転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
7 / 104

07.魔法の授業

しおりを挟む

 うーん。  
 花子はなこは、カーテンのない窓から差し込む朝日で目を覚ました。

 ――そうだった。今日から、ここが私の生活する部屋になるんだった。

 昨日用意しておいた制服に着替え、パンを焼いて朝食を作る。  
 食べ終わったあと、残った具材でサンドイッチを作り、それを紙で包んで、今日から護衛についてくれる二人にお礼がてら魔法で転送した。

 いきなり目の前に現れた料理に、ゴクリと喉を鳴らす二人。

「それ、すぐに食べられるようにしてあるから。」

 花子はなこは、二人が食べている間に夕食の仕込みを済ませ、食べ終わったであろう頃合いを見て声をかけ、高校の教室へと向かった。

 教室は一般寮からは少し離れていたが、特に遠いわけでもなく、すぐに到着した。

 玄関に張り出されている紙を見て、特別クラスの教室へ向かう。  
 この高校に受かった一般人は花子はなこだけであり、なおかつ魔法特待生ということで、彼女はかなり目立っていた。

 ――そんなこととはまったく知らず、花子はなこは悠々と特待生の教室に入り、決められた席に座った。

 周囲の生徒たちから、ジロジロとした視線が飛んでいたが、本人はまったく気づいていない。  
 のんびりと席に座り、憧れの魔法の授業が始まるのを待っていた。

 しばらくすると、ガヤガヤとした騒ぎが起き、花子はなこの後ろに数人の生徒が集まってきた。  
 彼女は人が集まってきたことには気づいたが、なぜ自分の周囲に来たのかは分からなかった。

「ちょっと、そこの庶民。」

 豪華な洋服に身を包んだ少女が、花子はなこの肩に手を置いた。  
 さすがに肩に手を置かれた花子はなこはギョッとして相手を見た。

 二人が口を開こうとしたその時――リーンゴーンという鐘の音が鳴り、教室に魔法科の先生が入ってきた。

 先生は、肩に手を置いていた少女に目を向け、席に着くよう促す。  
 少女は仕方なく、花子はなこの後ろの席に座った。

「では、今後魔法科で行う授業内容について説明します。」

 先生はその後、延々と授業の説明を続け、疲れた表情の生徒たちを残して教室を後にした。

 花子はなこは配られた授業内容の書類を一読して、ため息をついた。

 ――何、この簡単な授業内容は。

 あまりに簡単すぎて、目が虚ろになる。

 書類をカバンにしまおうとしたその時、  
 後ろの席から、また朝のように肩に手を置こうとしていた少女の動きを察知し、  
 花子はなこはそれをひらりと交わすと、隠匿魔法を駆使して教室を抜け出し、自分の寮へと戻った。

 カバンを布団に投げると、そのままダイブして仰向けになり、天井を見つめる。

 ――うそでしょ。  
 仮にも高校なのに、何あの簡単な内容は?  
 どうしよう。あと三年もあの授業を受けるとか、拷問なんだけど。  
 今さら大学に行きたいって言い出しにくいしなぁ……どうしたら……。

 天井を睨んだまま微動だにしない花子はなこを気遣って、少し荒い息をしながら護衛が心配そうに声をかけてきた。

「あのー、花子はなこ様。どうされました?」

「ああ、うん。実は今日、学校のカリキュラムを確認したんだけど、あまりにも簡単だったの。  
 それで、入ったばかりだけど、もっと上の学年の授業を受けたいなって思って。」

「まあ、それなら飛び級試験が魔法科にはあるはずですよ。」

「飛び級試験!」

 花子はなこはベッドからガバッと起き上がり、学校から持ち帰った資料に目を通した。  
 そこには、学校が用意した飛び級試験に合格すれば、上の学年に進級できると書かれていた。

 ――これって、どうすれば受けられるのかしら。

 よく読むと、申し込み方法と受験の流れが記されていた。

 思わず棚の上に置かれていた時計を見る。  
 ――まだ間に合う!

 花子はなこはカバンから、今日の説明会で配られた銀色のカードを取り出し、  
 それを学校にいる先生のもとへ届けようとしたが、護衛たちに止められた。

花子はなこ様。それなら、私が届けてまいります。」

「えっ、でも……」

「そこには“本人が届けろ”とは書かれていませんよね?」

 花子はなこは手元の書類に目を通した。  
 確かに、本人が届ける必要があるとは書かれていなかった。

「では、行ってまいります。」

 花子はなこの返事を聞く前に、護衛はカードを持って姿を消した。

 ――助かるけど、申し訳ないわね。

 そう思いながら、花子はなこは厨房へ向かった。  
 彼女のために、少し手の込んだ料理を作り、戻ってきたら食べてもらえるように伝言を残すと、ベッドへ向かった。

 ――明日は授業サボって、図書館にでも行こう。  
 一週間後には試験を受けて、一階級上の魔法科に進んで、それを三回繰り返せば――  
 計算上は、一か月で大学に入れる。

 それで大学に入ることが決まったら、御父様たちに知らせて――

 いろいろありすぎて疲れた花子はなこの意識は、そこで途切れた。

 一方、無事に飛び級試験の申し込みを終えて戻ってきた護衛には、  
 この世のものとは思えないご馳走が待っていた。


 ――ちょっ……ちょっとナニコレ。  
 う……うまい……。

 横目で羨ましそうに見つめる同僚を無視し、今日の用事を済ませた護衛は、至福に浸った。

 **見てなさい。次回の花子はなこ様の用事は、私がもらうわ。**

 それは、護衛たちの間で――  
 **「花子はなこ様の御用聞き」が密かに人気の任務となった瞬間だった。**

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...