82 / 191
2章-2節.ヘルデス家の争続に巻き込まれた私は…
19.迷宮を踏破しました。
しおりを挟む
「確認が終わりました。特に罠や仕掛けがある様子は見られません。宝物殿と考えて、まず間違いないかと思います。」
「て事は……」
「……マジで迷宮踏破したのか、俺ら。」
中継地点とか、次の階層に行くための仕掛け部屋なんて事もなかった。
「……あっけねぇ……」
「「確かに。」」
迷宮を脱出するより先に踏破してしまった。驚くほど実感が湧かない。
「まぁ、私の想定よりは時間がかかったけどな。」
「そうですか?僕は数日掛かると覚悟してましたよ?」
「……そんなに掛かるものなのか?」
「えぇ、階層数にもよりますが、未開拓の迷宮だとそれくらいですね。」
とは言っても、それは目的が踏破だったらの話だ。私たちの目的は脱出なのだから、ここまで時間を掛けるつもりは毛頭なかった。
「そんなことより……これって、金か?」
眼前には、目測で数十メートルはあろうかという大きさの黄金色の巨塊があった。
「わかりません。少なくとも、見た感じこれ以外は特に何もありません。」
「てなると、これが連中が探してる遺産って事か?」
「そうなるな。」
だとすれば、あまりにも滑稽だな。こんなもののために犯罪紛いなあれこれをするなんて……あまりにも滑稽だ。馬鹿馬鹿しくて笑えない。
「それじゃ、こいつを持ってさっさと帰ろうぜ。」
「さて……大人しく帰してくれますかね?」
「無理だろうな。テルマ、連中が欲してるのはあくまで権利書だ。こんなものを持って行った所で交渉の材料にはならないぞ。」
「問題ない。交渉するつもりはないからな。」
「えっと……ではどうやって?」
「こいつで、あいつら全員殴れば丸く収まるだろ?」
「…………はい?」
「テルマ、お前は何を言ってるんだ。」
「そ、そうですよテルマさん!いくら何でも……」
「お前1人で武器を持った大人3人を相手するのは無理だ。やるんだったら、私がやる。」
「なるほど、この中でアウェーは僕1人だけですか。ええ、わかりました。どうぞ続けてください。」
半ばヤケクソ気味のオルブを尻目に話を続ける。
「そもそも、そんな事をすればお前が相当な恨みを買わないか?」
「今更だな?何も問題はない。屋敷から追い出されるくらいには元から恨まれてるし、貴族間のいざこざについては俺の場合、一身上の都合で相殺されるからよ。お前が匿ってくれりゃ、それで何も問題はない。」
「そうか……まぁ、百歩譲って談話室の連中をどうにか出来てもそこからが問題だな。談話室を出た瞬間から玄関を潜るまでに遺産目当ての連中から妨害を受ける可能性が高い。」
「いや、俺なら確実に談話室前で待ち受けているな。」
「……確かに、それも考えられるな。」
「え?何故ですか?」
「俺たちが迷宮に潜ってから時間が経ち過ぎてる。その間、連中が談話室でずっと待ち構えてるなら、誰も入れない様にしている筈だ。」
「……なるほど。談話室が長時間使用中なら中で何かあると訝しむ方が自然ですね。」
「おまけに談話室に入る前に突っかかって来た奴がいたからな。そいつだけは絶対待ち構えているだろうよ。」
「私が威圧しながら強行突破出来れば1番楽なんだが……」
「そんな事したら、ヘルデス家の人間を全て敵に回す事になるな。個人ならともかく、組織相手にそれはまずい。そうなると面子を傷付けられた連中との間でどろっどろのイタチごっこが始まっちまう。」
「だよな。」
そんな事になれば、トドメを刺すまで終わらない。貴族とはそういう生き物だ。
「……いっそ、迷宮に誘い込んで全員口封じしちゃいます?」
「悪く無い手だ。屋敷には大勢の人間が居るが、所詮は烏合の衆だ。財産を餌に迷宮へ誘い込み確実に1人ずつ……」
「えっと…すみません。冗談のつもりだったんですが……」
「そうなのか?貴族の間じゃ結構あるぞ?一族郎党の皆殺し。」
「聞かなかった事にします。僕は何も聞いていません。えぇ、僕は何も聞いてませんからねぇっ?」
懐かしい……私もかつてはこんなリアクションをした頃もあったっけな。
てか、私の思考……日に日に王都の貴族達に近づいてるみたいで何か嫌だな。
「懸命な判断だ。悪いな。変なことばっか教えちまって。」
「……いえ、むしろ知ってた方がそういう事にうまく対処できるかもしれません。」
「そうか。達観してるな。」
「まだまだですよ。正直、この状況があまりにも面倒くさ過ぎて誰かに丸投げできないかと思ってしまいます。」
「「!」」
「すみません、こんな現実逃避……あの、2人とも?」
「それ……良いな。」
「あぁ、凄く良いアイデアだ。てか、何でこんな簡単な事に気付かなかったんだろうな。」
「え?え?どういう事ですか?」
そうだよな。別に私達でどうこうする必要はないんだ。貴族のいざこざを別の誰かに丸投げしてしまえば良い。
「テルマ、オルブ。私に考えがあるんだが……」
「乗った。」
「聞かせてください。」
「……決断早いな。」
「多分、俺より煮詰まった考えに至ってるだろうからな。」
「僕も、アレクさんの考えならば乗ります。お任せ致します。」
「………」
本当に順応性高いな。
「て事は……」
「……マジで迷宮踏破したのか、俺ら。」
中継地点とか、次の階層に行くための仕掛け部屋なんて事もなかった。
「……あっけねぇ……」
「「確かに。」」
迷宮を脱出するより先に踏破してしまった。驚くほど実感が湧かない。
「まぁ、私の想定よりは時間がかかったけどな。」
「そうですか?僕は数日掛かると覚悟してましたよ?」
「……そんなに掛かるものなのか?」
「えぇ、階層数にもよりますが、未開拓の迷宮だとそれくらいですね。」
とは言っても、それは目的が踏破だったらの話だ。私たちの目的は脱出なのだから、ここまで時間を掛けるつもりは毛頭なかった。
「そんなことより……これって、金か?」
眼前には、目測で数十メートルはあろうかという大きさの黄金色の巨塊があった。
「わかりません。少なくとも、見た感じこれ以外は特に何もありません。」
「てなると、これが連中が探してる遺産って事か?」
「そうなるな。」
だとすれば、あまりにも滑稽だな。こんなもののために犯罪紛いなあれこれをするなんて……あまりにも滑稽だ。馬鹿馬鹿しくて笑えない。
「それじゃ、こいつを持ってさっさと帰ろうぜ。」
「さて……大人しく帰してくれますかね?」
「無理だろうな。テルマ、連中が欲してるのはあくまで権利書だ。こんなものを持って行った所で交渉の材料にはならないぞ。」
「問題ない。交渉するつもりはないからな。」
「えっと……ではどうやって?」
「こいつで、あいつら全員殴れば丸く収まるだろ?」
「…………はい?」
「テルマ、お前は何を言ってるんだ。」
「そ、そうですよテルマさん!いくら何でも……」
「お前1人で武器を持った大人3人を相手するのは無理だ。やるんだったら、私がやる。」
「なるほど、この中でアウェーは僕1人だけですか。ええ、わかりました。どうぞ続けてください。」
半ばヤケクソ気味のオルブを尻目に話を続ける。
「そもそも、そんな事をすればお前が相当な恨みを買わないか?」
「今更だな?何も問題はない。屋敷から追い出されるくらいには元から恨まれてるし、貴族間のいざこざについては俺の場合、一身上の都合で相殺されるからよ。お前が匿ってくれりゃ、それで何も問題はない。」
「そうか……まぁ、百歩譲って談話室の連中をどうにか出来てもそこからが問題だな。談話室を出た瞬間から玄関を潜るまでに遺産目当ての連中から妨害を受ける可能性が高い。」
「いや、俺なら確実に談話室前で待ち受けているな。」
「……確かに、それも考えられるな。」
「え?何故ですか?」
「俺たちが迷宮に潜ってから時間が経ち過ぎてる。その間、連中が談話室でずっと待ち構えてるなら、誰も入れない様にしている筈だ。」
「……なるほど。談話室が長時間使用中なら中で何かあると訝しむ方が自然ですね。」
「おまけに談話室に入る前に突っかかって来た奴がいたからな。そいつだけは絶対待ち構えているだろうよ。」
「私が威圧しながら強行突破出来れば1番楽なんだが……」
「そんな事したら、ヘルデス家の人間を全て敵に回す事になるな。個人ならともかく、組織相手にそれはまずい。そうなると面子を傷付けられた連中との間でどろっどろのイタチごっこが始まっちまう。」
「だよな。」
そんな事になれば、トドメを刺すまで終わらない。貴族とはそういう生き物だ。
「……いっそ、迷宮に誘い込んで全員口封じしちゃいます?」
「悪く無い手だ。屋敷には大勢の人間が居るが、所詮は烏合の衆だ。財産を餌に迷宮へ誘い込み確実に1人ずつ……」
「えっと…すみません。冗談のつもりだったんですが……」
「そうなのか?貴族の間じゃ結構あるぞ?一族郎党の皆殺し。」
「聞かなかった事にします。僕は何も聞いていません。えぇ、僕は何も聞いてませんからねぇっ?」
懐かしい……私もかつてはこんなリアクションをした頃もあったっけな。
てか、私の思考……日に日に王都の貴族達に近づいてるみたいで何か嫌だな。
「懸命な判断だ。悪いな。変なことばっか教えちまって。」
「……いえ、むしろ知ってた方がそういう事にうまく対処できるかもしれません。」
「そうか。達観してるな。」
「まだまだですよ。正直、この状況があまりにも面倒くさ過ぎて誰かに丸投げできないかと思ってしまいます。」
「「!」」
「すみません、こんな現実逃避……あの、2人とも?」
「それ……良いな。」
「あぁ、凄く良いアイデアだ。てか、何でこんな簡単な事に気付かなかったんだろうな。」
「え?え?どういう事ですか?」
そうだよな。別に私達でどうこうする必要はないんだ。貴族のいざこざを別の誰かに丸投げしてしまえば良い。
「テルマ、オルブ。私に考えがあるんだが……」
「乗った。」
「聞かせてください。」
「……決断早いな。」
「多分、俺より煮詰まった考えに至ってるだろうからな。」
「僕も、アレクさんの考えならば乗ります。お任せ致します。」
「………」
本当に順応性高いな。
11
あなたにおすすめの小説
転生したみたいなので異世界生活を楽しみます
さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。
内容がどんどんかけ離れていくので…
沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。
誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。
感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
ありきたりな転生ものの予定です。
主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。
一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。
まっ、なんとかなるっしょ。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
婚約破棄して廃嫡された馬鹿王子、冒険者になって自由に生きようとするも、何故か元婚約者に追いかけて来られて修羅場です。
平井敦史
ファンタジー
公爵令嬢ヘンリエッタとの婚約破棄を宣言した王太子マルグリスは、父王から廃嫡されてしまう。
マルグリスは王族の身分も捨て去り、相棒のレニーと共に冒険者として生きていこうと決意するが、そんな彼をヘンリエッタが追いかけて来て……!?
素直になれない三人の、ドタバタ冒険ファンタジー。
※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました
月神世一
ファンタジー
「命を捨てて勝つな。生きて勝て」
50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する!
海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。
再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は――
「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」
途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。
子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。
規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。
「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」
坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。
呼び出すのは、自衛隊の補給物資。
高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。
魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。
これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる