転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

文字の大きさ
16 / 104

16.母が生きていた!

しおりを挟む

 花子はなこが自宅待機となった翌々日。  
 実父であるブランが、突然訪ねてきた。

 目を丸くする花子はなこに容赦なく迫ると、ブランは娘をギュッと抱きしめた。

「あのー、ブ……お父様?」

 実父であることは理解しているが、なんとも現実味がなく、つい名前で呼びそうになった。  
 すると、抱きしめていた腕に力がこもったため、慌てて「お父様」と呼ぶと、満面の笑みを浮かべてようやく解放してくれた。

「なんだい、花子はなこ。」

 ブランの笑顔に硬直している花子はなこを見かねて、護衛の一人が気を利かせてお茶を淹れ、さっき彼女が作ったお菓子を出してくれた。

「ブラン様。こちらは先ほど花子はなこ様がお作りになられたクッキーです。」

花子はなこが作ったクッキーだって!」

 ブランは大喜びでそれを口に運び、感極まって涙を流しながらクッキーを食べ始めた。  
 その様子に花子はなこは思わず引いたが、抱きしめられるよりはマシだと判断し、  
「また作りましょうか?」と口にしてしまい、さらに大声で泣かれる羽目になった。


 しばらく泣いた後、ブランは懐から一枚の書類を取り出し、花子はなこに差し出した。

 疑問顔で目を通した花子はなこは、そこに記された“信子のぶこの治療代”という文字と、信じられない金額に目を見開いた。

 ――何これ。  
 何なのこの金額。新手の詐欺?

「これは何かの偽装書類じゃないですか?」

 思わず強く否定すると、ブランからとんでもない発言が飛び出した。

信子のぶこなら、生きているよ。」

「……母が、生きている?」

 そんなはずはない。  
 花子はなこは神殿で、確かに母の死を確認したはずだ。

信子のぶこはね、花子はなこ。魔法無効化属性を持っているんだ。」

「魔法無効化属性!?」

「そう。だから、魔法が効かないんだよ。」

 ――我が母ながら、なんて無茶苦茶な人なんだ。  
 そんな属性、初めて聞いたよ。

 でも、だからこそ調査魔法を使っても生存反応が出なかったのか……。

 ――ちょっと待ってよ。  
 ってことは、この書類に書かれてる金額、私が支払うってこと!?

 真っ青になっている花子はなこに気づいたブランが、また抱きしめてきた。

「何を心配してるか、だいたい想像はつくけど……大丈夫だよ。  
 花子はなこがこの書類にサインしてくれれば、ここに書かれている金額を君が払う必要はなくなる。」

 そう言って、ブランは別の書類を差し出した。

 それは、花子はなこが正式にブランの娘として“ルービック”の姓を名乗るための承諾書だった。

 花子はなこは思わずブランを睨みつけた。

 ――この人、私がもうルービック家の人間だと思わせてたじゃない。  
 勘違いした私も悪いけど、なんだか納得いかない。

 とはいえ、この書類にサインしなければ、あの天文学的な治療費を自分が支払うことになる。

 花子はなこは、ブランからペンを受け取ると、サラサラとサインした。

「よかった……これで、晴れて君は僕の娘になった。」

 ブランは嬉しそうに書類に魔力を込めると、すぐに魔法便で提出した。

 そして、感極まった顔で花子はなこに近づき、また抱きしめてきた。

 抱きしめられながら、花子はなこの頭の中には――  
 母もまた、あの天文学的な治療費の書類を見せられ、サインして、  
 すぐさま魔法便で送られたであろう光景が、鮮明に浮かんでいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

処理中です...