1 / 26
カーティア、気づく。
しおりを挟む
その日、カーティアは不意に気がついた。目の前にいた涙目の令嬢のせいだろうか。それともこちらをチラとも見ようとしない婚約者のせいだろうか。
「…アルドを、解放してあげてください!」
私は悪役令嬢だと。
カーティア・メラーニ。ライトノベル『白銀の騎士と癒しの姫君』に登場する悪役令嬢である。王立の学園に通う主人公である子爵令嬢シャルロット・シャノンを目の敵にする公爵令嬢であり、彼女の婚約者であるアルド・ティローネ伯爵令息とシャルロットが友人として仲良くなると、婚約者を奪われまいと彼女の命を狙うようになる。最後にアルドに婚約破棄されると、自分から修道院に向かうようなプライドの高い令嬢だった。
そして今、舞台は中盤、婚約者のアルドを使用人のように扱うカーティアに対し、黙っていられなくなったシャルロットが直談判をする場面だった。
本編ならば、カーティアは傲然と顎をあげ、
『私のものを私の好きに扱って、何がいけませんの?』
と笑う場面だ。婚約者を物扱いするカーティアにシャルロットは怒り、アルドを解放するために動き出すことになる。でも、カーティアは自分が悪役だと気づいてしまったので。
「…えぇ、分かりました。アルドに好きにするように伝えてくださいませ」
そう言うだけに留めた。
ぽかんとしたシャルロットに背を向け、カーティアは歩き出す。公爵令嬢としての所作で優雅に、でも最大限に速く。頭の中でぐるぐると情報が渦巻いている。16年間のカーティアとしての記憶と、それよりも前の別世界にて『白銀の騎士と癒しの姫君』を読んでいた自分の記憶。混ざり合う記憶が吐き気さえ呼びそうで口を引き結んだままカーティアは歩き続けた。
1時間ほど学園内を歩き回りだんだんと記憶の整理ができてきたカーティアはようやく足を止めた。目の前にあるのは図書館で学園の中でカーティアが最もよく通う場所だった。1番奥のふかふかとしたソファに座り込み、今度はゆっくり記憶を反芻する。
前世の記憶がなぜ今甦ったのかはこの際良いとする。考えてもすぐには結果が出せない問いだからだ。
今必要なのは現在について考えることだ。過去の記憶について必要なのは『白銀の騎士と癒しの姫君』の物だけ。
そこまで考えたところでカーティアは首を傾げた。物語についての記憶と現在の状況について、どこか差が見られたからだった。
「…アルドを、解放してあげてください!」
私は悪役令嬢だと。
カーティア・メラーニ。ライトノベル『白銀の騎士と癒しの姫君』に登場する悪役令嬢である。王立の学園に通う主人公である子爵令嬢シャルロット・シャノンを目の敵にする公爵令嬢であり、彼女の婚約者であるアルド・ティローネ伯爵令息とシャルロットが友人として仲良くなると、婚約者を奪われまいと彼女の命を狙うようになる。最後にアルドに婚約破棄されると、自分から修道院に向かうようなプライドの高い令嬢だった。
そして今、舞台は中盤、婚約者のアルドを使用人のように扱うカーティアに対し、黙っていられなくなったシャルロットが直談判をする場面だった。
本編ならば、カーティアは傲然と顎をあげ、
『私のものを私の好きに扱って、何がいけませんの?』
と笑う場面だ。婚約者を物扱いするカーティアにシャルロットは怒り、アルドを解放するために動き出すことになる。でも、カーティアは自分が悪役だと気づいてしまったので。
「…えぇ、分かりました。アルドに好きにするように伝えてくださいませ」
そう言うだけに留めた。
ぽかんとしたシャルロットに背を向け、カーティアは歩き出す。公爵令嬢としての所作で優雅に、でも最大限に速く。頭の中でぐるぐると情報が渦巻いている。16年間のカーティアとしての記憶と、それよりも前の別世界にて『白銀の騎士と癒しの姫君』を読んでいた自分の記憶。混ざり合う記憶が吐き気さえ呼びそうで口を引き結んだままカーティアは歩き続けた。
1時間ほど学園内を歩き回りだんだんと記憶の整理ができてきたカーティアはようやく足を止めた。目の前にあるのは図書館で学園の中でカーティアが最もよく通う場所だった。1番奥のふかふかとしたソファに座り込み、今度はゆっくり記憶を反芻する。
前世の記憶がなぜ今甦ったのかはこの際良いとする。考えてもすぐには結果が出せない問いだからだ。
今必要なのは現在について考えることだ。過去の記憶について必要なのは『白銀の騎士と癒しの姫君』の物だけ。
そこまで考えたところでカーティアは首を傾げた。物語についての記憶と現在の状況について、どこか差が見られたからだった。
268
あなたにおすすめの小説
10回目の婚約破棄。もう飽きたので、今回は断罪される前に自分で自分を追放します。二度と探さないでください(フリではありません)
放浪人
恋愛
「もう、疲れました。貴方の顔も見たくありません」
公爵令嬢リーゼロッテは、婚約者である王太子アレクセイに処刑される人生を9回繰り返してきた。 迎えた10回目の人生。もう努力も愛想笑いも無駄だと悟った彼女は、断罪イベントの一ヶ月前に自ら姿を消すことを決意する。 王城の宝物庫から慰謝料(国宝)を頂き、書き置きを残して国外逃亡! 目指せ、安眠と自由のスローライフ!
――のはずだったのだが。
「『顔も見たくない』だと? つまり、直視できないほど私が好きだという照れ隠しか!」 「『探さないで』? 地の果てまで追いかけて抱きしめてほしいというフリだな!」
実は1周目からリーゼロッテを溺愛していた(が、コミュ障すぎて伝わっていなかった)アレクセイ王子は、彼女の拒絶を「愛の試練(かくれんぼ)」と超ポジティブに誤解! 国家権力と軍隊、そしてS級ダンジョンすら踏破するチート能力を総動員して、全力で追いかけてきた!?
物理で逃げる最強令嬢VS愛が重すぎる勘違い王子。 聖女もドラゴンも帝国も巻き込んだ、史上最大規模の「国境なき痴話喧嘩」が今、始まる!
※表紙はNano Bananaで作成しています
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
逆行した悪女は婚約破棄を待ち望む~他の令嬢に夢中だったはずの婚約者の距離感がおかしいのですか!?
魚谷
恋愛
目が覚めると公爵令嬢オリヴィエは学生時代に逆行していた。
彼女は婚約者である王太子カリストに近づく伯爵令嬢ミリエルを妬み、毒殺を図るも失敗。
国外追放の系に処された。
そこで老商人に拾われ、世界中を見て回り、いかにそれまで自分の世界が狭かったのかを痛感する。
新しい人生がこのまま謳歌しようと思いきや、偶然滞在していた某国の動乱に巻き込まれて命を落としてしまう。
しかし次の瞬間、まるで夢から目覚めるように、オリヴィエは5年前──ミリエルの毒殺を図った学生時代まで時を遡っていた。
夢ではないことを確信したオリヴィエはやり直しを決意する。
ミリエルはもちろん、王太子カリストとも距離を取り、静かに生きる。
そして学校を卒業したら大陸中を巡る!
そう胸に誓ったのも束の間、次々と押し寄せる問題に回帰前に習得した知識で対応していたら、
鬼のように恐ろしかったはずの王妃に気に入られ、回帰前はオリヴィエを疎ましく思っていたはずのカリストが少しずつ距離をつめてきて……?
「君を愛している」
一体なにがどうなってるの!?
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」と言われたので別れたのですが、呪われた上に子供まで出来てて一大事です!?
綾織季蝶
恋愛
「貴女じゃ彼に不釣りあいだから別れて」そう告げられたのは孤児から魔法省の自然管理科の大臣にまで上り詰めたカナリア・スタインベック。
相手はとある貴族のご令嬢。
確かに公爵の彼とは釣り合うだろう、そう諦めきった心で承諾してしまう。
別れる際に大臣も辞め、実家の誰も寄り付かない禁断の森に身を潜めたが…。
何故か呪われた上に子供まで出来てしまった事が発覚して…!?
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる