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恋人編(前編)
第23話
しおりを挟む「ええ?!フェ、フェルってS級冒険者だったの?!」
「ああ。そうだが···言っていなかったか?」
毎日飽きずに彼への一方的(私ばかりがべったりし過ぎ)なスキンシップタイムを繰り広げているセレーナ、十八歳。
仕事が早く終わり家で彼とのラブラブタイムを嬉しさ全開で開始していた私は、サラリと彼が言ったS級冒険者という言葉に驚きの声を上げた。
「え、え?だってS級の依頼ってすっごく難しくて、時間もとってもかかるって聞いた気が···。」
「ああ。確かそうだったな。うん。」
頷きながら、私の言葉を肯定する彼に、鳥肌がぶわっと立つ。
思い返しても彼は数個の依頼を一度に受けてからすぐにギルドに依頼達成報告をしていた気がする。
恋仲になる前も十日に一度はギルドに来ていたし、ボロボロになったり魔物にやられたみたいな痕跡とかも見たことがない。
まさかのフェルってものすごく強い?
またまたフェルの凄さを思い知る。
おおーっと私はフェルの膝の上から感激の拍手を送る。拍手しながらフェルの顔を見上げるも、彼はこちらを見ようともせずに本を読み続けている。
はあ。力を見せびらかさないところも好き。
私は集中して読書をしているフェルをうっとりと見つめた。
*****
「あの、だな。セレーナ。くっつきすぎじゃないか?」
彼が困った顔をしながらそう言う。
「ん?え、嫌なの?フェル。」
うるうると瞳を潤ませ、悲しげな表情を浮かばせながらグイッと彼に迫る。
恋人になってからというもの、ずっとベッタリとくっついている私に、いや、くっつきすぎている私にとうとう彼はヘルプの声を発した。
「いや、嫌ではないんだが···。その、だな···。」
「ふーん。嫌じゃないならいいじゃん。」
真っ赤にしながらボソボソと言う彼に私はニンマリとする。
恐らく、あれだ。
私が沢山くっついてるから、ね。
胸とか当ててるし、ね。
胸····ないけど。
少し悲しくなったがニヤニヤしながら私は彼のあぐらの中に侵入し、だらりと彼のお腹にもたれ掛かった。
はやくはやく。
もうひと息だ。
私は彼からの言葉を今か今かと待つ。
いつもは私からそうゆうことを言うのだからたまにはフェルの方からも聞きたい。
「抑えが、効かなくなるから···。」
額に手を当ててそう呟く彼に私の胸がキュンとする。
はあ。さいこう。
私は高鳴る胸を抑えた。
まあ、今日はこれだけで許してあげよう。
それはそれで十分な破壊力だったから。
「フェル···。」
私は彼と向かい合わせになるように座り、首を傾げて彼を誘う。
ない胸を寄せるも、ないものはないので私の行動は無意味なものだった。寂しい胸に自分自身、すごくガッカリした。もう少し大きければ···。
しかし、彼には効果絶大だったようだ。
「ーーーセレーナ!」
感極まったようにガバッと私を抱き抱え(もちろんお姫様抱っこ)ベッドにそっと下ろすフェル。
触れたりする時はすごく優しい所も大好き。
「ふっへへ。フェル~。」
「ーーはあ。セレーナ、我慢しないからな。」
余裕のなくなってきたフェルは私の額にそっとキスをした。
そこから私達は甘い快楽をお互いに貪りあった。
こんなにも幸せで、
こんなにも求め合っていることが嬉しくて、
けれど、
彼女が来たことで、
私はどん底に落とされることをまだ知らない。
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