ケホッ…ケホッ……ヒュッ…ヒュッ……」
「………」
ベッドの側まで来ると、シーツをかぶっていて顔が見えなかった。だが、シーツ越しでもわかるほど、彼女は息を荒げていた。
「……っ!(バサッ)」
意を決してシーツを剥ぎ、ベッドに横たわる少女を見る。
「ヒュッ……ヒュッヒュッ……ヒュッ……」
「…っ……っ………」
横たわった少女を見た瞬間、口の奥で金属の様な苦味を感じた。
しかし、驚きはしなかった。最悪な事に、予想通りの人物だったからだ。
「……カンナ」
変わり果てたその容姿は、見まごう事なく、私の友達だった。
病状は深刻で咳き込んではいるが意識がない。
所謂危篤状態だった。
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