悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ

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カーティア、考える。

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物語の主人公シャルロット・シャロン。『白銀の騎士と癒しの姫君』は、癒しの魔法を持つ彼女が、王立学園で魔法を勉強しながら王太子付きの騎士と恋をするという物語だ。他にも男性キャラは沢山出てくるがあくまで彼らとは友人で、恋愛をするのは騎士のダレン・バークレイ相手のみのはずだ。
しかし現在、彼女の恋人は4人いる。
王太子の側近、原作の彼女の恋人、ダレン・バークレイ。
同じく側近、宰相の息子で、学園では生徒副会長をしているヴィクター・ハンク。
王立騎士団団長の息子で、学園の自治を担当しているセスト・スタンリー。
そして、カーティアの婚約者であり、図書委員長をしているアルド・ティローネ。
原作のシャルロットは彼らの悩みを解決し友人にはなるが、心優しく芯の強い真っ直ぐな少女で、同時に複数の人と付き合えるようなキャラクターではない。
「…もしかして彼女にも前世があるのかしら」
思わず独りごちる。今思い返せば彼女の問題解決手段はかなり強引なものだった気がする。カーティアがやった覚えのない悪行を涙目で糾弾されたこともあるし。
それでも、今、カーティアは彼女に対する対抗策を手に入れた。原作の記憶を使えば、彼女が何をしようとしているのかを把握もできるわけだ。しかし。
「…ここら辺で1番快適な修道院ってどこかしら…」
物憂げな顔でカーティアは呟いた。

カーティアにも言い分はある。彼女は別に破滅したいわけではない。しかし彼女には幼い頃から悪役令嬢らしい振る舞いをしてきた自覚があった。
カーティアは本が好きだ。本にまつわるものも好きだ。だから、権力を活用し、領地に本を早く輸入するために大きな橋を架けさせたり、有名な装丁家を無理やり領地に呼びつけたりした。それは原作のカーティアも行っていた所業だ。原作の彼女は本好きではなく、宝石やドレス目当ての行いだったが。そんな悪役令嬢の所業を行うカーティアを両親は許してくれていたが、流石に婚約破棄をされれば、今まで通りとは行かないだろう。16にもなれば新しくまともな縁談も見つけるのも難しいだろうし、ここは潔く修道院に行くべきだろう。アルドには自由にするように言ったし、もう婚約破棄の手続きを進め始めているかもしれない。
そもそもカーティアとアルドは婚約者でありながら、別に仲が良い訳ではない。10数年の付き合いながらカーティアは婚約者よりも本を読むことを優先していたし、アルドも自分よりも身分の高く年上の婚約者を厭うたのかあまり近付いてこない。婚約者でありながらほぼ他人の関係だったせいか、彼にシャルロットが近づいてきた時も特にカーティアは反応しなかった。だからこそ、カーティアは「アルドを解放しろ」と言われても、婚約を解消するか、破棄するかぐらいしか思いつかない。そのぐらいの繋がりしかないからだ。
原作の2人は違った。自分よりも身分の低い婚約者をカーティアは使用人のように好き勝手に扱い、家を人質に取られたアルドはカーティアに逆らうことが出来ず、ただ黙って従うだけだった。シャルロットが我慢できずにカーティアに直談判するまで、アルドはいつもカーティアの側に黙って立っていた。
今のカーティア達は原作とはかなり違うが、シャルロットが、アルドのことでカーティアに直談判するイベントは起きたのだ。カーティアが修道院に向かうまであと少しだろう。
原作ではカーティアに関するイベントはこの後3つほどある。カーティアが何もしなくてもシャルロットは原作通りに物事を進めようとするだろう。全てのイベントが終わり、カーティアが修道院に向かうまでの恐らく数ヶ月の残り時間を、カーティアはのんびりと楽しむことに決めた。
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