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2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……
6.治療の為に連れ帰ります。
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「おい!なんだ今の音は!!」
「どうやら南西区で建物の崩落が起こったらしい。」
「崩落!?ついにか!!」
「とにかく、近くまで見に行くぞ!急げ!!」
ゴーストタウンの前に、あっという間に人だかりが出来ていた。
ここは路地裏。人気はない。
「やっぱり、注目浴びるよなぁ……そりゃそうだ。」
あのカビの生態と繁殖形態は、中々合理的な方法だった。生態に抜かりは無いと言えただろう。
しかし、ただ一つ抜かっていた事がある。今回の宿主が生きている木ではないという事だ。
即ち、どれだけ小屋に屍を捧げようとも、栄養が供給される事はない。いずれ栄養の枯渇でこうなることは、必然だと言えるだろう。
それにしても、間一髪だったな。崩落もだけど、誰にも見られずに済んだ。
"「ミャーッ!ミャウミャウミャッ!!」"
「いや……ほんとごめん。」
あれしか方法が思いつかなかったとはいえ、荒っぽ過ぎたからな。次から気をつけよ。
「プヨ、バイタルは?」
《正常です。あの大崩落の中、殆どの振動が伝わっていませんでした。お見事です。感嘆の意を示します。》
「そりゃどうも。」
余計な修飾語が多いが、無事なら何よりだ。
「さて……行くか。」
倒壊した町に背を向け、我が家へと向かった。
***
何とか、屋敷にたどり着いた。誰かが見てないうちに……
「(ガチャッ)」
……鍵が開いてる。て事は…
「(バタンッ)ただいま。」
「アレク!!」
扉を開けると、私の1番弟子が出迎える。まだ居たのか。
「お前、今までどこに………そいつは?」
だが、今は丁度良いな。
「説明は後だ。寝床の準備を頼む。私は風呂に入れて来る。」
「処置は?」
「済ませて来た。」
「食事は?」
「まだ必要ない。」
「わかった!(ダダダッ)」
ありがたい。本当にありがたいな。
***
「(ファサッ)これで良し…と。」
「…スゥ……スゥ……スゥ………」
ベッドに寝かしつけた。最初の頃より大分落ち着いて来た。しばらくはここで安静にしてて貰おう。
「ほら、お前はこっちだ。」
“「ミャウアウッ(ジタバタッ)」“
「あっ!こらっコイツ!!」
「好きにさせてやれ。」
「えっ?けど……」
「そいつは、ご主人が心配なんだよ。」
「……(パッ)わかった。」
“「(タタッ)ミャウッ」“
子猫はご主人の側に行った。
「じゃあ、ご主人が目覚めるまで頼んだぞ?」
“「ミャウッ!」"
随分と懐かれたもんだな。忠犬みたいだ。猫だけど。
「(バタン)それで?そろそろ説明してくれんだろうな?」
「もちろん。全て話すよ。」
そうして、私への処罰が停学で済んだ事と、こんな事態に至ったあらましを説明した。
「そんな訳で、しばらく彼女の治療に専念する。」
「なるほど……で?治療が済んだら、そいつはどうするんだ。身寄りが居ないなら徒弟としてウチで預ろうか?」
「………」
またとない申し出だ。そうして貰えると有り難い。有り難いが……
「…………いや、私が預かるよ。」
わたしは、そうすべきではない。
今更になって、深い後悔に苛まれた。我が家に運び込んだ事ではない。勿論、治療の為に様々なリスクを犯したからでもない。私が後悔しているのは、友人がこんな危機的状況に陥ってた事に、全く気づけなかった事だ。
いや、正確に言うなら『気付こうとしなかった』のかもしれない。
最近登校して来ない彼女をもっと早く探していれば……もしくはあの時、彼女とちゃんと話をしていれば……もしくは、あの日もっと別の解決策を思い付いていれば……いや、そもそも私が……
私が…王都に来なければ、こんな事にはなかったのではないか?
だが、私は王都へ来た。その事実は今更変わらない。その結果起こってしまった事は覆らない。
ここで彼女から目を逸らせば、また後悔する事になる。そんなのごめん被る。
「本当にいいのか?この先、同じ様な事があるかも知れない。自覚があると思うが、お前は昔からトラブルに巻き込まれやすい。その度に、間近で見続けるつもりか?」
「見てない所で苦しまれるよりずっとマシさ。それに……」
何より、私はこの罪悪感から目を逸らすべきではない。
「ニノ鉄は、踏まないさ。」
こうなったら、とことん関わって行く他あるまい。
私の目の黒いうちは、彼女をこれ以上苦しませたりなんてしない。
「そうか……なら、これ以上あれこれ言うのは無粋だな。」
「悪いな。せっかく提案してくれたのに。」
「かまやしねぇよ。そう答えるだろうと思ってたしな。」
「てか……ずっと気になってだんだけど、いつまでリクのフリをしてんだ?ソラ。」
「っ!?(ビクッ)」
一瞬ビクッとした後、1番弟子は向き直った。
「………やっぱり、お気付きでしたか。」
「以前よりは上手くなっている。けど、リクにしては少しばかり声が低い。あと、目付きを鋭くし過ぎている。」
「声……目付き……そんな指摘初めて受けましたよ。」
「他の連中の前では気をつけた方が良い。」
「いやいや、僕ら双子を見分けられるのなんて師匠ぐらいですよ。」
そうかな。結構違いがあるんだけどな。
「てか、リクは?」
「師匠を探しに出ています。後で僕から連絡しておきますよ。」
「………心配かけてごめん。」
「いえいえ、そういう事情では仕方ありませんよ。気にしないでください。」
「そう言って貰えると助かる。……ところで、今日は予定空いてるのか?」
「え?……えぇ、まぁ丁度1日暇してますね。それがどうかしました?」
「いや……やっぱり何でもない。」
「わかりました。彼女の看病と留守はお任せください。」
「えっ?」
「食料と薬草の調達に行くのでしょう?それくらいわかりますよ。」
「………良いのか?貴重な休日なんじゃ……」
「構いませんよ。この1ヶ月でやる事はあらかた片付けて来ましたから。」
「……それについても、本当にごめん。」
「謝る必要はありません。その謝罪は、昨日してもらいましたから。しかし、そうですね……では、師匠お手製の晩餐で手を打ちましょう。」
「えっ?」
「出来れば肉が良いですね。それで僕もリクも一切合切チャラです。宜しいですか?」
「………わかった。(ガチャッ)恩に着るよ、ソラ。」
「はい。お気をつけください。」
そうして、留守をソラに任せて私は我が家を後にした。
***
「………人だかりは、はけているな。」
この南西区は、ゴーストタウンとなっていて城壁の至る所に綻びがある。その綻びから王都の外へ出られる。
「(タッタッタッタッ)」
都合が良いと言ったのはこの事だ。
人が殆どいない為、樹海に入るところを誰にも見られる心配が無い。
正直、こうして都会での生活が長引くと、無性に森が恋しくなって来る。主に肉が。
王都でも肉は売っているが、品質の割に値段が高い。
入学式の時のボアも、そろそろ足りなくなって来たから樹海から補充したいと常々思っていた。
ここ1ヶ月間は、色々と忙しくて樹海に入る暇も無かったからな。この停学期間は、寧ろ丁度良い機会だと思った。
今回の狙いは、吸収効率の良い糖質だ。果物や木の実、あとは薬草が手に入れば上々って感じだな。
あくまでもあの治療方法は荒療治。ちゃんと薬草があるのならそれに越した事はない。
意識を取り戻せば、私から栄養を輸液する必要も無くなるだろう。
それに、いつ目覚めるかわからないなら今のうちに取り溜めておいた方が良い。
「(ザッ)……ここか。」
《ヒュォォォォッ》
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
眼下には、広大で鬱蒼とした大樹海が風に揺蕩っていた。
「……(ゴクリ)」
王都に入った時以来、見る事の無かった壮観な光景に、堪らず息を呑んだ。
王都に来て苦節1ヶ月、ついにこの森に入る時が来た。
「……よし、下るか。」
そうして私は、樹海へと潜った。
さて、どんなものかな。
「どうやら南西区で建物の崩落が起こったらしい。」
「崩落!?ついにか!!」
「とにかく、近くまで見に行くぞ!急げ!!」
ゴーストタウンの前に、あっという間に人だかりが出来ていた。
ここは路地裏。人気はない。
「やっぱり、注目浴びるよなぁ……そりゃそうだ。」
あのカビの生態と繁殖形態は、中々合理的な方法だった。生態に抜かりは無いと言えただろう。
しかし、ただ一つ抜かっていた事がある。今回の宿主が生きている木ではないという事だ。
即ち、どれだけ小屋に屍を捧げようとも、栄養が供給される事はない。いずれ栄養の枯渇でこうなることは、必然だと言えるだろう。
それにしても、間一髪だったな。崩落もだけど、誰にも見られずに済んだ。
"「ミャーッ!ミャウミャウミャッ!!」"
「いや……ほんとごめん。」
あれしか方法が思いつかなかったとはいえ、荒っぽ過ぎたからな。次から気をつけよ。
「プヨ、バイタルは?」
《正常です。あの大崩落の中、殆どの振動が伝わっていませんでした。お見事です。感嘆の意を示します。》
「そりゃどうも。」
余計な修飾語が多いが、無事なら何よりだ。
「さて……行くか。」
倒壊した町に背を向け、我が家へと向かった。
***
何とか、屋敷にたどり着いた。誰かが見てないうちに……
「(ガチャッ)」
……鍵が開いてる。て事は…
「(バタンッ)ただいま。」
「アレク!!」
扉を開けると、私の1番弟子が出迎える。まだ居たのか。
「お前、今までどこに………そいつは?」
だが、今は丁度良いな。
「説明は後だ。寝床の準備を頼む。私は風呂に入れて来る。」
「処置は?」
「済ませて来た。」
「食事は?」
「まだ必要ない。」
「わかった!(ダダダッ)」
ありがたい。本当にありがたいな。
***
「(ファサッ)これで良し…と。」
「…スゥ……スゥ……スゥ………」
ベッドに寝かしつけた。最初の頃より大分落ち着いて来た。しばらくはここで安静にしてて貰おう。
「ほら、お前はこっちだ。」
“「ミャウアウッ(ジタバタッ)」“
「あっ!こらっコイツ!!」
「好きにさせてやれ。」
「えっ?けど……」
「そいつは、ご主人が心配なんだよ。」
「……(パッ)わかった。」
“「(タタッ)ミャウッ」“
子猫はご主人の側に行った。
「じゃあ、ご主人が目覚めるまで頼んだぞ?」
“「ミャウッ!」"
随分と懐かれたもんだな。忠犬みたいだ。猫だけど。
「(バタン)それで?そろそろ説明してくれんだろうな?」
「もちろん。全て話すよ。」
そうして、私への処罰が停学で済んだ事と、こんな事態に至ったあらましを説明した。
「そんな訳で、しばらく彼女の治療に専念する。」
「なるほど……で?治療が済んだら、そいつはどうするんだ。身寄りが居ないなら徒弟としてウチで預ろうか?」
「………」
またとない申し出だ。そうして貰えると有り難い。有り難いが……
「…………いや、私が預かるよ。」
わたしは、そうすべきではない。
今更になって、深い後悔に苛まれた。我が家に運び込んだ事ではない。勿論、治療の為に様々なリスクを犯したからでもない。私が後悔しているのは、友人がこんな危機的状況に陥ってた事に、全く気づけなかった事だ。
いや、正確に言うなら『気付こうとしなかった』のかもしれない。
最近登校して来ない彼女をもっと早く探していれば……もしくはあの時、彼女とちゃんと話をしていれば……もしくは、あの日もっと別の解決策を思い付いていれば……いや、そもそも私が……
私が…王都に来なければ、こんな事にはなかったのではないか?
だが、私は王都へ来た。その事実は今更変わらない。その結果起こってしまった事は覆らない。
ここで彼女から目を逸らせば、また後悔する事になる。そんなのごめん被る。
「本当にいいのか?この先、同じ様な事があるかも知れない。自覚があると思うが、お前は昔からトラブルに巻き込まれやすい。その度に、間近で見続けるつもりか?」
「見てない所で苦しまれるよりずっとマシさ。それに……」
何より、私はこの罪悪感から目を逸らすべきではない。
「ニノ鉄は、踏まないさ。」
こうなったら、とことん関わって行く他あるまい。
私の目の黒いうちは、彼女をこれ以上苦しませたりなんてしない。
「そうか……なら、これ以上あれこれ言うのは無粋だな。」
「悪いな。せっかく提案してくれたのに。」
「かまやしねぇよ。そう答えるだろうと思ってたしな。」
「てか……ずっと気になってだんだけど、いつまでリクのフリをしてんだ?ソラ。」
「っ!?(ビクッ)」
一瞬ビクッとした後、1番弟子は向き直った。
「………やっぱり、お気付きでしたか。」
「以前よりは上手くなっている。けど、リクにしては少しばかり声が低い。あと、目付きを鋭くし過ぎている。」
「声……目付き……そんな指摘初めて受けましたよ。」
「他の連中の前では気をつけた方が良い。」
「いやいや、僕ら双子を見分けられるのなんて師匠ぐらいですよ。」
そうかな。結構違いがあるんだけどな。
「てか、リクは?」
「師匠を探しに出ています。後で僕から連絡しておきますよ。」
「………心配かけてごめん。」
「いえいえ、そういう事情では仕方ありませんよ。気にしないでください。」
「そう言って貰えると助かる。……ところで、今日は予定空いてるのか?」
「え?……えぇ、まぁ丁度1日暇してますね。それがどうかしました?」
「いや……やっぱり何でもない。」
「わかりました。彼女の看病と留守はお任せください。」
「えっ?」
「食料と薬草の調達に行くのでしょう?それくらいわかりますよ。」
「………良いのか?貴重な休日なんじゃ……」
「構いませんよ。この1ヶ月でやる事はあらかた片付けて来ましたから。」
「……それについても、本当にごめん。」
「謝る必要はありません。その謝罪は、昨日してもらいましたから。しかし、そうですね……では、師匠お手製の晩餐で手を打ちましょう。」
「えっ?」
「出来れば肉が良いですね。それで僕もリクも一切合切チャラです。宜しいですか?」
「………わかった。(ガチャッ)恩に着るよ、ソラ。」
「はい。お気をつけください。」
そうして、留守をソラに任せて私は我が家を後にした。
***
「………人だかりは、はけているな。」
この南西区は、ゴーストタウンとなっていて城壁の至る所に綻びがある。その綻びから王都の外へ出られる。
「(タッタッタッタッ)」
都合が良いと言ったのはこの事だ。
人が殆どいない為、樹海に入るところを誰にも見られる心配が無い。
正直、こうして都会での生活が長引くと、無性に森が恋しくなって来る。主に肉が。
王都でも肉は売っているが、品質の割に値段が高い。
入学式の時のボアも、そろそろ足りなくなって来たから樹海から補充したいと常々思っていた。
ここ1ヶ月間は、色々と忙しくて樹海に入る暇も無かったからな。この停学期間は、寧ろ丁度良い機会だと思った。
今回の狙いは、吸収効率の良い糖質だ。果物や木の実、あとは薬草が手に入れば上々って感じだな。
あくまでもあの治療方法は荒療治。ちゃんと薬草があるのならそれに越した事はない。
意識を取り戻せば、私から栄養を輸液する必要も無くなるだろう。
それに、いつ目覚めるかわからないなら今のうちに取り溜めておいた方が良い。
「(ザッ)……ここか。」
《ヒュォォォォッ》
“「キーッキーッキーッキーッ」“
“「グルアァァァアッ」“
眼下には、広大で鬱蒼とした大樹海が風に揺蕩っていた。
「……(ゴクリ)」
王都に入った時以来、見る事の無かった壮観な光景に、堪らず息を呑んだ。
王都に来て苦節1ヶ月、ついにこの森に入る時が来た。
「……よし、下るか。」
そうして私は、樹海へと潜った。
さて、どんなものかな。
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