【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり

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恋人編(前編)

第22話

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「フェル。これってここに置いてもいい?」

「ん?ああ構わない。それにここはセレーナの部屋になったんだから、自分で決めるといい。」

 フェルが穏やかな笑みを浮かべ、私にそう答える。

 ああ。本当にかっこいい。

 彼と無事に恋人同士になることができた私は、ただ今幸せの真っ只中である。
 すれ違いなどがたくさんあったけれど、今はもうラブラブなんだから。

 砕けた口調、変わった呼び名。
 それに、いつまで経っても慣れないこの〈恋人〉という称号。
 未だに酔いしれているのは私だけかもしれない。
 だって初恋なんだよ?初カレなんだよ?仕方ないと思う。

 恋人になって数日。

 私はフェルの提案で、彼の家にお引越しをすることになった。

 彼が不安そうに言ってきたそれは私にとって最高に嬉しいもので、聞いた瞬間いい提案だ!と飛びつくようにそれを受け入れた。

 断るわけがない。

 もちろんすぐさまおばちゃんに事情を説明し、前まで住んでいた部屋を解約してもらった。
 本当におばちゃんは優しい。
 感謝しかないよ。


 そうゆう訳で私は今、彼の家の沢山ある部屋の一室で自分の荷物を彼と一緒に整理している最中なのである。

 寝室は彼と一緒。
 にやける顔を抑えられない。


 それに、彼が隣にいる。
 彼と十日に一度じゃなくて毎日一緒にいられる。
 それだけで嬉しくて、幸せすぎて堪らない。

 私は一緒に整理を手伝ってくれている彼の背中を無意識に見つめる。

「ん?どうしたんだセレーナ。」

 困ったようにこちらを見る彼も、すっごく素敵。

「なんでもないよ?ただ、フェルに見惚れてただけ。」

 うっとりとそう囁けば、彼が顔を真っ赤にして何かを堪えるように言葉を発した。

「あのなあ、セレーナ。もっと加減と言うやつをだな···。」

 額に手を当てはあと息を吐く彼に首を傾げる。
 彼の言っている意味がイマイチ分からなかったのでスルーすることにした私は、未だ何かを抑えている彼を横目につい最近の会話を思い出した。

『私にとって、フェルさんは一番かっこいい。』

 私の美醜感覚が周りと少し違うところは、彼と初めての情事をした後全て話した。
 身の回りにいる皆が言うイケメンが私の好みではないこと。
 フェルディナントこそ私のどタイプ・・・・だということ。
 そして性格もまるごと好きだということ。

 自分が格好良いと言われ、は?と眉をひそめて私のことを訝しげに見ていた彼だったが、醜いと自分を否定し続けるフェルによって発揮させられた私の頑固ヂカラによってそれはねじ伏せられた。
 だから多分、うん。大丈夫だ。多分。

「フェル~疲れたあ。」

 彼のことをずっと考えていて整理が捗りそうにないなと思った私は駄々を捏ねたちびっ子のように足をばたつかせた。
 休憩だ。こんな時には休憩が必要だ。
 そんな私をフェルは呆れたように見る。

 彼はもうフードで顔を隠したりはしていない。
 もちろん外ではする。
 だが、私の前では何もつけたり隠したりしなくなった。

 どうやら、彼は私に何もかも受け入れて欲しいらしい。
 私からしたら、全然オーケーだからいいけれど。

 最初は心配そうにしていたフェルだったけれど、私がケロリと、いや、逆にベッタリしてきたので安堵の息を漏らしていた。

 本当にフェル以上に、何もかもかっこいい人なんていないのに。

「ふぇる~。」

 足をばたつかせながら彼に抱っこを催促する。
 どうやら、自分でも驚く程に甘えん坊になってしまったらしい。
 おまけに独占欲つきの。

 できればずっとくっついていたいくらいだし、彼と抱きしめ合うのは居心地が良くて病みつきになってしまう。

 彼も嫌そうにしたりしないので、了承を得ているようなものだ。

 私が両手を上げてフェルを見つめれば、彼は負けたと降参し、私を一気に抱き上げる。

 大きな体にすっぽりと包まれる私の体。

「ふふ。フェルー。」

 ぎゅっーっと彼の首に腕を巻きつければ、彼は耳を真っ赤にして唸った。

「だからセレーナ。加減を···。」

 フェルがなにかもごもご言っているが、知らん知らん。
 私はこの至福の時間を、たっぷりと堪能するのだった。


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