転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

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97.人物鑑定

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 沈黙を破ったのは、ブラウンだった。
花子はなこ。ちょっと、いいか?」

「はい?」

「アマイのこと、どうしたい?」

 花子はなこは一瞬、目を瞬かせた。
「……うーん、難しいけど……その前に、ひとつ聞いてもいい?」

「なんだい?」

お父さんブランの子どもって、私以外に誰かいるの?」

 その問いに、ブランの肩がピクリと震えた。

 ブラウン異母兄は静かに頷いた。
「ああ。二人いる」

「えっ、二人も!?」

「一人はリリアン。キンソン家の次女だ。  
 もう一人はカイト。南条家にいる。……それと、今回のアマイ、だな」

 花子はなこは目を丸くした。

「じゃあ、なんでその二人は後継者じゃないの?」

「二人とも、花子はなこほど魔力量は高くない。  
 でも、一般よりはずっと高いから、それぞれの家の当主が“自分の家の子”として認めてる。  
 だから、ルービック家の後継者としては考えられていない」

「……じゃあ、アマイは? なんでキンソン家に認められてないの?」

 その問いに答えたのは、セバスだった。
「理由は、彼女の母親――アンナ様にございます」

「アンナ……?」

「はい。アンナ様は、王家とキンソン家の血を引く方。  
 ですが、魔力量はあまり高くなく、アマイ様もまた、ブラウン様ほどの魔力はお持ちではありません。  
 そして何より、彼女はキンソン家に“認知”されていないのです。それが、すべての理由です」

 花子はなこは、静かに息を吐いた。
「……なんか、魔力の高さで“家族”が決まるのって、変な話だね」

 ブラウンは少しだけ目を細めた。
「そうだな。でも、それが“家”ってやつなんだよ。  
 だからこそ、俺たちは選ばなきゃいけない。誰を守るのか、誰を受け入れるのかを」

 花子はなこは、ふと視線を落とし、父の手に握られた和紙を見つめた。
「……じゃあ、私が選んでもいいの?」

「もちろん。お前は、ルービック家の、“白の宮殿”の当主なのだから」

 そのとき、マリアが静かに口を開いた。
「でも――このルービック家が、彼女を迎え入れることは**決してないわ**」

 その言葉は、冷たくも、揺るぎない決断だった。

 ブランは、和紙を握りしめたまま、なおも動けずにいた。

 花子はなこは盛大にため息をつくと、全員を見回しながら、アマイを最後に見た時のことを思い出していた。

 ――王宮の会場では、魔法の使用に制限があるとセバスに注意されていたため、何もしなかった。  
 だが、宮殿を出て馬車に乗り込む直前、花子はなこはアマイに向けて“人物鑑定”をかけていたのだ。

「まず、信じるか信じないかは別として……アマイは、実父さんブランの子どもじゃないわ」
 その場の空気が凍りついた。

花子はなこ様。その根拠はなんでしょうか?」
 セバスが、花子はなこの前にコーヒーを置きながら静かに問いかける。

「王宮では魔法が制限されてるって言われたから、外に出たあと、  
 馬車を浮かせようとしてるアマイに、私、人物鑑定をかけたの」

 こともなげに放たれた爆弾発言に、全員が息をのんだ。

花子はなこは……人物鑑定ができるのかい?」
 ブラウンが信じられないという顔で聞き返す。

「自分より魔力量が少ない人にならできるって、セバスに聞いたんだけど……違うの?」

「いえ、間違っていません。さすが花子はなこ様です」

 セバスはご満悦に頷き、傍らに控えていたアインに目線で指示を送った。  
 アインは静かに頷き、すぐに動き出す。

「血筋でいうなら、アマイはこの家を継ぐことはできないわ。  
 それに、キンソン家も半分は気づいてたんじゃないかな。  
 だからこそ、彼女を公にしなかったんだと思う」

「確かに、それなら納得がいく動きですね。さすが花子はなこ様です」

 アインがうんうんと頷く。

「さすが僕の妹だな」
 ブラウンがコーヒーを一口飲みながら、満足げに微笑んだ。

「さすが私の孫ね。これですっきりしたわ」
 マリアもようやくコーヒーを口にし、満足そうに頷いた。

 そのとき、ブラウンが懐から小さな鍵を取り出し、花子はなこに手渡した。
「これを“白の宮殿”の図書館に行ったときに使ってごらん。  
 もっと楽しい本に出会えるよ。これは、ルービック家の当主から、  
 “白の宮殿”の当主への贈り物だ」

「ありがとう、ブラウン兄さん!」

 花子はなこは飛びつかんばかりにお礼を言い、すぐにでも本を読みに行こうとした。  
 だが、部屋の片隅で石像と化している父・ブランに気づく。

 マリアが「自業自得だから放っておきなさい」という視線を送ってくる。  

 花子はなこは一瞬だけ逡巡したが、ふと独り言のように呟いた。
「……母さんが“実家に帰る”って書いたのは、  
 自分の産んだ子に危害が加わらないように、早く戻りますっていう伝言よ」

 その言葉に、ブランがピクリと動いた。  
 そして、花子はなこの顔を見つめる。――“それは本当か?”と問うような目で。

「すぐに母さんの後を追った方がいいよ」

 ブランは涙目で頷くと、和紙を握りしめたまま、居間から駆け出していった。

 その後を追おうとしていたアインに、花子が声をかける。

「アイン。アンナの護衛をしていたムスケルって男を調べて。  
 たぶん、彼がアマイの本当の父親よ」

「畏まりました」
 アインは一礼し、ブランの後を追って姿を消した。

花子はなこさん、今日は思う存分、読書を堪能することを許可します」
 マリアの言葉に、花子はなこは目を輝かせた。

「ありがとございますっ!」

 そう叫ぶと、花子はなこはひゃっほー!と声を上げて、  
 嬉々として“白の宮殿”の書庫へと駆け出していった。
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