拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶

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7「チュートリアル3」

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なんて事を話しているうちにドリンクコーナーに着いたので、俺はオレンジジュースを、友広はリンゴジュースを取り、とりとめもない事を話していると

「「「「キャ~ッ!」」」」

どこからか入学式の時に聞いたような黄色い歓声が聞こえてきた。
声のした方を見れば、少し離れたところで背の高い赤い髪の男子生徒とこれまた周囲より頭一つ分抜き出た緑色の髪をした男子生徒を取り囲むように人混みが出来ていた。

…入学式の時も思ったが、ここって男子校だよな?

「なあ、友広」
「ん?何だ?」
「あそこの赤い髪の人って確か生徒会長だよな?」
「ああ、燈堂とうどう先輩な。それがどうかしたのか?」
「いや…あっちの緑色の髪の人は?」
「あれは…野分のわき先輩だな。風紀委員長だよ」
「へぇ…」

なるほど。というか、改めて思ったがやっぱり友広は『お助けキャラ』なんだな。聞けば情報がすいすい出てくるから正直助かる。

…ん?待てよ?確かゲームのチュートリアルでは、青髪青眼の上級生、黄髪黄眼の同級生と続いて、次は緑髪緑眼と赤髪赤眼の上級生が登場したはず。

「な、なぁ椿」

という事は…順番的に考えて、もしかしてあの二人がそうなのか?

「なぁって!」
「?   なん──」
「少しいいだろうか、石留いしどめ君」

突然バシバシと友広に肩を叩かれ、思案にうつむかせていた顔を上げると、いつの間にか目の前に野分のわき先輩が立っていた。びっくりした。

「御友人との歓談中にすまない。私は野分のわき正宗まさむね。三年で、風紀委員長をしている。宜しく」

差し出された手を握り返しながら、改めて目の前に立つ野分先輩を見やる。背高いなぁ。

今世の俺の身長は(ギリギリ)170後半だが、野分先輩はそれ以上だ。
しかも、仏頂面のせいか威圧感が半端はんぱない。眼鏡の奥で鋭い眼光を放っている緑眼も相まって、余計にそうに感じる。

「実は、君に折り入って話したい事がある」
「話…ですか?」
「ああ。単刀直入に言わせて貰おう。風紀委員会に入る気はないだろうか」
「え…」

風紀委員会?

「無論、無理強むりじいする気はない。だが、もし少しでも興味があるのなら───」
「なーにが『無理強いする気はない』だ。この俺様を差し置いて説得する気満々だったくせに、よく言う」
「…貴様こそ、私がまだ話しているだろうが。邪魔をするな、燈堂とうどう

野分先輩の背後から話に割って入ってきたのは、先程まで男子生徒たちに囲まれていたはずのあの赤髪赤眼の生徒会長で。
ギロリと睨む野分先輩の鋭い視線など意に介さず、生徒会長は野分先輩の隣に立つと俺の全身を舐めるように視線を這わせてきた。

「…へえ、見事な『黒』だな。さすが全属性持ちだ」
「…どうも」

その視線はまるで値踏みされているようで不快そのものだったが、そう感じている事を顔に出さないように頑張って愛想笑いを浮かべた。
攻略対象かもしれない相手に、ここで言い返すなど大きなリアクションをして目をつけられては元も子もないからな。

「おい、石留椿」
「…何ですか」

何でいきなりフルネーム呼びなんだよ。と思わなくもなかったが、寸でのところで額に怒りマークが浮かびそうになったのを我慢する。あっぶね。もう少しでお愛想笑いが崩れる所だった。

「喜べ。この俺様が直々に生徒会に勧誘してやろう」

………は?何言ってんだこいつ。ていうか、初対面なのに名乗っていない上に『喜べ』とかどういう神経してんだ?

という心の声が顔に出ていたのかどうか分からないが、野分先輩がため息を吐きながら口を開いた。

「はぁ、貴様は相変わらず不遜だな。そもそも、初対面の相手に名乗りもしないとはどういう了見だ。礼を欠くにも程があるぞ」

か、神よ…!野分先輩に後光が差して見える!…ん?後光は仏に差すんだっけ?まぁ、この際どっちでもいいか。兎に角今は野分先輩の存在ががたいという事だ!

「は、この俺様を知らぬはずがないだろう。なぁ?石留椿」
「いえ、存じ上げませんね」

苛立ったので、これ幸いと嫌味も込めてキッパリと言い放つ。すると、

「なん、だと…!?」

それまで自信に溢れていた態度だった生徒会長の顔がガーン!と効果音が付きそうなくらいショックを受けたような面持ちになる。

「ほ、本当に俺様を知らないのか?この燈堂とうどう恭介きょうすけ様を?」
「ええ、全く」

これっぽっちも。

追い討ちをかけるようににっこりと笑ってそう言うと、生徒会長はふらりとよろけ、よろよろとした足取りでその場を去って行ったのだった。

これは…勝ったと思っていいのか?…ん?そもそも何と勝負してたんだっけか…まあ、いいか。どうでも。

「…凄いな、きみ
「え?」
「あの燈堂を撃退するとは…いや大したものだ。是非とも風紀委員会うちにきて欲しい」
「え、いや、それは…」
「分かっている。先程も言った通り、無理強いはしない。だが、もし興味があるのならいつでも声をかけてくれ。君なら大歓迎だ」

そう言うと「それでは」と野分先輩は颯爽と立ち去っていったのだった。
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