転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
95 / 104

95.花子の“本への情熱”が勝利の鍵

しおりを挟む

 ブラウンは、ゆっくりと会場を見渡しながら言った。

「このままでは、後継者争いは泥沼になる。  
 だから、俺から提案がある」

 全員の視線が、ブラウンに集まる。

「“本人の力”を証明するための、最終試練を設けよう。  
 代理戦ではなく、本人同士による実技試験だ」

 アマイが眉をひそめた。

「……どんな試験ですの?」

 ブラウンは、にやりと笑った。

「王宮前の大通り、今も帰りの馬車で大渋滞してるだろう?  
 その渋滞の中を、まっすぐ“白の宮殿”まで――  
 馬車を浮かせて、先に到着した者が勝者ってのは、どうだ?」

 会場がざわつく。

「もちろん、ただの競争じゃない。  
 魔力の制御、持続力、判断力、すべてが試される。  
 後継者にふさわしいのは、そういう力を持つ者だ」

 そして、ブラウンは王の方を向き、静かに頭を下げた。
「もし、この試合で花子が負けた場合――  
 今、王より宣言いただいた“白の宮殿”の継承権を、ルービック家としてお返しいたします」

 広間が一瞬、静まり返った。

 その重みを理解した貴族たちがざわつき始める。

(これは……王家の顔を立てつつ、ルービック家|の正統性を守る絶妙な一手……)

 王は内心、冷や汗を流していた。
(……これ以上、ルービック家に難癖をつけるのは無理だ)

「……よかろう。その提案、受け入れよう。  
 今より、“白の宮殿”への帰路をもって、後継者の座を決する」

 こうして、即座に試験が開始された。

 王宮前の大通りは、予想通りの大渋滞。  
 来賓の馬車が列をなし、道は完全に詰まっていた。

 花子が馬車に乗り込もうとしたそのとき、ブラウンがそっと耳元で囁いた。

「就任式の祝いに、“白の宮殿”の図書館に、  
 今までお前が読んだことのないような本を送っておいたよ。  
 それと、フレッド君は“魔法図書館の館長の血筋”だから――  
 金書庫にも入れるよ」

「……えっ、マジで?」

 花子はなこの目が一気に輝いた。
「よし、行くよフレッド! 本が私を呼んでる!!」

「はい、花子はなこ様」

 次の瞬間、花子はなこの魔力が一気に解き放たれた。

 渋滞していた馬車の列が、ふわりと浮かび上がる。  
 まるで風に舞う落ち葉のように、軽やかに、優雅に――

 その中を、  
 花子はなことフレッド、マリア、セバスが同乗する馬車が先頭を駆ける。  
 御者台には、護衛としてムツキとキサラギが並び立ち、鋭い眼差しで周囲を見張っていた。

 その後ろには、笑みを浮かべるブラウンの馬車、  
 さらに、うなだれた表情のブランが乗る馬車が続く。

 三台の馬車は、空を滑るように一直線に“白の宮殿”へと駆け抜けていった。

 その光景に、王宮の兵士たちは口をぽかんと開け、  
 貴族たちは言葉を失った。

 一方その頃――

「う、浮けっ……! 浮きなさいったら……!」
 アマイは、額に汗をにじませながら、必死に魔力を注いでいた。

 ようやく、目の前の馬車が数十センチほど浮き上がる。

「やった……! わたくしにもでき――」
 その瞬間、馬車はガタンと音を立てて地面に戻った。

 アマイが顔を上げたときには、花子の馬車はすでに見えなくなっていた。
「……う、うそ……」

 風だけが、静かにアマイの頬をなでていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...