【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

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2.一句詠まなきゃ帰れない

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「……で、これから毎月“感謝の一句”を捧げなきゃいけないのか?」

 手紙を読み終えた俺は、うなだれながら聞いた。
 俳句なんて、授業中に遊びで詠んだ「魔法で燃えた図書室」しか記憶にない。

「まさか人生で“俳句が通行証”になる日が来るとは……」

 隣で静かに馬車を揺られていたカイルが、ふと一言つぶやいた。

「お前、詠んでみろ。試しに」

「……は?」

「ほら。感謝の気持ちを五・七・五で」

「……いや、そこだけ急に俳句講師になるなよ」

「大臣よ、その怒りこそ、燃料だ」

「褒めてないな、それ」

「じゃあお前も詠んでみろよ、護衛兼監視役さん?」

 無茶振り気味に言ってみたが、カイルは数秒だけ目を閉じ静かに詠んだ。



カイルの一句
「王子様、追放されても、平常運転」

「ちょっと待て、さりげなく刺してきたなお前!?」

「くっ……俺だって本気出せばもっと詠めるんだからな」

「どうぞ」

 ラクスの一句
「このパンは、もしかして昨日の、リサイクル」

「黙って食え」

  カイルの一句
「王子殿、黙っていれば、モテそうだ」

「今もモテてるけど!?」

「自覚はあるのか……」

「じゃあ次は本気で“大臣への感謝”を詠むぞ」

「不可能なことを……」

  ラクスの一句
「大臣へ、あなたの執念、国宝級」

「皮肉やめろ」

  カイルの一句
「感謝とは、言葉でなくて、距離感で」

「それ感謝じゃなくて“会いたくない”だろ!!?」

 馬車の中にはゆるやかな風と、刺々しい俳句だけが流れていく。

「……なあ、カイル」

「ん」

「俺、たぶんこの国で一番俳句で戦ってる王子だと思う」

「……他にいないな、確かに」

第三王子ラクス。職業:輸送物件。特技:五・七・五。
このまま俺は、俳句で王都に帰れるのかよ

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