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しゃもん

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79.魔法図書館と裸婦画

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 **翌朝。**

 早めに朝食を終えた花子はなこは、  
 気がつけばフレッドを伴って魔法図書館へ向かう小道を歩いていた。

(……あれ、なんでフレッドと一緒にいるんだっけ)

 朝食後、春画の件もあるし本当は一人で行きたかったのに、  
 魔法図書館への入り方がよくわからず、  
 ムツキかキサラギに頼もうとしたら――

 **いなかった。**

 食べ終えた瞬間、二人はどこかへ消えていた。

 そして目の前には、  
「早く行きたい」という希望を叶えるべく、  
 入館用の書類を手にしたフレッドが、  
 用意周到に待機していた。

(……あなたとは行きたくない、なんて言えるわけないじゃない)

 結局、先導される形で歩くことになり、  
 花子はなこは後悔しながらも後に続いた。

 “白の宮殿”からすぐ近くの大通りを歩き、  
 一本左に曲がった先の行き止まりで、  
 フレッドが白い用紙を壁に貼り付けると――

 **スゥ……**

 淡い光とともに、重厚な扉が現れた。

「どうぞ、花子はなこ様」

「ありがとう……」

 扉をくぐると、そこは見慣れた魔法図書館とはまるで違う空間だった。

 毛足の長い高級な絨毯。  
 金箔で彩られた本の背表紙が壁一面に輝いている。

「すっごい……」

 思わず呟いたその瞬間、  
 部屋の中央に音もなく現れたのは――

 フレッドの祖父であり、魔法図書館の館長であるミート館長が、  
 輝く笑顔で花子はなこを迎えた。

「ようこそ、花子はなこ様。  
 今回は大量の本のご寄付、誠にありがとうございます」

「えっと……どういたしまして?」

 戸惑いながらも返事をすると、  
 ミート館長は嬉しそうに、  
 部屋の中央に置かれた重厚なガラスケースを指差した。

「さあ、こちらをぜひとも、ぜひともご覧ください!」

 その勢いに押されるように、  
 花子はなこはガラスケースの中を覗き込んだ――

 **その瞬間、時が止まった。**

 こっ・・・こっ・・・こっ・・・こっ・・・これって、おばあ様が寄付したって言ってた春画。

 ひょえーな・・・な・・・なんと大量にあるの。

 ミート館長は、飾られたガラスケースの中の絵を  
 一つひとつ丁寧に指差しながら、  
 その歴史的価値や芸術性について熱弁をふるっていた。

(いや、そういうことじゃないのよ……)

 花子はなこが気にしているのは、  
 寄付の有無ではなく――

 **「自分の名前が、堂々と表示されていること」**だった。

 だが、ミート館長にはその懸念はまったく伝わっていないようで、  
「この絵は非常に貴重でしてね!」と、  
 ますます熱を帯びていく。

(お願いだから、名前だけは伏せてって言いたい……)

 そう思って口を開きかけたその瞬間――

「まあ、いろいろとご説明しましたが、  
 魔法図書館としてはこの寄付に対する謝礼として、  
 この“黄金のカギ”を花子はなこ様に進呈しようという話になりまして」

「……黄金のカギ?」

「はい。“黄金のカギ”の特徴といえば、  
 代表的なものは“本の永久貸出カード”と、  
 “希少本や禁書本の閲覧”ですね」

「……永久貸出カード!?  
 それって、ずっと本を借りてても返さなくていいってことですか!?」

 急に目を輝かせた花子はなこに、  
 ミート館長は少し訝しみながらも、丁寧に説明を続けた。

「“永久”とはいえ、貸出はあくまで花子はなこ様に限られます。  
 持ち主が亡くなった場合は、その時点で自動返却されます。  
 また、魔法図書館にしか存在しない原本や禁書は、  
 貸出ではなく“閲覧のみ”となります」

「でも、閲覧はできるんですよね?」

「はい、もちろんです」

(な……なんて素敵な言葉……)

(つまり……この図書館にある本、全部――)

 **読み放題。**

 **読み放題!!**

「うっふふ……ぐふっ……」

花子はなこ……いや、ご主人様? 大丈夫ですか?」

 急に様子が変わった花子はなこに、  
 フレッドがあたふたと声をかける。

 だが、花子の思考はすでに“読み放題”の響きに完全に崩壊していた。

 ミート館長に促されるまま、寄付の書類にサインを済ませると、  
 その場で“黄金のカギ”を受け取り――

 **即、行動開始。**

 館長室を飛び出し、隣の大図書室へと突入。

 “黄金のカギ”は、花子が本に触れるだけで自動登録され、  
 選んだ本はそのまま彼女の部屋へと転送されていく。

 しかも、読み終えた本は自動で返却されるという、  
 夢のようなシステム。

(なんて……なんて素晴らしいの……!)

 花子はなこは、思いつく限りの本を次々と選び、  
 目を輝かせながら図書館を後にした。


 心はすでに、机の上に積み上がった本の山へと飛んでいた。


 もっとも――


 このあと、“花子はなこ寄贈による春画展”と銘打たれた  
 **招待状**がミート館長から届き、  
「何やってるの私……」と青ざめるのは、  
 本を読み漁って満足しきった後のことだった。
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