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95.花子の“本への情熱”が勝利の鍵
しおりを挟むブラウンは、ゆっくりと会場を見渡しながら言った。
「このままでは、後継者争いは泥沼になる。
だから、俺から提案がある」
全員の視線が、ブラウンに集まる。
「“本人の力”を証明するための、最終試練を設けよう。
代理戦ではなく、本人同士による実技試験だ」
アマイが眉をひそめた。
「……どんな試験ですの?」
ブラウンは、にやりと笑った。
「王宮前の大通り、今も帰りの馬車で大渋滞してるだろう?
その渋滞の中を、まっすぐ“白の宮殿”まで――
馬車を浮かせて、先に到着した者が勝者ってのは、どうだ?」
会場がざわつく。
「もちろん、ただの競争じゃない。
魔力の制御、持続力、判断力、すべてが試される。
後継者にふさわしいのは、そういう力を持つ者だ」
そして、ブラウンは王の方を向き、静かに頭を下げた。
「もし、この試合で花子が負けた場合――
今、王より宣言いただいた“白の宮殿”の継承権を、ルービック家としてお返しいたします」
広間が一瞬、静まり返った。
その重みを理解した貴族たちがざわつき始める。
(これは……王家の顔を立てつつ、ルービック家|の正統性を守る絶妙な一手……)
王は内心、冷や汗を流していた。
(……これ以上、ルービック家に難癖をつけるのは無理だ)
「……よかろう。その提案、受け入れよう。
今より、“白の宮殿”への帰路をもって、後継者の座を決する」
こうして、即座に試験が開始された。
王宮前の大通りは、予想通りの大渋滞。
来賓の馬車が列をなし、道は完全に詰まっていた。
花子が馬車に乗り込もうとしたそのとき、ブラウンがそっと耳元で囁いた。
「就任式の祝いに、“白の宮殿”の図書館に、
今までお前が読んだことのないような本を送っておいたよ。
それと、フレッド君は“魔法図書館の館長の血筋”だから――
金書庫にも入れるよ」
「……えっ、マジで?」
花子の目が一気に輝いた。
「よし、行くよフレッド! 本が私を呼んでる!!」
「はい、花子様」
次の瞬間、花子の魔力が一気に解き放たれた。
渋滞していた馬車の列が、ふわりと浮かび上がる。
まるで風に舞う落ち葉のように、軽やかに、優雅に――
その中を、
花子とフレッド、マリア、セバスが同乗する馬車が先頭を駆ける。
御者台には、護衛としてムツキとキサラギが並び立ち、鋭い眼差しで周囲を見張っていた。
その後ろには、笑みを浮かべるブラウンの馬車、
さらに、うなだれた表情のブランが乗る馬車が続く。
三台の馬車は、空を滑るように一直線に“白の宮殿”へと駆け抜けていった。
その光景に、王宮の兵士たちは口をぽかんと開け、
貴族たちは言葉を失った。
一方その頃――
「う、浮けっ……! 浮きなさいったら……!」
アマイは、額に汗をにじませながら、必死に魔力を注いでいた。
ようやく、目の前の馬車が数十センチほど浮き上がる。
「やった……! わたくしにもでき――」
その瞬間、馬車はガタンと音を立てて地面に戻った。
アマイが顔を上げたときには、花子の馬車はすでに見えなくなっていた。
「……う、うそ……」
風だけが、静かにアマイの頬をなでていった。
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