転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

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80.後悔先に立たず

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 花子はなこは、  
 実父ブランに誂えてもらった晴れ着を身にまとい、  
 魔法図書館の前で“テープカット”ならぬ  
 魔道具に魔力を通す開場式のため、最前列に立っていた。

 隣には、さっきまで満面の笑みを浮かべていた実父ブランがいた――

 が。

 病院から「実母ははが産気づいた」と連絡が入り、  
 実父ブランはあっさりと彼女を見捨て――いや、見送り、  
 そのまま病院へと向かってしまった。

(さっきまで「僕がいるから大丈夫だよ」って言ってたの、  
 あれ、嘘だったんかい)

 心の中で、思いっきりツッコミを入れる。

 実父ブランが立っていた空間を見つめながら、  
 花子はなこはぽつりと呟いた。

「やっぱり……この間、実母ははから告白されたこと、  
 現実だったんだ……」

(それにしても、なんで今日はこんなに羞恥を突き刺してくるの!?)

 さっきも、病院からの連絡を受けた実父ブランが  
 動揺してその内容を**大声で復唱**したせいで――

 今も周囲では、  
花子はなこ様、この年齢で弟ができたらしいわよ。」  
 というヒソヒソ声が飛び交っている。

(なんであの瞬間、私は魔法で父を消し炭にしなかったのか……)

(いや、私的には春画展の寄贈主にされたことも十分恥ずかしかったけど、  
 それ以上に“弟ができた”って周囲に知られる方が恥ずかしいって、  
 自覚してたはずなのに……)

(あの時、「予定日はまだ先だから僕も一緒に出るよ」って言われて、  
 なんで頷いたんだ自分……)

 思い返せば、数日前――

 久しぶりに戻ってきた実母ははに  
「ちょっとお知らせがあるの」と言われ、  
 年甲斐もなく首をかしげて箸を置いたら――

「あなた、今度お姉さんになるのよ。」

 唖然とする花子に、  
 実母ははは頬を赤らめながらこう続けた。

「神社の跡取りが必要だから、  
 亡くなったおばあ様に“がんばれ”って言われて……  
 実父ブランが張り切っちゃったのよ。」

(……いたたまれなさすぎて、何も言えなかった)

 そんな状況の中、  
 **“春画展開催の招待状”**が、寄贈主である花子のもとに届いた。

 すっかり忘れていたその存在に、  
 どうすればいいかわからずにいる間に――

「さすが花子はなこだね!」と舞い上がった実父ブランが  
 お祝いだと着物を贈り、  
 気を利かせたセバスが招待状に“出席”の返事を書き――

 気づけば、会場の**最前列**に立っていた。

 春画はこの国では芸術的価値があり、  
 高級品として扱われている。

 寄贈主として、花子は一躍“有名人”になってしまったようだった。

 だが――

(前世の知識がある私にとっては、  
 これはもう羞恥の極みなんですけど!?)

 いくら「ここは前世とは違う」と思い込もうとしても、  
 羞恥心はどうしても消えなかった。

 それでも、なんとか気力を奮い立たせ、  
 公爵夫妻と異母兄ブラウンとともに、  
 魔力を通して展示会場の扉を開く。

 扉が開くと、待ち構えていた人々がざわざわと話しながら中へ入っていった。

 花子はなこは、  
 異母兄ブラウンと、  
 つい最近“婚約者候補”になったフレッドに支えられながら、  
 笑顔を向けてその場に立ち続けた。

「ご心配でしょうが、あの病院はこの国一番の医療機関ですから。  
 大丈夫ですよ。」

 フレッドが小声で気遣ってくれたが――

(いや、あのしぶとい実母ははを  
 今さら心配する気はないんだけど)

 むしろ心配なのは、**自分の立場**だ。

 意識しなくても、  
 会場に入ってくる人々の視線が自然と花子に集まり、  
 会釈しながら何やらささやき合って通り過ぎていく。

 聞こえる限りでは否定的な言葉はない。  
 けれど――

(絶対、父の件と春画のこと、両方話してる……)

 展示されている春画は、  
 芸術的価値があるとはいえ――

 **前世で言えば18禁も真っ青な描写**のものが、  
 所狭しと並んでいる。

「はあぁー……」

 ため息ばかりが出てしまう。

(もう今日はこのまま帰れないかなぁ……)

 花子はなこの心は、  
 すでに“自分の部屋”へと逃げ出していた。
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