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41.真相
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「な――っ!? アン貴方、気でもおかしくなったの? 死んでも良いっていうの!?」
「俺はお前と結婚するくらいなら死んだほうがマシだ。そうだな、でもお前の手にそれが残っているというのも気分が悪いな」
リリーと言い合うアンディ様を呆然と見ていると、彼がこちらを振り向く。
「!?」
突然視線が合い、身体をこわばらせた私に近寄り、アンディ様が囁く。
「迎えに来た。君を愛している」
「!?!?」
理解が追い付かない私にアンディ様は顔を寄せ、唇を重ねた。
(え――――)
突然のキスに頭が真っ白になる。しかも、大勢が見ている中で!
「ふっ……んん……」
ようやく解放された私は火照る顔でアンディ様を見上げると涙目になって言った。
「ア、アンディ様はやっぱりキス魔です!」
「キ……っ!?」
アンディ様が赤くなったところで、違和感に気付く。
「あれ……声……」
自分の声が戻っていることに驚いて、思わず喉に手をやった。
瞬間、私の両手の甲を白い光が包んだ。
「これ……」
私の手の甲には、星の形の紋様が刻まれている。
「俺のものだという証だ」
アンディ様の腕の中、彼のイケメンボイスが私の耳をくすぐり、心臓が飛び跳ねる。
「どういうこと!?」
私たちを見ていたリリーが険しい顔で叫んだ。
私も訳が分からず、アンディ様の顔を見た。彼は私を離そうとはせず、むしろ強く抱きしめてリリーに言った。
「君ともあろう人が知らないのか? この証は魂に刻むものだ。お前の中から俺のリリーがいなくなったのだから、当然だろう」
アンディ様は私の手を取ると、リリーに甲の方を見せた。
彼女の手からは紋様が消えており、悔しさを滲ませ、唇を嚙んでいた。
(え? え? どういうことでしょう? アンディ様はいつから私に気付いて?)
「リリー、無視してすまなかった」
無意識のうちに人差し指を頭にやっていたようで。
アンディ様は私の手を取ると、その甲に口付けた。
「アンディ様!?」
恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまう。
「ふ……その可愛い反応、やはり君が俺のリリーだ」
「かわ……いい!?」
アンディ様はどうしてしまったのだろうか。先ほどから甘い台詞のオンパレードだ。
「残念だったわね、アン!! その子の命は私が握っているのよ! 二人とも死ねばいいんだわ!」
そんな空気を破ってリリーが叫ぶ。彼女はドレスを捲し上げると、ふくらはぎにガーターベルトで括り付けていた金色のクロスを取り出した。
「呪具……っ!」
神官長が持っていたものと同じもの。おそらくそれは副神官長との入れ替わりで使われたもので、もう一つ別にあったようだ。
「私の物をあなたにあげるつもりはないわ!」
リリーが呪具を掲げ、私に向かって叫んだ。
(入れ替わりの最終的な代償は、命――)
殺される、と身を固くしたとき、私を抱きしめるアンディ様の力が強まるのを感じた。
「大丈夫だリリー」
禍々しい邪気がこちらに向かってきていた。
アンディ様は私を抱えながらも片手を前に出すと、その邪気を聖魔法で打ち払った。
「なっ!?」
驚くリリーの手の中でクロスが音を立てて割れた。
「どうして……っ! そうだアネッタ、アネッタを殺しなさい!」
絶望に顔を歪ませたリリーは、聖堂に目を向けた。
「アンディ様っ、アネッタが……!」
アネッタは聖騎士団のスパイに捕まっている。
「大丈夫だ」
「え……」
慌てる私を落ち着かせるようにアンディ様が言った。
聖堂の方へ目を向ければ、そこは聖騎士団が制圧していた。アネッタを捕らえていたスパイも拘束され、アネッタは保護されている。
「シスターも無事だ。安心してくれ」
そう言って笑顔を向けたアンディ様の腕の中で私は膝から崩れ落ちた。
「大丈夫か!?」
しっかり受け止めてくれたアンディ様を見上げると、涙が出てきた。
「良かった……本当に良かった……誰も死なずに済んだんですよね?」
「ああ」
アンディ様が目を優しく細め、涙を拭ってくれる。
その温もりに、過ごしてきた日々が蘇り、少しくすぐったい。
「君の涙はやはり美しいな」
「アンディ様?」
アンディ様はそう言うと、私の瞼に唇を落とした。
「!?」
また急にキスをされてしまって、顔が爆発してしまう。
「ふ……その顔、やはり俺の悪女だ」
「!?!?」
アンディ様があまりにも甘い笑顔を向けるものだから、私の顔はますます熱くなっていく。
「あー……団長」
コホン、と副団長さんが咳払いをする。
聖堂内を慌ただしく動く騎士たちを指示していたらしい副団長さんが呆れ顔で近くに立っていた。
私は恥ずかしすぎてアンディ様から離れようとしたのに、彼は離してくれない。不機嫌そうに副団長さんに言った。
「なんだライリー、邪魔をするな。指揮はお前に任せただろう」
「それはそうですけど……」
力を奪われ、呪具も味方も失ったリリーは魂を抜かれたような表情で、騎士たちに連れて行かれているのが見えた。
「この子がリリアン嬢を心配していましたので」
副団長さんの横にはアネッタが立っていた。
「リリー様!! 御無事で良かった!」
アネッタが飛びついて来たので、アンディ様はさすがに解放してくれて、私はアネッタを抱きとめた。
「良かった……! リリー様、私やみんなのために死んじゃうんじゃないかと不安で……!」
私の胸の中で泣きじゃくるアネッタを抱きしめて頭を撫でる。
「アネッタも無事で良かった……」
つられてまた私も泣けてくる。
「まったく、自分の腕を切るなんて! 肝が冷えたぞ」
「す、すみません」
懐かしいアンディ様のお説教に喜びが湧き上がる。と同時に、急にくらりと目が回る。
「リリー様!!」
「リリー!」
目の前が真っ暗になる。
でも、もう入れ替わることなんてない。そう思うと安心できた。
大きくて温かいアンディ様の腕の中、私は意識を手放した。
「俺はお前と結婚するくらいなら死んだほうがマシだ。そうだな、でもお前の手にそれが残っているというのも気分が悪いな」
リリーと言い合うアンディ様を呆然と見ていると、彼がこちらを振り向く。
「!?」
突然視線が合い、身体をこわばらせた私に近寄り、アンディ様が囁く。
「迎えに来た。君を愛している」
「!?!?」
理解が追い付かない私にアンディ様は顔を寄せ、唇を重ねた。
(え――――)
突然のキスに頭が真っ白になる。しかも、大勢が見ている中で!
「ふっ……んん……」
ようやく解放された私は火照る顔でアンディ様を見上げると涙目になって言った。
「ア、アンディ様はやっぱりキス魔です!」
「キ……っ!?」
アンディ様が赤くなったところで、違和感に気付く。
「あれ……声……」
自分の声が戻っていることに驚いて、思わず喉に手をやった。
瞬間、私の両手の甲を白い光が包んだ。
「これ……」
私の手の甲には、星の形の紋様が刻まれている。
「俺のものだという証だ」
アンディ様の腕の中、彼のイケメンボイスが私の耳をくすぐり、心臓が飛び跳ねる。
「どういうこと!?」
私たちを見ていたリリーが険しい顔で叫んだ。
私も訳が分からず、アンディ様の顔を見た。彼は私を離そうとはせず、むしろ強く抱きしめてリリーに言った。
「君ともあろう人が知らないのか? この証は魂に刻むものだ。お前の中から俺のリリーがいなくなったのだから、当然だろう」
アンディ様は私の手を取ると、リリーに甲の方を見せた。
彼女の手からは紋様が消えており、悔しさを滲ませ、唇を嚙んでいた。
(え? え? どういうことでしょう? アンディ様はいつから私に気付いて?)
「リリー、無視してすまなかった」
無意識のうちに人差し指を頭にやっていたようで。
アンディ様は私の手を取ると、その甲に口付けた。
「アンディ様!?」
恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまう。
「ふ……その可愛い反応、やはり君が俺のリリーだ」
「かわ……いい!?」
アンディ様はどうしてしまったのだろうか。先ほどから甘い台詞のオンパレードだ。
「残念だったわね、アン!! その子の命は私が握っているのよ! 二人とも死ねばいいんだわ!」
そんな空気を破ってリリーが叫ぶ。彼女はドレスを捲し上げると、ふくらはぎにガーターベルトで括り付けていた金色のクロスを取り出した。
「呪具……っ!」
神官長が持っていたものと同じもの。おそらくそれは副神官長との入れ替わりで使われたもので、もう一つ別にあったようだ。
「私の物をあなたにあげるつもりはないわ!」
リリーが呪具を掲げ、私に向かって叫んだ。
(入れ替わりの最終的な代償は、命――)
殺される、と身を固くしたとき、私を抱きしめるアンディ様の力が強まるのを感じた。
「大丈夫だリリー」
禍々しい邪気がこちらに向かってきていた。
アンディ様は私を抱えながらも片手を前に出すと、その邪気を聖魔法で打ち払った。
「なっ!?」
驚くリリーの手の中でクロスが音を立てて割れた。
「どうして……っ! そうだアネッタ、アネッタを殺しなさい!」
絶望に顔を歪ませたリリーは、聖堂に目を向けた。
「アンディ様っ、アネッタが……!」
アネッタは聖騎士団のスパイに捕まっている。
「大丈夫だ」
「え……」
慌てる私を落ち着かせるようにアンディ様が言った。
聖堂の方へ目を向ければ、そこは聖騎士団が制圧していた。アネッタを捕らえていたスパイも拘束され、アネッタは保護されている。
「シスターも無事だ。安心してくれ」
そう言って笑顔を向けたアンディ様の腕の中で私は膝から崩れ落ちた。
「大丈夫か!?」
しっかり受け止めてくれたアンディ様を見上げると、涙が出てきた。
「良かった……本当に良かった……誰も死なずに済んだんですよね?」
「ああ」
アンディ様が目を優しく細め、涙を拭ってくれる。
その温もりに、過ごしてきた日々が蘇り、少しくすぐったい。
「君の涙はやはり美しいな」
「アンディ様?」
アンディ様はそう言うと、私の瞼に唇を落とした。
「!?」
また急にキスをされてしまって、顔が爆発してしまう。
「ふ……その顔、やはり俺の悪女だ」
「!?!?」
アンディ様があまりにも甘い笑顔を向けるものだから、私の顔はますます熱くなっていく。
「あー……団長」
コホン、と副団長さんが咳払いをする。
聖堂内を慌ただしく動く騎士たちを指示していたらしい副団長さんが呆れ顔で近くに立っていた。
私は恥ずかしすぎてアンディ様から離れようとしたのに、彼は離してくれない。不機嫌そうに副団長さんに言った。
「なんだライリー、邪魔をするな。指揮はお前に任せただろう」
「それはそうですけど……」
力を奪われ、呪具も味方も失ったリリーは魂を抜かれたような表情で、騎士たちに連れて行かれているのが見えた。
「この子がリリアン嬢を心配していましたので」
副団長さんの横にはアネッタが立っていた。
「リリー様!! 御無事で良かった!」
アネッタが飛びついて来たので、アンディ様はさすがに解放してくれて、私はアネッタを抱きとめた。
「良かった……! リリー様、私やみんなのために死んじゃうんじゃないかと不安で……!」
私の胸の中で泣きじゃくるアネッタを抱きしめて頭を撫でる。
「アネッタも無事で良かった……」
つられてまた私も泣けてくる。
「まったく、自分の腕を切るなんて! 肝が冷えたぞ」
「す、すみません」
懐かしいアンディ様のお説教に喜びが湧き上がる。と同時に、急にくらりと目が回る。
「リリー様!!」
「リリー!」
目の前が真っ暗になる。
でも、もう入れ替わることなんてない。そう思うと安心できた。
大きくて温かいアンディ様の腕の中、私は意識を手放した。
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