薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ

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2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……

5.薬慈院でのスキルを活かします。

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 点滴……身体に不足している水分や栄養を血管から直接体内に送る方法だ。

 だが、ここにはそんな都合の良いものはない。だから……

「…体内の貯蓄グリコーゲンをグルカゴンで分解。全身に巡らせて、輸血と同時に点滴代わりに送り込む……と。」

 よし、我ながら良い調子だ。昔と比べて血糖値の調整精度は格段に上がったな。

 実際、森番をしていた頃は、せいぜい食糧の節約をするぐらいにしか使わない技能だった。

 薬慈院でのハードワークの賜物だ。

 多忙過ぎて予め食い溜めでもしておかないと引き継ぎの時間に間に合わないし、血糖値がバラつくと眠気で業務効率が下がる。

 当然、ドカ食いすればインスリンの大量分泌でホルモンバランスが崩れて体調を崩すからホルモンの分泌についてはある程度自分の意志で調整出来るようになった。

 まぁ……メカニズムを説明しろとか言われても無理だけどね。

 これも輸血と同じで、感覚で操作している感じだ。

 まぁ、麻酔もどうして効くのか分からずに150年間(以下略)

 何にせよ、これは嬉しい誤算だな。

 後は……

《無菌室の展開が終わりました。》

「ご苦労様。これから透析の準備に取り掛かる。」
《透析?では、私に任せてください。》
「……出来るのか?」
《はい。出来ます。》

 考えてみれば、汚物の浄化はこいつらスライムの十八番おはこだったな。出来ても何ら不思議ではないか。

「それじゃあ頼む。」
《了解しました。(ニュウッ)》

 プヨから伸びた触腕が、彼女の腹部へ至る。透析まですると、輸液管理に支障をきたしそうだったから正直助かった。

「問題は、ここからだ。」

 急激に変化させれば彼女の身が持たない。しばらくは、様子を見つつ泊まりがけで治療を行うしかない。

 これは、長期戦になりそうだな。


***


“「チチッ…チッチッ……」"
"「キキキッ…キキッ……」"
"「チュンッ…チュチュンッ……チュン…」"

 もうすっかり朝だ。治療を開始したのが昨日の朝だから、もう丸一日が経った事になる。

「……スゥ…スゥ…スゥ……」

 心なしか、昨日より顔色が良くなった様に見える。大分安定してきたな。

「……そろそろ、(ピッ)抜いておくか。」

 必要以上に輸血すると危ない。そう考えて、輸血するためのチューブを外す。

「……スゥ……スゥ…スゥ……」

 過呼吸はすっかり腹式呼吸に変わり、汗もかいているから代謝も機能している様だ。今の所、副作用も見られない。

 我ながら、凄い効き目だな。薬草要らずだ。

 ただ……王都の連中に知られたら、吊し上げられるか、一生監禁されそうで怖い。

「………」

 あいつらならやりかねないな。

"「(スリスリスリスリ)」"
「……ん?」
“「……ミィ?」"

 顰めた顔に気付いたからか、例の仔猫が寄って来て不安そうに見つめて来る。

「安心して。(ナデナデ)取り敢えず、一命を取り留めたよ。」
“「ミゥ?」"
「あと少しで、目を覚ますと思う。」
“「ミャウッ!ミャウミャウミャァァァ~ッ!!」"

 とても嬉しそうだ。治療中も、ずっと見守っていたし、本当にこの子が大好きなんだな。

《ご主人も大概では?》
「しかし、ただのカビかと思ったら……ここまで手こずるとはな。なぁ、プヨ。」
《……………………全くです。》

 珍しく、不服そうな様子だな。どうした?

《いえ、別に。それより、カビの解析が出来ました。》
「おぉ、どうだった?」
《はい。アスペルギルス属に酷似していますが、どの種類とも一致しませんでした。どうやら、王都固有の新種の様です。》

 アスペルギルス属……フミガーツス辺りからの派生か?

「駆除出来そうか?」
《可能です。しかし、今はお勧め出来ません。》
「……実行したらどうなる。」
《その場合、屋内構造の60%が損失される為、自己倒壊を起こしかねません。》
「やはりそうか。」
《現在この家屋は、強固なカビの菌糸によって辛うじて原型を留めています。正直、奇跡としか言えません。》

 本来カビは、苗床を分解して朽ちさせる。

 これだけ根付いていて倒壊していないのが不思議だったが、恐らくこいつにとっての樹木は苗床ではなく宿主なのだろう。

 樹木宿主の内部にその菌糸を張り巡らせて補強し、樹木宿主に体を擦り付ける(例えば、ボアなどがするマーキング行為やダニ取り)などの衝撃を菌糸が感知すると枝先などの高いところから自らの胞子をばら撒いて浴びせたり、時に吸引させる。

 そして、この胞子を常習的に浴びたり吸引した動物は、やがて衰弱して樹木宿主の根元で息絶える。そうして、樹木宿主に堆肥を提供する事で、カビは樹木宿主から栄養を貰う。


 そうして、樹木宿主と共生関係を築いているのだろう。

 樹木宿主を強固にするのは、過度の衝撃を加えられても幹や枝が折れない様にするためと考えられる。幹が折れたりすれば、樹上から胞子を浴びせられなくなるからな。

 例え、常習的に吸引しなくても、他の樹木に身体を擦り付ける行為そのものが、体表に付着した胞子を付着させて生息域を拡大する事に繋がる。

 そもそも、風の衝撃で胞子が出れば、その風に乗って他の木に移る事も可能ではないだろうか。

 考えれば考えるほど合理的な進化だな。

 まぁ、要するに……

「カビを放置すれば、病状は悪化する。だが、カビを取り除けば家屋が崩壊するって訳か。」
《どちらにせよ、健常者の生活に適していません。》

 ……となると、やはり我が家に運び出すしかないか。

 それも、出来るだけ急がなくてはならない。もし、私の予想が正しいのならじきにこの小屋は……

〈キシッ…〉
「っ……!」

 どうやら、時間はそう長くない様だ。

「直ぐに運び出す。準備してくれ。」
《わかりました。》

 ベットごと運び出すのは難しい。取り敢えず、肺を圧迫しない程度にテーピングするか。

「(ピシュルルルルルル…チッ)…よし、こんなもんか。」
《主、こちらは準備出来ました。》
「バイタルは?」
《安定しています。今なら運び出せます。》
「(ガバッ)じゃ、なるべく(スクッ)小屋を刺激しない様に……」

〈カラカラカラカラ……〉
〈ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……〉

「………」

 小屋の外から、崩れる音が響いて来る。どうやら、周囲では既に崩壊が始まっている様だ。

 一刻を争う状況だ。しかも、運んでいる最中も彼女にはあまり衝撃を加えてはならない。もしかしたら、その衝撃でコト切れてしまうかもしれない。まぁ、両手で支え続ければギリギリ何とか……

“「ミャウ」"
「………」

 まずいな。仔猫こいつはどうする?走ってる間は両手が塞がってるし、肩に捕まらせるのも心配だ。途中で逸れるかもしれないし、自分で走らせる訳にも……

「仕方ない。(ヒョイッ)」
“「……ミャッ?!」"
「猫ちゃん、悪いがしばらく我慢してくれ!(ハグッ)」
“「ミャウッ!?」“

 首根っこを咥える。母猫が仔猫を運ぶ時によくやる方法だ。かなり荒っぽいが、今はこれしかない。

 ほんと、なんで私の人生ってこうも難易度跳ね上がるんだろうか。

 やっぱ呪われてる?いや、今更か。

 よし!駆け抜けるぞ!プヨ!!

《イエス、マスター!》

 そうして、私は崩落するゴーストタウンを駆け抜けた。


***


〈ドンッガラガラガラガラガラッドッシャァァァァァンッ〉

 その日、南西区SWにて、建物の崩落が発生した。

 被害は広範囲に及び、小屋はおろか街一つが崩壊する大事故となった。

 後日聞いた話によると、国は家屋等の老朽化が原因で起こった大事故であり、ゴーストタウンであったため死傷者無しと結論付け、復旧は先に見送られる事となったという。

 そう。は居ないと結論付けたのだ。

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