この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ

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第6章 聖大樹の下で

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『……兄弟ではなく、ご自身の血で固める、と?』
『そうだ。私の血を引くお前が宰相に、アネットが王妃に、その子がいずれ国王に……そしてその頃には教会の力も王家を上回っているだろう。民は教会の権威なしでは立ちゆかなくなっているだろう。君の妹のおかげで、な。そうなれば、名実ともに我々がこの国のすべてを掌握することになる』

 国王の視線が、セルジュとアネット、二人に注がれる。冷たくもあり、熱くもあり、誰よりも鋭い。

「答えよ、セルジュ・ド・リール。そしてアネット・フェリエ。そなたらの、両親の名を」
「私の母は既に没落した男爵の娘。こちらのアネット嬢の母君は……素性まではわかりませんが、教会の敬虔な信者であったと聞きます。いずれも、故人です」
「では、真の父の名は?」

 セルジュが養子であることは、誰もが知っている。アネットについても、その出自を調べるのは難しいことではない。

 誰もが知っていたが、誰もが知らずにいた存在の名を、ようやく問われている。

 その瞬間を、まるで予期していたように、セルジュはするりと答えた。

「先王陛下の弟君であり、教会の現大司教……グレゴワール=フィリップ・ド・ルクレール様、でございます」

 恭しくそう告げるセルジュを見て、国王は深いため息をついた。だが、アベルの瞳には、力が宿っていた。

 その瞳の色と同じ炎が、燃えたぎっているようだった。

「つまり、大司教は禁忌を犯したということですね」

 セルジュとアネットの二人を、ちらりと視界に納めながらアベルは言う。

「教会に属する修道士は、男女ともに異性との交わりを禁じられている。彼らの人生はすべて神に捧げられたものであるから。その長たる大司教が、子をもうけたということは、何年経とうと許される行いではない……そうではありませんか、陛下」

 国王もまた、ちらりとセルジュとアネットを見やりながら、深く息を吐き出した。

 大司教の行いは、教会において許されざる行いだ。だがそれを『禁忌』だと言えば、セルジュとアネットは忌まわしい血筋だということになる。

 アベルも国王も、それを慮っていた。

 だが、セルジュは頷いて見せた。

 他ならぬセルジュ自身が、その事実を掴ませたのだと、悟った。

「グレゴワール殿下から大司教の位を剥奪するよう訴える。今すぐに身柄を拘束せよ」
「はっ、仰せのままに」

 真っ先にリール公爵が答えた。それに続いて、重臣達も同じく答え、動き出した。それぞれの兵を、動員する。

 アベルは、そっと国王と視線を交わした。静かに、頷いてみせるのが見えた。

 ようやく、アベルを……エルネストを、救ってくれた。そう、感じたのだった。

 重臣達が一斉に動き出し、議場は慌ただしい空気に包まれ出した。背後で、レオナ―ルたちも息をついているのがわかる。

 ようやく、すべてが終わる。そう思った、その時――

 ドォォォォン!!

――と、大きな破砕音が響いた。

 その場にいたものは皆、窓辺に近づいた。窓の外から聞こえたその音の正体は、すぐに判明した。

 教会の、それも大聖堂と続いている建物の屋根が破壊されていた。

「あそこは……レティシア様がいたお部屋だ……!」

 アベルの背後から、アランが悲鳴に近い声を上げる。

「何だと!?」
「シア!?」

 リール公爵とセルジュが揃って息をのむ中、何も言わずに走り出した者がいた。

 掛けられた声も、引きためようとする手も、何もかも振り払って、アベルは持てる力の全てで走り出した。 
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